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10章 管狐
3話 死に至る呪い
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直之のいとこは、直之に直高を呪い殺すことに失敗したことを知らせる。
「直高を呪い殺すことに失敗しました。」「辻家のことは、ばれていないな。」
「それはありません。」「直高の奴、どうしてくれよう。」
直之は、再び辻家の者を集める。
「直高を呪い殺すことに失敗しました。」「辻家のことがばれたんじゃないだろうな。」
「それはありません。」「次はどうする。」
「辻電工を子会社にするか。」「我々にそんな力は無いぞ。」
辻家は、管狐がいなくなってから、これまでの勢いはなくなっていた。
「もう、放っておけばよいのではないか。」「直高を見逃すことはできません。」
「直之、直高に固執していないか。」「これは辻家のためなんですよ。奴を排除する方法を考えてください。」
良い考えは出て来ず、一族の集まりは解散する。直之の直高に対する憎しみは膨らんでゆく。
やがてその憎しみは管狐にも向けられていく。直之は管狐が自分の元に来ていれば、直高は野垂死にしていたと考えるようになる。
直高に管狐が言う。
「私はいづれ祓い屋に祓われることになるでしょう。」「何を言っている。そんなことはさせはいよ。」
「あなたの弟は私を憎むようになり、祓い屋を差し向けてきます。」「未来が判るのか。」
「はい、少し前の未来だけですがその力で助言してきました。」「その祓い屋を排除してしまおう。」
「・・・」「祓い屋の名前は分かるか。」
「中野沙衣と言う祓い屋です。」「そいつを呪い殺してもらおう。」
「辻家と同じ方法をとるのですか。」「始めたのは辻家だよ。」
直高は、五條美月に電話する。
「先日はお世話になりました。」「いいえ、依頼をこなしただけです。」
「今日は、一つお願いがあります。」「何でしょう。」
「中野沙衣と言う祓い屋を呪い殺して欲しいのです。」「分かりましたが、彼女は手強いですよ。」
「そこをお願いします。」「分かりました。その依頼、引き受けます。」
美月は離れに行くと樹に話す。
「呪いの依頼が来ました。」「そうですか。」
「相手は中野沙衣です。」「依頼を引き受けたのですか。」
「たとえ、知己でも依頼が来れば拒めません。」「そうですが、よりにもよって、沙衣とは。」
「私は美湖に仕事をしてもらうつもりです。」「彼女らは異母姉妹ですよ。」
「五條を率いる踏み絵ですよ。」「・・・」
美月は、美湖を呼んで言う。
「仕事の依頼が来ました。あなたに任せようと思います。」「どのような依頼ですか。」
「中野沙衣を呪い殺してください。」「・・・分かりました。」
美湖は、依頼を引き受けるが平静を装うのに必死だった。
美湖はスマホで沙衣に電話する。
「美湖、どうしたの。電話するの珍しいね。」「声聞きたくなっただけよ。最近はどお。」
「いつも通りよ。」「ならいいわ。お休みなさい。」
美湖は電話を切ると呪いの準備に入る。沙衣の家の間取りは何度も遊びに行っているのでわかっている。
陣の中に沙衣の家の間取りを描き、沙衣の部屋のベットの位置にイモリを串刺しにする。
翌朝、沙衣は体が重く、大学を休む。そして、祐二に連絡する。
「今日、休むから、事務所に来なくていいわよ。」「大丈夫?」
「体が重いだけだから。」「医者に行った方がいいよ。」
「休んでだめだったらそうするわ。」「お大事に。」
しかし、沙衣が回復することはない。沙衣は美湖に電話する。
「呪いをかけられているようなの。見てくれない。」「わかったわ。」
美湖は、沙衣に会いに来る。彼女は沙衣を見て、あと1週間だと判断する。美湖は沙衣に言う。
「呪いではないわ。」「嘘ね。この呪い、美湖がかけたのでしょ。」
「私は呪い屋よ。さようなら。」「私は最後まであきらめないわよ。」
美湖は、沙衣の元をあとにする。祐二は沙衣が回復しないことに心配になる。
見舞いに行きたいが、行くと沙衣に怒られそうな気がして、なかなか行動に移せない。
祐二は決意して、沙衣の家へ行く。祐二は、沙衣の祖父母の古馬竜弥と沙夜に歓迎される。
そして、あっさり沙衣の部屋に通される。祐二は沙衣に言う。
「調子はどお。」「最悪よ。あと数日で死ぬわ。」
「なんでわかるんだよ。」「これは呪われているのよ。」
「なら、美湖さんに助けてもらえばいいよ。」「呪いをかけたのは、おそらく美湖よ。」
「そんなわけないだろ。異母姉妹なんだし。」「依頼があったのよ。」
「まだ、借金返していないんだから、死なないで。」「私も死にたくないわよ。」
