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4章 影から出(いづ)るもの
1話 みお、独立する
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みおは幸田村の案件について、沙衣からお方様と呼ばれる1000年以上前に人魚の肉を食べた男が関わっていたと報告を受ける。
そして、一歩間違えれば、沙衣と祐二は死んでいたことも知らされる。
みおは、亜香子に抗議する
「また、先生に任された案件で死ぬところでしたよ。」
「生きているだろ。」
「そうですが・・・」
「適切な判断が出来ている証拠だよ。」
「はい。」
「もう教えることは無いんだ。独立しろ。」
「私はまだ強くありません。」
みおは、これまであってきた払い屋たちを目標にしている。
それには、全然届いていないのだ。
「おまえは目がいいから、それを生かした払い屋になればよい。」
「私は強くなれませんか。」
「十分、力があるだろ。」
「それ以上は、私や沙衣に任せればいい。」
「少し考えさせてください。」
みおは独立することを考えてみることにする。
とりあえず、春に事務所を立ち上げた沙衣の事務所に行くことにする。
みおが事務所に入ると祐二が尋ねる
「何かお困りごとですか。」
「いいえ、所長に会いに来たの。」
みおが答える。
沙衣が気づき
「みおさん、いらっしゃい。」
「こんばんわ。」
祐二が聞く
「こちらは。」
「大学の先輩の一条みおさんよ。」
「20代に見えますが大学生に見えませんよ。」
みおが若く見られて喜ぶ
「いい子を見つけたわね。」
沙衣が祐二を殴りながら
「渡しませんよ。」
と答える。
沙衣はみおに聞く
「今日はどうしたのですか。」
「独立を考えているんだけど、迷っているの。」
「独立した方が良いですよ。働いただけ儲かりますから。」
「収入に不満はないけど、先生に独立を勧められているの。」
「みおさんの実力なら1人前以上ではないですか。」
「沙衣に言われると恥ずかしいなー」
「後は、事務所と助手を手に入れるだけですよ。」
「沙衣は、助手に苦労してたね。」
「はい、皆辞めてしまって、残ったのが鈍感男です。」
「僕は霊に鈍感なだけですよ。」
祐二が抗議する。
「とりあえず事務所探してみるわ。」
「一度、五條に相談するといいですよ。」
「ありがとう。」
みおは帰って行く。
祐二が沙衣に言う
「優しそうな人ですね。」
「手を出すつもり。」
「僕は、沙衣一筋です。」
「みおさん、私の父と同い年だから。」
「えっ、ずいぶん若く見えますね。」
沙衣にも、みおが今年40歳になるとは思えない。
みおは、五條樹に電話する
「樹さん、お久しぶりです。」
「みおさんどうしたの。」
「私、独立を考えていて事務所探そうと思っているのです。」
「それなら浪江市で探すといいよ。いくつか紹介しましょうか。」
「五條は不動産も扱っているのですか。」
「違います。除霊に失敗して亡くなったり、引退した払い屋の物件を知っています。」
「お願いします。」
五條に頼むと話は早かった。
翌日には事務所が決まってしまう。
事務所は浜田駅に近くて駐車場付きである。
優良物件だが訳ありである。
ここに入る払い屋はみんな1年ほどで亡くなっているのだ。
その代わり家賃は安く済む。
みおは事務所が決まると開業の準備を始める。
助手の募集はハローワークに出すことにする。
そして、亜香子に報告する
「私、事務所を借りました。」
「独立する気になったか。」
「はい、何となくですが。」
「それじゃダメだろ。お金を稼ごうとしなくてはだめだぞ。」
みおは亜香子と沙衣は似ていると思う。
事務所の立ち上げは順調である。
しかし、助手の採用には苦労している。
面接に来るものが皆、エセ霊能者ばかりなのである。
みおは募集の仕方を間違えたかと考える。
そこへ35歳の男性が面接に来る
「御堂順二です。希望したのは私の経験が生かせる職場と考えるからです。」
「あのう、これまで霊能者として働いたことはありませんよね。」
順二の顔から汗が出る
「霊を見たことはありますか。」
「はい、子供のころは何度か見ましたが今は見えません。」
「そうですか、この事務所を見て何かいますか。」
「見えません、と言うか、妙に静かですね。」
みおから見て順二は合格である。
「明日から来れますか。」
「は、はい、お願いします。」
みおは順二に務まるかわからないが採用することにする。
開業してから1週間、依頼は1件もない。
