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152話 あやめの家出

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 九郎とあやめ、玉枝の3人は昼食を食べる。昼食は大学で食べるはずだった弁当である。
 あやめは食べ終わると家へ帰って行く。彼女は九郎と暮らすため荷物を取りに行ったのだ。
 彼女が出かけて1時間位すると一久から九郎のスマホに電話がある。
 「どうなっているんだ。九郎君、何とかしてくれ。」「あやめが家を出ることですか。」
 「そうだよ。どうしてこんなことになったんだ。」「すみません、僕のせいです。」
 「止めることはできないのかい。」「あやめが決めたことですから。」
 「こうなったら私もそっちに住もう。」「落ち着いてください。」
 「そっちのが楽しそうだろ。」「仕事はどうするんですか。」
一久が九郎の所へ来ると言い出して九郎は慌てる。彼は一久は欲望に忠実だと感じる。九郎は一久をなだめて思いとどまらせる。
 一久との電話が終わった頃、あやめが帰ってくる。あやめは九郎に言う。
 「夕食の食材を買いに行きましょ。」「分かった。」
玉枝は気配を小さくして見えなくなる。彼女は、九郎とあやめを2人にさせたかった。
 2人はスーパーに行く、あやめは、野菜売り場でしょうがと玉ねぎとキャベツをかごに入れ、肉売り場で豚肉のスライスをかごに入れる。
 魚売り場で九郎は店員に声をかけられる。
 「にーさん、今日はきれいなお姉さんと一緒じゃないのかい。」「今日は彼女と一緒なのです。」
 「そーかい。またよろしく言っておいてくれな。」「はい。」
あやめが九郎に聞く。
 「玉枝さん、有名なの。」「店員さんはみんな知っていると思うよ。玉枝さんは目利きがいいんだ。」
あやめは、九郎と玉枝が揃って買い物をする姿を思い描く。彼女はそんな自分にカツを入れる。玉枝に負けていられないのだ。
 2人がアパートに戻るとあやめは夕食の料理を始める。玉枝も気配を強くして見えるようになるとあやめに言う。
 「あやめちゃん、料理手伝うわ。」「生姜焼きを教えてください。」
あやめは素直に教えを乞う。玉枝の方が料理の腕は上なので彼女は張り合うことをしない。
 夕食が出来ると九郎とあやめはテーブルで向かい合って食べる。九郎が料理を食べて感想を言う。
 「おいしいよ。」「本当、玉枝さんに味付け教えてもらったの。」
 「そうなんだ。おかわりできる。」「九郎ちゃん、私のおかわりはできないわよ。」
 「九郎、それなあに。」「何でもないよ。」
 「あやめちゃん、安心して、一度も私をおかわりしたことないから。」「当然です。」
九郎は無事ご飯のおかわりをして、食べ終える。
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