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31話 九郎とあやめ、バグる

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 九郎は、あやめの家で夕食をごちそうになる。そして、一久の晩酌の相手をする。九郎は帰る時、かなり酔っていた。
 あやめが鳥居の所まで送り、そこから玉枝が九郎に付き添う。九郎は何とかアパートに帰る。
 朝になり九郎は目を覚ます。ベットがいつもより柔らかい。手のもむ感じも最高である。九郎は再び寝そうになるが、もむ・・・もむ。
 九郎の眠っていた頭が回転し始める。もむ・・・何を彼は手を見る。手は白いパン生地を掴んでる。そんなわけない・・・
 彼は目を見開く、彼の下には全裸の玉枝がいる。と言うか九郎が玉枝に乗っている。
 九郎は飛び起きると自分も全裸である。玉枝が目を覚ます。お、お、お、お・・・九郎は何か言おうとするが言葉にならない。
 玉枝は機嫌よさそうにネグリジェ姿になると料理を始める。九郎は昨夜のことを思い出せない。
 分かっている事実は玉枝と裸で寝ていたということだけだ。寝ていただけ。もしかしたら一線を越えてしまった。
 玉枝に聞くことが怖い。もしやってしまって知らないと言ったら怒らせるだろうか。玉枝が言う。
 「いつまで裸でいるの。」「今、着るよ。」
 玉枝は機嫌よさそうである。裸で寝て何もしなかったら不機嫌になるのでは・・・ということは
 玉枝が料理をテーブルに並べる。今朝はフレンチトーストとオムレツである。
 九郎は朝食を前にして土下座する。玉枝が九郎に聞く
 「何しているの。」「済まない。悪気はなかったんだ。」
 「何を謝っているの。」「夜のことだよ。俺、しちゃっただろ。」
 「何かしたの。」「あれだよ。」「あれってなーに。」
玉枝は意地の悪そうに聞く。九郎は小さな声になって行く。
 「男と女がすることです。」「私、判らないわ。」
 「SEX。」「私としたの。」「はい。」
玉枝は笑い出す。
 「九郎ちゃん、何もしてないわよ。」「えっ、裸だったけど。」
 「確かに寝ぼけて裸で抱き着いてきたけど、それだけよ。」「・・・はーっ」
九郎は、脱力して床に崩れる。玉枝が九郎に言う。
 「いつでもしてあげるわよ。なんなら今からする。」「やめてください。」
インターフォンが鳴る。玉枝がドアに向かって言う
 「あやめちゃん、入ってきて。」
ドアが開いて、あやめが入って来る。
 「あなたたち何しているの。」
下着姿の九郎とネグリジェ姿の玉枝がテーブルをはさんで向かい合っている。玉枝があやめに言う。
 「九郎ちゃん、私としたと勘違いしてるのよ。」
九郎にとどめが刺さる。あやめも眉が動く。
 「どういうこと、九郎。」
あやめの声は九郎を凍えさせる。
 「あの、落ち着いて聞いてくれ。」「聞きますとも。」
 「朝起きたら、裸で玉枝さんの上に乗っていたんだ。」「何していたの。」
 「寝ていました。」「汚らわしいことをしたの。」
 「していないと思う。」「思うってなあに。」
 「こわいよ、あやめ。」「怒ってないわよ。ムカついているだけだから。」
 「あやめちゃん、そのくらいにしてあげて、九郎ちゃん何もしていないから。」
 「玉枝さん、ずるいです。」「今度、九郎ちゃんが酔っ払ったらあやめちゃんが一緒に寝てあげる。」
 「い、一緒ですか。」「九郎ちゃんが変なことしないように見張っていてあげるわよ。」
 「それは、まだ早いというかー、心の準備がですねー」
 「九郎ちゃん、良かったね。あやめさん一緒に寝てくれるそうよ。」
 「えっとー、責任がですねー。」
九郎とあやめは、玉枝のからかいにバグってしまう。この日、2人は1限目の講義を休む。
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