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8章 たまより様

プロローグ

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 耕作こうさくという若者がいた。彼は働き者だったが、お人よしのため、いつも一二いつじという遊び人に連れまわされることが多かった。
 一二は、耕作に女遊びを教えると耕作は女に騙され、お金を巻き上げられてしまう。
 耕作は、それでもお人よしのために平然としている。一二は、そのような耕作を心配する。
 耕作は、いつものように働く、一二が誘いに来るが遊ぶ金がないためついて行くことはできない。
 そうして、一二は耕作を誘うことがなくなる。耕作は日々まじめに働く。
 ある日、耕作は行き倒れの女を助ける。女は、妙齢の女性でおはなと名乗る。
 耕作はおはなに言う。
 「元気になったら、いつでも出ていても構いませんよ。」
 「私は行くところがありません。ここでお世話をさせていただきとうございます。」
 「私は独り身ですから、あなたの好きなようにしてください。」
こうしておはなは耕作の家に住み着くことになる。
 おはなは朝食と弁当を作り、耕作を送り出す。そして、耕作が帰ると夕食の用意がされている。
 耕作の生活は充実していくとともに、おはなに惹かれ始める。
 耕作はおはなに勇気を振り絞って言う
 「おはながよければずうっとここにいて欲しい。」「はい。」
 「俺は、おはなのこと好きになってしまったんだ。」「私のお慕いしております。」
 「本当か。」「本当です。」「夫婦になってくれ。」「はい。」
2人は男女の仲になる。一二が久しぶりに耕作を遊びに誘うが耕作は断る。
 それからも耕作は一二の誘いを断り続ける。一二は耕作に誘いを断る理由を聞く。
 耕作は答える
 「おはなと言う女と所帯を持ったんだ。」「それはめでたい。」
 「ありがとう。」「どんな女か合わせてくれないか。」
 「訳があるようで家から出ないし人と関わろうとしないから合わせられない。」「そうか残念だな。」
一二は答える。しかし気になり耕作の家に見に行く。一二はこっそりのぞき込む。
 すると耕作は1人で食事をして、独り言を言いながら笑っている。
 翌日一二は耕作に聞く
 「昨晩、誰といた。」「おはなと2人でいたよ。」
 「行くぞ。」「どこへ行くんだ。」
一二は耕作を寺に連れていく。そして住職に相談する。
 「こちらの耕作はおはなという女と夫婦になったと言っていますが、私が見たら姿が見えなかったのです。」
 「そうか、祟られているかもしれないねえ。」
耕作が訳が分からず聞く
 「何を話しているんですか。おはなは人ですよ。」「俺は昨晩お前の家をのぞいたんだ。おまえ1人しかいなかったぞ。」
 「そんな。」「おはなは幻か人でないかだよ。」
住職はお札を入れたお守りを耕作に渡して言う。
 「これは、邪悪なものからお前を遠ざけてくれる。離すんじゃないよ。」「はい。」
耕作は一二の話を信じきれない。家に帰っておはなに会えばわかると考える。
 耕作が家に帰るとおはなは距離を置く。耕作はおはなに言う
 「近くに来てくれないか、お前の顔をよく見たいんだ。」「できません。」
 「どうしてだい。」「懐のお守りを捨ててください。」
 「おはな、お前・・・」「私は、幽霊です。あなたを好きなのは変わりません。」
 「俺も好きだよ。」「耕作さん。」
おはなは涙を流す。耕作はお守りを捨てる。しかし、おはなは近寄って来ない。
 「どうした近くに来てくれ。」「お気持ちだけで十分です。」
おはなは泣き崩れる。
 「私は、あなたの魂を抜き取るために近づきました。」「俺は魂を抜かれていないよ。」
 「私はあなたを愛してしまったのです。」「魂なんかどうするんだ。」
 「たまより様に捧げるのです。」「たまより?」
 「そうです。妖怪です。たまより様は、裏切った私を許さないでしょう。」
そう言うとおはなは姿を消す。耕作はおはなを探すが見つからない。

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