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18章 あやしの恋

4話 倉狩峠の鬼女

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 黒木の妻は、武藤に電話を入れる。
 「黒木は亡くなりました。」「えっ。これは、ご愁傷様です。」
 「黒木は武藤様に報告書を残しています。お渡ししますので事務所までお願いできませんか。」「分かりました。今から伺います。」
武藤は会社を早退して黒木探偵事務所へ向かう。武藤が事務所に入ると黒木の妻は目を赤くはらしてにらみつける。
 「武藤です。黒木さんがお亡くなりになって驚いています。」「武藤さんへの報告書は読まさせてもらいました。おぞましいことに関わらせたのはあなたですね。」
 「どういうことですか。」「これを読めばわかります。もう出て行ってください。」
武藤は自宅に帰ると報告書を読む。そして倉狩峠の鬼女に黒木が関わったことを知る。おそらく黒木の死因は鬼女に襲われたことだろう。武藤は黒木の冥福を祈る。
 しかし、女に会いたい気持ちは変わらない。会えるのならば、殺されても構わないと考える。相手が鬼女ならば普通の探偵ではだめだ。
 武藤はネットで似たようなことはないか探し始める。探していくうちに国枝くにえだ町の麗姫れいきの記事に行きあたる。自衛隊員などに犠牲者が出ているが武藤に覚えはない。
 記事では終わりにマスコミの自作自演ではないかと注釈が入れられている。一応、この麗姫を倒したのは中野沙衣と言うことになっている。
 続けて中野沙衣と言う名前で検索をかけると寒沢かんざわの怨霊、赤壁の家などオカルトの話ばかりが出てくる。中野沙衣は探偵事務所を開いているが胡散うさん臭い。
 武藤は中野沙衣に連絡を取るか悩む。武藤の探している女は鬼女の可能性が高い、人に話せば笑い者にされるだろう。周りにこの話を出来る者はいない。武藤ははずれを覚悟して連絡することにする。
 沙衣は大学生のため、探偵事務所を夕方だけ開いている。今日もバイトの祐二と2人でまったりと過ごしている。沙衣の事務所にはまともな探偵の仕事の依頼は来ないのだ。
 事務所の電話が鳴る。祐二が電話を取る。
 「中野沙衣探偵事務所です。」「武藤と申します。女性を探しているんですがお話よろしいでしょうか。」
 「所長に電話を代わりますのでお待ちください。」
祐二は驚いた顔をして沙衣に言う。
 「探偵の仕事が来ちゃったよ。」「ここは探偵事務所よ。何だと思っているの。」
 「ゴーストバスターズ。」「映画の見過ぎね。」
沙衣が電話を代わる。
 「所長の中野沙衣です。お話をお聞かせください。」「私は今年の冬に大雪でさまよって死にそうになったところを白い美しい女性に救われました。」
 「美しかったのですね。」「はい、私はもう一度会いたくて探しましたが見つからないので、探偵を雇いました。しかし、探偵はお亡くなりになりました。」
 「それは大変ですね。」「探偵は報告書を残していたのです。報告書には倉狩峠の鬼女の話が掛かれていました。」
 「そうですか、諦めたほうがよさそうですね。」「いえ、私はどうしても会いたいのです。鬼女でも構いません。会わせてください。」
 「分かりました。鬼女を捕えればいいのですね。」「彼女に暴力は振るわないでください。」
 「難しいことを言われますね。」「中野沙衣先生ならできると思ってお願いしているのです。」
 「分かりました。明日の夕方、報告書をもって事務所にお願いします。」「はい、必ずお伺いします。」
沙衣はとりあえず、話を聞くことに知る。しかし、鬼女に暴力を振るわずにつれてくるなど無理な話である。
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