龍神の巫女の助手になる~大学生編~

ぽとりひょん

文字の大きさ
上 下
52 / 119
9章 化け猫

3話 執念

しおりを挟む
 紫音が思っているのと同じように、ライオネルもこの1ヶ月本当に幸せだった。

 実は紫音がたまにじっと座り込んだりしているのは見た事があったが、紫音自身が心配かけないように隠しているようだったので、見て見ぬ振りをしていた。

 それがこの間はとうとう隠しきれなかったようで執務室で倒れた。

 毎日こっそり回復魔法をかけているが、最近急激にかかりが悪くなった。

 ーーもういよいよ別れの時間が迫っているかとでも言うように。

 認めたくない。
 せっかく心が繋がったようなのに。
 
 何が龍人の血が流れているだ。
 何も役にたたないじゃないか。
 俺は龍人の血が割と濃いらしく、魔力量が人より多いし、生命力も強い。どの種類の回復魔法も得意だ。
 だが、紫音の症状は全く分からない。異世界特有の病なのか。。。


 龍人はかつて番と呼ばれる伴侶がいてお互いその1人だけを愛し続けたという。そして、愛した者を事故等で失うと気が狂ってしまう者も多数いたという。

 今なら理解出来る気がした。

 紫音が現れるまで、恋などしたことがなかったし、そもそも恋愛に興味が無かった。
 それが紫音が現れてから世界が変わった。紫音と過ごす世界は輝いて見えたのだ。

 そんな紫音が失われようとしているなんて狂ってしまいそうだ。

 ……俺は諦めない。

 まだ紫音と会って1年も経って無いのだ、お互い離れていた期間もある。まだまだ一緒に過ごしたい。

 紫音は平気そうにしてるが、体は平気では無いのだろう、日々寝てる時間が増えている。
 俺は紫音の寝ている時間を利用して、あらゆる病気について調べている。早くしないと逝ってしまいそうだから。

 最近紫音の眼差しが申し訳なさと諦めを抱いているように見える。気を使う紫音だから申し訳なさは分かるが、諦めはなぜなのか?
 まさか紫音はこうなる事が分かっていたのだろうか? 

 そして、今日はヤらないかと誘ってきた。

 平常時であれば乗りたいくらいだが、今は少しでも体力を温存してほしい。少しでも時間を稼ぎたいのだ。


 ーー紫音の熱が出始めて2週間が経過した頃。

 紫音の起きている時間が極端に減ってきた。日中は細切れで4時間位しか起きていられないようだ。
 容態が急変してしまわないか怖くて、良くないとは分かっていても、また執務室に連れてソファで寝させるようになった。

 絶望がひしひしと伝わる中でも仕事はしなくてはいけない。
 今日も無言で執務を行なっていると、ルイスが話しかけてきた。

「ライオネル様酷い顔をしていますよ。寝る時間を削って調べ物をしているとうかがいました。少しお休みになられないと、シオン君が心配しますよ」
 
 暫く無言だったが、寝ている紫音をチラッと見た後、ライオネルはポツリと呟く。
「……ダメだ。このままではもう逝ってしまうんだ」
 今まで堪えていた弱音をルイスに吐く。

 紫音は熱がある事と起きている時間が少ない事を除けば、顔色が悪い訳でも痩せ細ってきている訳でもない為、見た目は健康そのものなのだ。

「やはりシオン君の言う通りライオネル様はご存知だったんですね」
「シオンは自分が弱っている事を知っていたのだな……」
「シオン君は逆にライオネル様が寿命を感じ取っている事に驚いていましたよ」
「…………寿命!? どう言う事だ? まだ18歳だろう? 詳しく話せルイス!」
「あれ? そこ辺りはご存知無かったのですね。これはシオン君から聞いた話なのですが……」

 興奮して聞いてくるライオネルに、ルイスは以前シオンから聞いた”ドール”の体質や特殊能力、寿命について話していた。

「寿命……。(本当に寿命なら何とかなるかもしれない)明日の執務は休む! 2人でなんとかしてくれ。今日も最低限終わったらあがる! いいな」

 ライオネルは有無を言わせず、手元にある書類を終わらせると、紫音を抱き抱え自室に戻って行った。

 アインとルイスは何だか良く分からないが、ライオネルの憂いを少しでも晴らせるようなら良かったと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ショクザイのヤギ

煤原
ホラー
何でも屋を営む粟島は、とある依頼を受け山に入った。そこで珍妙な生き物に襲われ、マシロと名乗る男に助けられる。 後日あらためて山に登った粟島は、依頼を達成するべくマシロと共に山中を進む。そこにはたしかに、依頼されたのと同じ特徴を備えた“何か”が跳ねていた。 「あれが……ツチノコ?」 ◇ ◆ ◇ 因習ホラーのつもりで書き進めていたのに、気付けばジビエ料理を作っていました。 ホラーらしい覆せない理不尽はありますが、友情をトッピングして最後はハッピーエンドです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
ホラー
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞 第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

処理中です...