祐二は、お祓いの時と同じように沙衣に何もできないという無力感を感じる。彼は言う。
「沙衣が助かるまでここにいます。」「あなたがいても何にもならないわ。」
「僕は沙衣の助手です。沙衣が戦っているのなら一緒にいます。」「勝手にしなさい。」
沙衣は眠る。彼女は体が冷たくなり、重くて泥の沼に沈むような感覚を覚える。彼女はこのまま死んでいくのだと感じる。
すると左手が温かくなりそれは体をめぐる。わずかに体が軽くなる。
沙衣は、眠ると苦しそうにする。祐二は沙衣の左手を取り良くなるように祈る。しばらくすると沙衣は落ち着く。
祐二は、沙衣の家に泊まり込み、沙衣の様子を見る。沙衣が苦しみだすと祐二は治まるまで彼女の手を握る。なんのとりえもない彼にはそれしかできない。
沙衣は泥の沼に沈みそうになると手から温かみを与えられ、何度も救われる。彼女は意識がもうろうとしたまま1週間生き続ける。
その頃、美湖は異変に気付いている。沙衣はすでに死んでいるはずなのに陣にその兆候は表れない。呪いは確実に沙衣に効いているはずである。
美湖はさすがにしぶといと感じる。
沙衣が1週間ぶりに意識がはっきりする。彼女は祐二に聞く。
「祐二が来てからどのくらいたったの。」「1週間だよ。」
「あなた、何かした。」「苦しそうだったから、手を握ったよ。そうすると治まるんだ。」
沙衣は手の温かいものは祐二のせいだと考える。彼女は、化け猫ぼたんの言葉を思い出す。祐二に破魔の力がある。彼女は祐二に言う。
「祐二、私を抱きしめなさい。」「いいの、怒らない。」
「早くしなさい。」「はい。」
祐二は沙衣を抱きしめる。沙衣の冷え切った体に陽光が差し込み体が軽くなる。
「祐二、やらしいこと考えていないわよね。」「考えていないよ。」
祐二は煩悩と戦っていた。大好きな沙衣を抱きしめて平静でいられるわけはない。祐二は沙衣に言う。
「僕は、沙衣を抱きしめることが出来てうれしいけど、沙衣はどうなのかな。」「余計なことは考えないで私に集中して。」
祐二は言われなくても沙衣に集中している。彼は全身で彼女を感じている。彼はこのまま押し倒してもいいのではと考える。
沙衣はかけられた呪いが壊れるのを感じる。それと同時に祐二が沙衣をベットに押し倒す。しかし、祐二は悶絶する。
沙衣は祐二の腹にボディブローを放ったのである。彼女は祐二に言う。
「今回は、助けてくれたからこれで許してあげる。」「・・・ぐう~」
祐二はうめき声で返事をする。
「直高を呪い殺すことに失敗しました。」「辻家のことは、ばれていないな。」
「それはありません。」「直高の奴、どうしてくれよう。」
直之は、再び辻家の者を集める。
「直高を呪い殺すことに失敗しました。」「辻家のことがばれたんじゃないだろうな。」
「それはありません。」「次はどうする。」
「辻電工を子会社にするか。」「我々にそんな力は無いぞ。」
辻家は、管狐がいなくなってから、これまでの勢いはなくなっていた。
「もう、放っておけばよいのではないか。」「直高を見逃すことはできません。」
「直之、直高に固執していないか。」「これは辻家のためなんですよ。奴を排除する方法を考えてください。」
良い考えは出て来ず、一族の集まりは解散する。直之の直高に対する憎しみは膨らんでゆく。
やがてその憎しみは管狐にも向けられていく。直之は管狐が自分の元に来ていれば、直高は野垂死にしていたと考えるようになる。
直高に管狐が言う。
「私はいづれ祓い屋に祓われることになるでしょう。」「何を言っている。そんなことはさせはいよ。」
「あなたの弟は私を憎むようになり、祓い屋を差し向けてきます。」「未来が判るのか。」
「はい、少し前の未来だけですがその力で助言してきました。」「その祓い屋を排除してしまおう。」
「・・・」「祓い屋の名前は分かるか。」
「中野沙衣と言う祓い屋です。」「そいつを呪い殺してもらおう。」
「辻家と同じ方法をとるのですか。」「始めたのは辻家だよ。」
直高は、五條美月に電話する。
「先日はお世話になりました。」「いいえ、依頼をこなしただけです。」
「今日は、一つお願いがあります。」「何でしょう。」
「中野沙衣と言う祓い屋を呪い殺して欲しいのです。」「分かりましたが、彼女は手強いですよ。」
「そこをお願いします。」「分かりました。その依頼、引き受けます。」
美月は離れに行くと樹に話す。
「呪いの依頼が来ました。」「そうですか。」
「相手は中野沙衣です。」「依頼を引き受けたのですか。」
「たとえ、知己でも依頼が来れば拒めません。」「そうですが、よりにもよって、沙衣とは。」