順二は掃除をするだけでやることがない。
そこへ電話がかかってくる。
順二が応対に出る
「みおお祓い事務所です。」
「五條樹と申します。所長のみおさんはいますか。」
「はい、変わります。」
「樹さん、どうしましたか。」
「開業して依頼は来ましたか。」
「いいえ、まだです。」
「では、依頼第1号をお願いします。」
「分かりました。」
みおは電話を終えると順二に言う
「今からお客さんが来るからお茶の用意をして。」
「はい、初めてのお客さんですね。」
順二は初仕事に力が入る。
20分ほど待つと事務所に来客がある。
事務所に入ってきたのは、30歳代前半の女性である。
みおが応対する
「五條さんの紹介の方ですね。」
「はい、新井と申します。」
「今日は、どのような相談ですか。」
「私には息子がおります。」
「はい。」
「いつも公園でママ友たちと子供を遊ばせているのですが、いつも知らない男の子が遊びに交じっているんです。」
「ママ友の子供ではないのですね。」
「はい、近所の子だと思っていたのですが・・・」
「どうしました。」
「他のお母さんたちは、そんな子いないと言うんです。」
「他の人に見えていないというのですか。」
「はい、私、他のお母さんたちに変なことを言っていると思われてしまったんです。」
「私は、その子を何とかすればよいのですね。」
「はい、このままでは怖くて公園で子供を遊ばせることが出来ません。」
「分かりました。今から、公園に行きましょう。」
みおと順二は出かける準備をする。
女性は歩いて公園まで案内する。
そこは、事務所の近くの浜田公園である。
昼時でベンチには、会社員が座って弁当を食べているが子供はいない。
順二が言う
「子供いませんね。」
「いつもはいるんです。」
女性が言う。
すると順二が言う
「今、子供の声しませんでしたか。」
みおは言う
「さっきから子供いますよ。」
みおはブランコに向かって歩いていく。
順二にも女性にも子供は見えない。
みおはブランコの前でかがんで言う
「僕、何しているの。」
みおに見えている男の子は言う
「お母さん待っているの。」
「お母さんはお空にいるよ。」
「僕、公園から出られないの。」
「じゃ、公園から出してあげるね。」
みおは、そう言うと経文を唱え始める。
男の子の姿は薄くなり消えていく。
みおは、女性に言う
「男の子は成仏しました。」
「もう現れないのですね。」
「はい。」
みおの初仕事は無事に終わる。
そして、一歩間違えれば、沙衣と祐二は死んでいたことも知らされる。
みおは、亜香子に抗議する
「また、先生に任された案件で死ぬところでしたよ。」
「生きているだろ。」
「そうですが・・・」
「適切な判断が出来ている証拠だよ。」
「はい。」
「もう教えることは無いんだ。独立しろ。」
「私はまだ強くありません。」
みおは、これまであってきた払い屋たちを目標にしている。
それには、全然届いていないのだ。
「おまえは目がいいから、それを生かした払い屋になればよい。」
「私は強くなれませんか。」
「十分、力があるだろ。」
「それ以上は、私や沙衣に任せればいい。」
「少し考えさせてください。」
みおは独立することを考えてみることにする。
とりあえず、春に事務所を立ち上げた沙衣の事務所に行くことにする。
みおが事務所に入ると祐二が尋ねる
「何かお困りごとですか。」
「いいえ、所長に会いに来たの。」
みおが答える。
沙衣が気づき
「みおさん、いらっしゃい。」
「こんばんわ。」
祐二が聞く
「こちらは。」
「大学の先輩の一条みおさんよ。」
「20代に見えますが大学生に見えませんよ。」
みおが若く見られて喜ぶ
「いい子を見つけたわね。」
沙衣が祐二を殴りながら
「渡しませんよ。」
と答える。
沙衣はみおに聞く
「今日はどうしたのですか。」
「独立を考えているんだけど、迷っているの。」
「独立した方が良いですよ。働いただけ儲かりますから。」
「収入に不満はないけど、先生に独立を勧められているの。」
「みおさんの実力なら1人前以上ではないですか。」
「沙衣に言われると恥ずかしいなー」
「後は、事務所と助手を手に入れるだけですよ。」
「沙衣は、助手に苦労してたね。」
「はい、皆辞めてしまって、残ったのが鈍感男です。」
「僕は霊に鈍感なだけですよ。」
祐二が抗議する。
「とりあえず事務所探してみるわ。」
「一度、五條に相談するといいですよ。」
「ありがとう。」
みおは帰って行く。
祐二が沙衣に言う
「優しそうな人ですね。」
「手を出すつもり。」
「僕は、沙衣一筋です。」
