龍神の巫女の助手になる~大学生編~

ぽとりひょん

文字の大きさ
上 下
42 / 119
7章 麗姫

4話 沙衣、依頼を受ける

しおりを挟む
 今泉頼幸は、町長の家に帰る。
 白井は、待ちわびたように頼幸を出迎える。
 「今泉さんどうでしたか。」「麗姫は私のかなう相手ではありませんでした。」
 「それではダメだったのですか。」「はい、負けました。」
 「どうすればいいんだ。」「私に心当たりがあります。」
 「誰ですか。」「中野沙衣です。お座敷様を退治した霊能者です。」
 「その人には断られています。」「依頼料を渋りましたか。」
 「いいえ、言い値を払うと言ったのですが。」「私が彼女を引きずり出しましょう。」
 「どうするのですか。」「私に任さて下さい。代わりに紹介料をいただきます。」
頼幸は、ただでは起きない。
 彼は、町長の家を出るとマスコミに囲まれる。
 「どのような要件で町長の家に行ったのですか。」「私は、白井さんの苦境を助けるために来た陰陽師です。」
 「麗姫は退治することが出来たのですか。」「いいえ、一歩及ばず、退治することはかないませんでした。」
 「町長の孫娘さんはどうなるのですか。」「希望はあります。それを町長にお伝えしました。」
 「希望とは何ですか。」「皆さんはお座敷様を覚えていますでしょうか。」
 「3年位前に多くの人が死んだ化け物の事件ですね。」「はい、そうです。誰がお座敷様と退治しましたか。」
 「女子高生の2人組です。」「その通りです。彼女らの1人は探偵事務所を立ち上げ、今でも払い屋をやっています。」
 「そうですか、素晴らしい。彼女に名は何というのですか。」「中野沙衣です。今頃、町長が依頼しているでしょう。」
 「町長の孫娘さんは助かるのですね。」「そう信じています。」
頼幸の話は、テレビで繰り返し放送される。
 沙衣が講義を終え大学を出るとマスコミに囲まれる。
 「中野さん、麗姫に勝てますか。」「何のことですか。」
 「国枝町の町長から電話はありませんでしたか。」「ありません。」
沙衣は町長にはめられたと思う。
 沙衣が事務所に行くとすでに祐二が事務所にいる。そして、ここでもマスコミが事務所を取り囲んでいる。
 マスコミが沙衣に言う
 「これから国枝町に向かうのですか。」「何のことですか。」
 「依頼を受けられるんでしょうね。」「仕事がありますので通してください。」
沙衣は何とか事務所に入ると祐二が言う
 「大変ですよ。テレビを見てください。」
テレビを見ると今泉頼幸が沙衣を名指しする映像が出ている。
 沙衣はやられたと思い、テレビの今泉を睨む。しかし、どうにもならない。
 沙衣が五條家に電話すると樹が出る。
 「大変なことになりましたね。」「あの今泉と言う男はなんですか。」
 「私の方で調べておきます。」「国枝町の町長の電話番号を教えてください。」
 「分かりました。依頼を受けるのですね。」「しかたありません。」
沙衣は、町長の電話番号を聞き出すと町長に電話する。
 「白井です。」「中野沙衣です。」
 「お電話お待ちしていました。」「やってくれましたね。」
 「今泉さんにお任せをしたのです。あのようになるとは思っていませんでした。」「依頼なさるのですか。」
 「はい、お願いします。」「依頼料は1憶ですがいいのですか。」
 「そんな法外な。」「では話はなかったことで。」
 「それは困ります。もう少し安くなりませんか。」「なりません。払わなければ、あなたが依頼料を出し渋ったということになりますね。」
 「分かりました、払いますからお願いします。」「賢明な判断だと思います。」
沙衣は明日に備えて早めに事務所を閉める。マスコミにはノーコメントを通す。
 翌朝早く、沙衣と祐二はロードスターで事務所を出発する。
 後には、マスコミらしい車が何台か付いてくる。
 沙衣は祐二に言う
 「うっとおしいわね。」「えっ、ぼくのこと?」
 「違うわよ。車が数台ついて来ているわ。」「マスコミの車だね。」
 「そうね。」「放っておけばいいよ。」
 「どうして。」「どうせ、町長の家に行けば集まっているよ。」
沙衣は黙り込み、難しい顔になる。途中、サービスエリアに休憩で止まるとマスコミに囲まれる。
 「今、国枝町に向かっている途中ですか。」
沙衣はノーコメントを通す。祐二にマイクが向けられる。
 「あなたは中野さんの関係者ですか。」「恋人・・・候補です。」
 「中野さんに好意を持っているのですね。」「彼女かわいいですから。」
 「そうですね。美人ですね。」「その通りです。」
沙衣は、祐二を殴ると引きずって行く。食事をとりながら沙衣は祐二に言う。
 「何、マスコミの相手をしているの。」「恋人アピールをちょっと・・・」
 「馬鹿なことするとここで捨てていくわよ。」「はい、慎みます。」
祐二の気持ちは、沙衣に届かない。祐二は沙衣に聞く。
 「麗姫て強いんじゃないの。」「分からないわ。」
 「沙衣なら勝てると思うけど。」「ちゃんと信じなさい。」
 「分かったよ。」「それでいいわ。」
2人は早めの昼食を食べるとサービスエリアを出発する。
 昼過ぎ沙衣と祐二は、国枝町町長の家に着く。
 マスコミが待っていたと言わんばかりに駆け付けてくる。
 「麗姫に勝てますか。」「意気込みを一言。」
マイクを向けるマスコミを無視して家に入る。
 現場の中継では、レポータが説明する。
 「3年前、お座敷様を退治した女子高生が、大学生になって再び立ち上がりました。愛らしかった彼女は美しく成長しています。どのような力を秘めているのでしょうか。」
中継を見ていた美湖が言う
 「沙衣、災難ね。」「私たちの所にマスコミが来ないことが幸いですね。」
美月が一歩間違えれば巻き込まれかねないと思いながら言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