「私は美湖に仕事をしてもらうつもりです。」「彼女らは異母姉妹ですよ。」
「五條を率いる踏み絵ですよ。」「・・・」
美月は、美湖を呼んで言う。
「仕事の依頼が来ました。あなたに任せようと思います。」「どのような依頼ですか。」
「中野沙衣を呪い殺してください。」「・・・分かりました。」
美湖は、依頼を引き受けるが平静を装うのに必死だった。
美湖はスマホで沙衣に電話する。
「美湖、どうしたの。電話するの珍しいね。」「声聞きたくなっただけよ。最近はどお。」
「いつも通りよ。」「ならいいわ。お休みなさい。」
美湖は電話を切ると呪いの準備に入る。沙衣の家の間取りは何度も遊びに行っているのでわかっている。
陣の中に沙衣の家の間取りを描き、沙衣の部屋のベットの位置にイモリを串刺しにする。
翌朝、沙衣は体が重く、大学を休む。そして、祐二に連絡する。
「今日、休むから、事務所に来なくていいわよ。」「大丈夫?」
「体が重いだけだから。」「医者に行った方がいいよ。」
「休んでだめだったらそうするわ。」「お大事に。」
しかし、沙衣が回復することはない。沙衣は美湖に電話する。
「呪いをかけられているようなの。見てくれない。」「わかったわ。」
美湖は、沙衣に会いに来る。彼女は沙衣を見て、あと1週間だと判断する。美湖は沙衣に言う。
「呪いではないわ。」「嘘ね。この呪い、美湖がかけたのでしょ。」
「私は呪い屋よ。さようなら。」「私は最後まであきらめないわよ。」
美湖は、沙衣の元をあとにする。祐二は沙衣が回復しないことに心配になる。
見舞いに行きたいが、行くと沙衣に怒られそうな気がして、なかなか行動に移せない。
祐二は決意して、沙衣の家へ行く。祐二は、沙衣の祖父母の古馬竜弥と沙夜に歓迎される。
そして、あっさり沙衣の部屋に通される。祐二は沙衣に言う。
「調子はどお。」「最悪よ。あと数日で死ぬわ。」
「なんでわかるんだよ。」「これは呪われているのよ。」
「なら、美湖さんに助けてもらえばいいよ。」「呪いをかけたのは、おそらく美湖よ。」
「そんなわけないだろ。異母姉妹なんだし。」「依頼があったのよ。」
「まだ、借金返していないんだから、死なないで。」「私も死にたくないわよ。」
祐二は、お祓いの時と同じように沙衣に何もできないという無力感を感じる。彼は言う。
「沙衣が助かるまでここにいます。」「あなたがいても何にもならないわ。」
「僕は沙衣の助手です。沙衣が戦っているのなら一緒にいます。」「勝手にしなさい。」
沙衣は眠る。彼女は体が冷たくなり、重くて泥の沼に沈むような感覚を覚える。彼女はこのまま死んでいくのだと感じる。
すると左手が温かくなりそれは体をめぐる。わずかに体が軽くなる。
沙衣は、眠ると苦しそうにする。祐二は沙衣の左手を取り良くなるように祈る。しばらくすると沙衣は落ち着く。
祐二は、沙衣の家に泊まり込み、沙衣の様子を見る。沙衣が苦しみだすと祐二は治まるまで彼女の手を握る。なんのとりえもない彼にはそれしかできない。
沙衣は泥の沼に沈みそうになると手から温かみを与えられ、何度も救われる。彼女は意識がもうろうとしたまま1週間生き続ける。
その頃、美湖は異変に気付いている。沙衣はすでに死んでいるはずなのに陣にその兆候は表れない。呪いは確実に沙衣に効いているはずである。
美湖はさすがにしぶといと感じる。
沙衣が1週間ぶりに意識がはっきりする。彼女は祐二に聞く。
「祐二が来てからどのくらいたったの。」「1週間だよ。」
「あなた、何かした。」「苦しそうだったから、手を握ったよ。そうすると治まるんだ。」
沙衣は手の温かいものは祐二のせいだと考える。彼女は、化け猫ぼたんの言葉を思い出す。祐二に破魔の力がある。彼女は祐二に言う。
「祐二、私を抱きしめなさい。」「いいの、怒らない。」
「早くしなさい。」「はい。」
祐二は沙衣を抱きしめる。沙衣の冷え切った体に陽光が差し込み体が軽くなる。
「祐二、やらしいこと考えていないわよね。」「考えていないよ。」
祐二は煩悩と戦っていた。大好きな沙衣を抱きしめて平静でいられるわけはない。祐二は沙衣に言う。
「僕は、沙衣を抱きしめることが出来てうれしいけど、沙衣はどうなのかな。」「余計なことは考えないで私に集中して。」
祐二は言われなくても沙衣に集中している。彼は全身で彼女を感じている。彼はこのまま押し倒してもいいのではと考える。
沙衣はかけられた呪いが壊れるのを感じる。それと同時に祐二が沙衣をベットに押し倒す。しかし、祐二は悶絶する。
沙衣は祐二の腹にボディブローを放ったのである。彼女は祐二に言う。
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