「みおさん、私の父と同い年だから。」
「えっ、ずいぶん若く見えますね。」
沙衣にも、みおが今年40歳になるとは思えない。
みおは、五條樹に電話する
「樹さん、お久しぶりです。」
「みおさんどうしたの。」
「私、独立を考えていて事務所探そうと思っているのです。」
「それなら浪江市で探すといいよ。いくつか紹介しましょうか。」
「五條は不動産も扱っているのですか。」
「違います。除霊に失敗して亡くなったり、引退した払い屋の物件を知っています。」
「お願いします。」
五條に頼むと話は早かった。
翌日には事務所が決まってしまう。
事務所は浜田駅に近くて駐車場付きである。
優良物件だが訳ありである。
ここに入る払い屋はみんな1年ほどで亡くなっているのだ。
その代わり家賃は安く済む。
みおは事務所が決まると開業の準備を始める。
助手の募集はハローワークに出すことにする。
そして、亜香子に報告する
「私、事務所を借りました。」
「独立する気になったか。」
「はい、何となくですが。」
「それじゃダメだろ。お金を稼ごうとしなくてはだめだぞ。」
みおは亜香子と沙衣は似ていると思う。
事務所の立ち上げは順調である。
しかし、助手の採用には苦労している。
面接に来るものが皆、エセ霊能者ばかりなのである。
みおは募集の仕方を間違えたかと考える。
そこへ35歳の男性が面接に来る
「御堂順二です。希望したのは私の経験が生かせる職場と考えるからです。」
「あのう、これまで霊能者として働いたことはありませんよね。」
順二の顔から汗が出る
「霊を見たことはありますか。」
「はい、子供のころは何度か見ましたが今は見えません。」
「そうですか、この事務所を見て何かいますか。」
「見えません、と言うか、妙に静かですね。」
みおから見て順二は合格である。
「明日から来れますか。」
「は、はい、お願いします。」
みおは順二に務まるかわからないが採用することにする。
開業してから1週間、依頼は1件もない。
順二は掃除をするだけでやることがない。
そこへ電話がかかってくる。
順二が応対に出る
「みおお祓い事務所です。」
「五條樹と申します。所長のみおさんはいますか。」
「はい、変わります。」
「樹さん、どうしましたか。」
「開業して依頼は来ましたか。」
「いいえ、まだです。」
「では、依頼第1号をお願いします。」
「分かりました。」
みおは電話を終えると順二に言う
「今からお客さんが来るからお茶の用意をして。」
「はい、初めてのお客さんですね。」
順二は初仕事に力が入る。
20分ほど待つと事務所に来客がある。
事務所に入ってきたのは、30歳代前半の女性である。
みおが応対する
「五條さんの紹介の方ですね。」
「はい、新井と申します。」
「今日は、どのような相談ですか。」
「私には息子がおります。」
「はい。」
「いつも公園でママ友たちと子供を遊ばせているのですが、いつも知らない男の子が遊びに交じっているんです。」
「ママ友の子供ではないのですね。」
「はい、近所の子だと思っていたのですが・・・」
「どうしました。」
「他のお母さんたちは、そんな子いないと言うんです。」
「他の人に見えていないというのですか。」
「はい、私、他のお母さんたちに変なことを言っていると思われてしまったんです。」
「私は、その子を何とかすればよいのですね。」
「はい、このままでは怖くて公園で子供を遊ばせることが出来ません。」
「分かりました。今から、公園に行きましょう。」
みおと順二は出かける準備をする。
女性は歩いて公園まで案内する。
そこは、事務所の近くの浜田公園である。
昼時でベンチには、会社員が座って弁当を食べているが子供はいない。
順二が言う
「子供いませんね。」
「いつもはいるんです。」
女性が言う。
すると順二が言う
「今、子供の声しませんでしたか。」
みおは言う
「さっきから子供いますよ。」
みおはブランコに向かって歩いていく。
順二にも女性にも子供は見えない。
みおはブランコの前でかがんで言う
「僕、何しているの。」
みおに見えている男の子は言う
「お母さん待っているの。」
「お母さんはお空にいるよ。」
「僕、公園から出られないの。」
「じゃ、公園から出してあげるね。」
みおは、そう言うと経文を唱え始める。
男の子の姿は薄くなり消えていく。
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「はい。」
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