旧校舎のシミ

宮田 歩
ホラー
中学校の旧校舎の2階と3階の間にある踊り場には、不気味な人の顔をした様なシミが浮き出ていた。それは昔いじめを苦に亡くなった生徒の怨念が浮き出たものだとされていた。いじめられている生徒がそのシミに祈りを捧げると——。

ドッペルゲンガー

宮田 歩
ホラー
世界に3人いるとされているドッペルゲンガー。愛菜の周りでは「あなたにそっくりな人を見た」と言う報告が相次ぐ。そしてついに——。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

一ノ瀬一二三の怪奇譚

田熊
ホラー
一ノ瀬一二三(いちのせ ひふみ)はフリーのライターだ。 取材対象は怪談、都市伝説、奇妙な事件。どんなに不可解な話でも、彼にとっては「興味深いネタ」にすぎない。 彼にはひとつ、不思議な力がある。 ――写真の中に入ることができるのだ。 しかし、それがどういう理屈で起こるのか、なぜ自分だけに起こるのか、一二三自身にもわからない。 写真の中の世界は静かで、時に歪んでいる。 本来いるはずのない者たちが蠢いていることもある。 そして時折、そこに足を踏み入れたことで現実の世界に「何か」を持ち帰ってしまうことも……。 だが、一二三は考える。 「どれだけ異常な現象でも、理屈を突き詰めれば理解できるはずだ」と。 「この世に説明のつかないものなんて、きっとない」と。 そうして彼は今日も取材に向かう。 影のない女、消せない落書き、異能の子、透明な魚、8番目の曜日――。 それらの裏に隠された真実を、カメラのレンズ越しに探るために。 だが彼の知らぬところで、世界の歪みは広がっている。 写真の中で見たものは、果たして現実と無関係なのか? 彼が足を踏み入れることで、何かが目覚めてしまったのではないか? 怪異に魅入られた者の末路を、彼はまだ知らない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...