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2章 鏡界

1話 沙衣と美湖

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 坂井さかい町の赤壁の家は最恐の心霊スポットとして知られている。
 かえで、さくら、ひまり、あおいの4人は心霊スポットを訪れてはユーチューブに流している。
 4人は、スマホの自撮りで
 「今夜は赤壁の家に来ました。一番奥の部屋に行くと呪われて死ぬと言われています。」
 「それでは、行きます。」
かえでは玄関ドアのドアノブに手をかける。
 カギは壊れており、簡単に開く。
 玄関を懐中電灯で照らすと黒い影が現れる。
 4人は落ち着いて撮影する。
 「さっそく心霊現象です。」
 「見えますか黒い影がいます。」
4人は続いて居間に入るとソファーが浮き上がり飛んでくる。
 4人はソファーをかわす。
さくらが興奮したように
 「ポルタガイストよ。初めてだわ。」
と言う。
 さらに台所に移動すると包丁が飛んでくる。
 4人は危うくかわす。
 廊下に出ると部屋が3つある。
 2つの部屋を見てから3つ目の一番奥の部屋に入る。
 部屋には机とベットがあり、窓ガラスは割れ、椅子も壊れている。
 4人は自撮りのスマホに向かって言う
 「一番奥の部屋に来ました。」
 「何もないね。」
4人は部屋を出ようとすると頭の中に少女の声で聞こえてくる
 「最初はお前、次はお前、その次はお前、最後にお前、3日、3日、3日・・・」
と言いながら段々声は小さくなり聞こえなくなる。
 4人はそれぞれに言う
 「今の聞こえた。」
 「頭の中に響いてきたよ。」
 「あおい、ひまり、さくら、かえでの順よね。」
 「3日て言ってたよ。」
4人は不安になり、赤壁の家から出る。
 4人には様々な意見が投稿される。
 「3日で死ぬよ。」
 「お祓いした方がいいよ。」
 「怖がっているだけでしょ。」
4人はどうするか考える。
 あおいは
 「殺せるわけないでしょ。」
と強気である。
 そこで3日目の夜をユーチューブで配信することにする。
 当日、部屋の中央にあおいが座る。
 そして3人が様子を撮影する。
 夜11時になる。
 4人が赤壁の家に行った時間だ。
 部屋の床に黒い穴が開く。
 穴から2本の手が出てくる、手は青白く小学生の高学年くらいの小さな手である。
 あおいは、気づき叫び声を上げる
 「うわああぁー」
3人には見えていない
 「あおいどうしたの。」
ユーチューブを見ている人の中に見えている人がいるようで
 「青白い手が出てきた。」
と投稿してくる。
 穴から引き続き腕がズルズルと出てくる。
 あおいは、動けなくなり声も出なくなる。
 呪いはさらにズルズルと出てくる黒髪のおかっぱ頭が出てくる。
 顔は少女の顔をしているが青白く、目は黒い虚空になっている。
 口は半開きで
 「ああああああ」
とうめき声を出す。
 さらに肩、胸と続けて出てくる。
 かえでとさくらが、あおいを部屋から出そうとするが
 あおいは床に吸い付いているかのように動かない。
 少女の形をした呪いは足まで穴から出る。
 呪いは立つことも四つん這いになることもなく腹ばいのままあおいの方へ這いずっていく。
 手があおいの足に触れる、手は冷水のように冷たい。
 呪いの手が彼女の足を掴む、さらに体に掴まりながらズルズルと上がって来る。
 そして、呪いの頭が彼女の顔の所へ来る。
 黒い虚空の目が彼女を見る。
 彼女は魂を抜かれるように倒れる。
 ひまりが救護隊を呼ぶ。
 しかし、手遅れである。
 3人はパニックに陥る。
 仲間が目の前で死んだのである。
 「浪江なみえ市の五條ごじょう家に頼みなさい。」
と投稿される。
 ユーチューブを見ていた一条みおが投稿したのだ。
 3人は様々な投稿の中で、指示がはっきりしている一条みおの投稿に従うことにする。
 かえでが五條家に電話する
 「呪いの件なのですが。」
 「少々お待ちください。」
電話の相手が変わる
 「五條いつきと申します。呪いの件ですか。」
 「はい、赤壁の家に行って呪われたのです。仲間が1人死にました。」
 「赤壁の家ですか。」
樹に冷や汗がにじむ。
 彼は以前、赤壁の家にかかわって多くの人が死んだことを知っている。
 「分かりました。すぐに五條に来てください。」
 「分かりました。」
3人はすぐに浪江市に向かう。
 樹は離れに行く、そこには五條美月みつきと五條美湖みこがいる。
 樹は2人に言う
 「赤壁の家の件です。すぐに祓い屋を手配する必要があります。」
 「それなら沙衣しかいません。」
美湖が言う。
 「そうですね。彼女に頼みましょう。」
美月が決定する。
