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14章 海から来たもの

5話 沙衣、海へ行く

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 向浜むかいはま漁港の港の中にある小さな堤防に幽霊が出ると噂が立つ。夜、釣り人が魚釣りをしていると隣に座り、じっと見ているというのものだ。
 釣り人の1人が体験談をインターネットに上げるとこの堤防に人が集まり始める。そして、幽霊を見たり、写真撮影に成功する者が出てくる。
 堤防は心霊スポットとして有名になり、港の中に車を駐車する者が増えて、漁師が漁の準備をする邪魔になりトラブルが起き始める。
 話は漁協長にまで来る。漁協長は幽霊を祓ってもらうことにする。彼にはあてがある、以前テレビでニュースになった女性の祓い屋がいることを知っていた。
 彼はネットで情報を探し、中野沙衣探偵事務所にたどり着く。彼は夕方になると事務所に電話する。祐二が電話に出る。
 「中野沙衣探偵事務所です。」「私は向浜の漁協長をしている館林たてばやしと言います。中野沙衣先生はいますか。」
 「はい。少々お待ちください。」
祐二は沙衣に言う。
 「沙衣、仕事の電話だよ。」「ありがとう。」
沙衣は、祐二から受話器を受け取る。
 「電話代わりました。中野沙衣です。」「お祓いの仕事は受けてくれますでしょうか。」
 「探偵が本業ですがお祓いもしますよ。」
沙衣は平気でうそを言う。
 「お願いです。堤防の幽霊を祓ってください。人が集まって仕事に支障が出ているんです。」「分かりました。明日伺います。」
沙衣と祐二は赤色のロードスターで早朝から向浜漁港へ向かう。港には昼頃に着く。
 2人が車から降りると中年の男性が駆けてくる。
 「中野沙衣先生ですか。」「はい。中野です。」
 「舘林です。昼食は済まされましたか。」「まだです。」
 「では、先に食事にしましょう。」
彼は2人を港の近くの船宿に案内する。
 「ここは釣り客が利用する宿ですが食事がおいしいですよ。」「そうですか。堤防の幽霊の話はいいのですか。」
 「幽霊は夜に出るのではないのですか。」「日中でも出ますよ。」
 「私はてっきり夜にお祓いをすると思って、ここの宿を予約してしまいました。」「では、食事をしたら堤防に行って除霊をします。帰りは1泊してから帰ることにします。」
祐二が口をはさむ。
 「部屋は1つですか。1つですよね。」「空いた部屋がありますから何部屋でも使ってください。」
 「そうですか。」
祐二が残念そうに言うと沙衣が祐二に言う。
 「いつかみたいに廊下で寝てもいいのよ。」「高望みはしませんので別の部屋でおとなしくします。」
祐二は助手から彼氏に昇進したいが道のりは厳しそうである。
 舘林は食事が終わると2人を港の中の堤防に案内する。沙衣の目には堤防に3体の霊が見える。舘林が沙衣に聞く。
 「幽霊はいますか。」「霊が3体います。放っておいても害はなさそうですが除霊しますか。」
 「お願いします。私たちは迷惑しているのです。」「分かりました。」
沙衣は答えると海水を操って水の刃を作り、3体の霊に切りつける。3体の霊は霧散する。
 舘林は彼女が水を操ることに驚く。彼女は彼に言う。
 「霊は3体とも除霊しました。あとは港に悪いものがいないか見て回ります。」「お願いします。」
沙衣と祐二は港を見て回る。そして舘林に報告する。
 「港に悪いものはいませんでした。」「ありがとうございます。それで悪いものとは何ですか。」
 「悪霊とかです。」「そうでしたか。」
沙衣は仕事を終え、船宿に戻る。祐二は沙衣の隣の部屋に寝ることになる。沙衣の部屋とはふすまで仕切られているだけである。
 彼はのぞこうとすればのぞけるなと考える。沙衣は祐二の心を読んだように言う。
 「今から着替えるけどのぞいたらどうなるかわかっているわね。」「そ、そんなことするわけないじゃないか。」
祐二はのぞきたいが、沙衣は勘が鋭いのですぐにばれるに違いないと考え、我慢してすごす。
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