上 下
31 / 144

第31話 たすくの力

しおりを挟む
 中野たすくが沙也加の探偵事務所をバイトで訪れたのは、五條美月が立ち去った後である。
 たすくは事務所に入ると中がめちゃくちゃに荒らされているのに驚く。
 そして沙也加を探すと床に仰向けに倒れている。
 目は見開いたままだが反応がない。
 たすくは
 「沙也加さん。」
と声をかけるが、やはり反応は無い。
 さらにたすくは沙也加の脈を診るため、手を取ると、沙也加の全身が汚物のようなものに包まれているのが見える。
 そして、汚物は沙也加の手を取っているたすくの手にも移動しようとうごめく。
 しかし、汚物はたすくに触れると焼けて蒸発していく。
 たすくはホテルの除霊の時のことを思い出す。
 自分の力を発揮できれば沙也加さんに憑りついているものを祓えると考える。
 たすくは仰向けの沙也加に覆いかぶさり両手を合わせて沙也加を助けることを考える。
 しかし、たすくに触れている部分は汚物を焼き蒸発させているものの、変化がない。
 たすくは沙也加がだんだん冷たくなっていくように感じる。
 このままでは、沙也加さんが死んでしまう。
 たすくは必死に沙也加の名を呼び、自然と泣き出している。
 落ちる涙は沙也加に張り付いた呪いを焼き祓っていく。
 そして、沙也加の目に光が戻る。
 沙也加はたすくを抱きしめる、たすくは驚き
 「胸当たってます。」
と口走ると同時にたすくの体が光り出す。
 陽の光は沙也加の呪いを完全に焼き祓う。

 沙也加はたすくをなかなか離さない。
 「沙也加さん、事務所がめちゃくちゃですよ。」
 「もうしばらくこうしていたの。」
たすくは手にやり場に困ったが、怒られるのを覚悟で沙也加を抱きしめる。
 両手には沙也加の温かみが伝わって来て、たすくはホッとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。 完全フィクション作品です。 実在する個人・団体等とは一切関係ありません。 あらすじ 趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。 そして、その建物について探り始める。 あぁそうさ下らねぇ文章で何が小説だ的なダラダラした展開が 要所要所の事件の連続で主人公は性格が変わって行くわ だんだーん強くうぅううー・・・大変なことになりすすぅーあうあうっうー めちゃくちゃなラストに向かって、是非よんでくだせぇ・・・・え、あうあう 読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。 もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。 大変励みになります。 ありがとうございます。

骸行進

メカ
ホラー
筆者であるメカやその周囲が経験した(あるいは見聞きした)心霊体験について 綴ろうと思います。 段落ごと、誰の経験なのかなど、分かりやすい様に纏めます。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

ノスタルジック;メトリー ①帯付く村

臂りき
ホラー
高校生最後の冬、彼女に思いの丈を打ち明けるはずだった僕は死んだ。 約束の場所に向かう途中に遭遇した未知の存在との接触後、肉体を失った僕は彼女の守護に徹することに決めた。 しかし、元より内に熱いものを秘めた彼女を見守ることは容易ではなかった。 彼女の趣味である小旅行もとい「廃墟・心霊・パワスポ巡り」には何故かいつも不可思議な現象が付きまとう。 やがてそのどれもが僕の「死」と無関係ではないことを二人は知ることになる。 【探索メイン、稀に戦闘有り】 【やるべきことは二つ。 何より彼女のことを見守ること。あわよくば失った肉体を取り戻すこと】 ※作中に登場する人物、地名は実在するものとほとんど関係ありません。安心してお読みください。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)

クトゥルーの復活、その他の物語

綾野祐介
ホラー
全ての行動には意味がある、あまりにも恐ろしい意味が。 日本、世界で始まる旧支配者たちの復活。 若しくは封印を解かれようとする旧支配者たち。 交差する思惑、暗躍する漆黒の影。 立ち向かおうとする人間はあまりにも非力である。 これは、そんな非力な人類が強大な力に出来得るかぎ限り抗おうとする物語。 抗う先にあるものは希望か、絶望か。 人類の存亡をかけた戦いの中に、あなたは何を感じるのだろうか。

同期の御曹司様は浮気がお嫌い

秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!? 不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。 「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」 強引に同居が始まって甘やかされています。 人生ボロボロOL × 財閥御曹司 甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。 「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」 表紙イラスト ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl

平行世界の人肉塔

白い黒子
ホラー
田中舵夜は大学生。有名配信者を目指して動画をネットに投稿しているが、全然再生数は伸びていなかった。より多くのフォロワーと再生数を得られる企画を考え、考え抜いた結果、パラレルワールドへ行く方法を試すという企画を思いつく。実際に行けるとは思っておらず、軽い気持ちで方法を試している内に本当にパラレルワールドへ行ってしまった。そこには人の姿など一切なく・・・・・・。 主人公の独り言多め、グロ要素もあり。心臓がきゅっとなるような展開を心掛けます。

処理中です...