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146話 あやめの誘い

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 夜、九郎のスマホに電話がかかってくる。あやめからだ。
 「こんばんわ、電話大丈夫。」「大丈夫だよ。」
 「みこがお父さんと日曜日にに会うことになったわ。」「決心がついたんだね。」
 「それで、日曜日、暇かな。」「用事はないよ。」
 「買い物したいから2人で出かけない。」「玉枝さんはどうするの。」
 「デートしたいの。」「分かった。2人で行こう。」
 「約束よ。」「朝10時に迎えに行くよ。」
九郎は、あやめがデートしたいと言ってくるのは初めてだと思う。そして、自分もまともに誘ったことが無いことに気づく。
 彼はこれまで周りに流されて付き合ってきたように感じる。それでもあやめをかわいいと思っていて、ずっと一緒にいたい気持ちは変わらない。
 九郎とあやめの周りは、2人が結婚するものと思っている。
 しかし、彼は玉枝のこともかわいいと感じ魅かれている。これは浮気心なのだろうかと思ったりしたが、本心であることに間違いない。
 あやめはそんな自分を許してくれるだろうか。自分は今、2人の女性に恋をしているのではないだろうか。
 「九郎ちゃん、どうしたの。」
玉枝が考え込んでいる九郎に声をかける。
 「玉枝さん、何でもないよ。あやめにデートに誘われたんだ。」「九郎ちゃんの方から誘わないとだめでしょ。」
 「そうだね。最近いろいろあったから・・・」「理由になってないわよ。」
 「じゃあ、玉枝さんをデートに誘ってみようかな。」「・・・バカ。」
玉枝は赤くなる。九郎はしまったと思い。
 「僕、もう寝るね。」
と言って、ベットに逃げ込む。玉枝はそんな九郎を見つめて独り言を言う。
 「バカなんだから。本気になったらどうするのよ。」
玉枝は気持ちを落ち着かせてから添い寝する。
 日曜日の午前10時、九郎はあやめの家のインターフォンを押す。
 一久が玄関の引き戸から顔を出そうとするが引きずり込まれる。そして、あやめが出てくる。
 「おはよう、九郎。」「おはよう、あやめ。」
2人は歩いてバス停に向かう。あやめが九郎に言う。
 「こうして出かけるの久しぶりね。」「そうだね。でも出会ってから半年ちょっとしか経っていないよ。」
 「いろいろあったわね。楽しかった?」
あやめは前かがみになって九郎の方に顔を向けて見上げるようにして言う。九郎はあやめはかわいいと思う。
 「楽しかったよ。あやめと出会えてよかったよ。」「うれしい。」
2人はバスに乗るとあやめは体を預けてくる。九郎は肩を抱く。バスがショッピングモール前に着くとバスを降りる。
 ショッピングモールでは早くも冬物が売られている。
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