 美湖はスマホで沙衣に連絡する
 「仕事の依頼できる。」
 「いいわよ。」
 「赤壁の家の怨霊を除霊して来て。」
 「遠くね、分かったわ。」
 「急いでね。」
 「今から用意するわ。」
沙衣は祐二に電話する
 「今から事務所に来て。」
 「急ぎなの。」
 「そうよ。」
祐二は急いで着替えて事務所に向かう。
 彼は事務所に着くが沙衣は来ていない。
 30分ほど待つと沙衣が来る。
 祐二が沙衣に言う
 「僕、急いできたんだけど。」
 「私も急いできたわよ。」
祐二は嘘だと思う。
 沙衣は事務所まで10分位の近くに家があるのである。
 沙衣は祐二に説明する
 「今回は怨霊の呪いの解呪をするわ。」
 「では、五條さんと仕事をするのですか。」
 「そうだけど、美湖に会いたいの。」
 「そんなことはありません。」
 「ならいいけど。私たちは赤壁の家に行って怨霊を除霊するわ。それが済んだら美湖たちが解呪します。」
 「別々に行動するのですね。」
 「そうよ。」
沙衣は説明が終わると事務所に置いてあるマツダ・ロードスター赤色 令和2年式を運転して祐二と坂井町に向かう。
 五條家にかえで、さくら、ひまりの3人が訪れる。
 美湖が3人を見ると顔が歪んで見える。
 怨霊に呪われているのだ。
 3人は美湖に聞く
 「私たち助かるのですか。」
美湖はひまりに
 「次はあなたの番ですね。あと何日残っていますか。」
 「3日です。」
 「おそらくあなたも間に合うでしょう。」
 「すぐに呪いは解けないのですか。」
 「手順があります。詳しくは中で話します。」
美湖が言うと樹が3人を離れに案内する。
 離れの部屋には、当主の美月がいる。
 美月は3人に言う
 「赤壁の家の怨霊は、以前除霊しています。」
 「でも、私たちは呪われました。」
 「分かっています。」
 「どうやって呪いを解くのですか。」
 「まず、祓い屋が怨霊を除霊します。そして私たち呪い屋が解呪します。」
 「先に解呪できないのですか。」
 「除霊しないと効果がありません。坂井町は遠いので時間との勝負になります。」
 「お願いします。」
頭を下げる3人の手は震えている。
 沙衣は、途中、ビジネスホテルに泊まる。
 祐二は別の部屋である。
 彼は同じ部屋が良かったが贅沢な願いである。
 沙衣と祐二は、坂井町に夕方前に着く。
 赤壁の家は木造平屋建てで雑木林に囲まれており、周りに民家はない。
 沙衣には、赤壁の家は黒い靄に包まれて見える。
 「これはひどいわ。まるで家そのものが怨霊ね。」
沙衣は独り言を言うと祐二に言う
 「暗くなる前に片づけるわよ。」
 「はい、急ぎましょう。」
祐二は暗くなると足元が危ないと思い言う。
 沙衣は、玄関に行かず、草をかき分け、直接、一番奥の部屋へ向かう。
 部屋の外に着くと、腰高窓を水の刀で切り、破壊する。
 祐二は沙衣に言う
 「ちょっと乱暴ではないですか。」
 「この部屋の怨霊を倒せばよいのだから、あとは無視しても構わないのよ。」
 「そうですか。」
沙衣と祐二は、壊した窓から部屋へ入る。
 祐二の目には、部屋に机とベット、壊れた椅子があるだけだ。
 しかし、沙衣には、青白い少女の怨霊が部屋の中央に立っている。
 沙衣は祐二に言う
 「部屋の隅に行って、ペットボトルを3本とも開けて。」
祐二は壁際に行き、リュックサックからペットボトル3本を出して蓋を開ける。
 沙衣は、水の刀と盾を作り少女の怨霊に迫る。
 霊は、机を浮かせると沙衣に向けて飛ばす。
 沙衣は盾で受け流すが、祐二のいた方向へ飛んでいく。
 彼女は祐二が気になり、一瞬、祐二の無事を確認する。
 祐二は突然、机が飛んできて驚き壁にもたれかかる。
 怨霊は一瞬の隙をついて沙衣の首を両手で絞める。
 手は氷のように冷たく力が強い。
 さらに怨霊はうろのような暗い目で沙衣の顔を覗き込む。
 沙衣は魂が抜き取られるような感じになる。
 彼女は、これは危ないと感じ目をつむる。
 しかし、魂を抜き取られる感じは止まらない。
 彼女は集中して部屋の中に霧を発生させ無数の水の刃を作り、怨霊に切りつける。
 怨霊は苦しいのか手を離す。
 沙衣は、水の刀で怨霊の首をはねる。
 魂が抜き取られるような感じはなくなるが、はねた首は元に戻る。
 沙衣は攻撃の手を緩めない。
 水の刀で怨霊を切り続ける。
 次に怨霊に攻撃されれば、本当に魂を抜かれるかもしれない。
 沙衣は集中して水の刀を維持し続ける。
 怨霊は次第に傷が戻らなくなる。
 彼女が上段から一閃すると怨霊は霧散する。
 彼女は肩で息をする。
 祐二には怨霊が見えないので、沙衣が必死に水で作った刀を振り回しているだけにしか見えない。
 だが、彼女は何かと命がけで戦っていたのは分かる。
 祐二は沙衣に声をかける
 「勝ったの。」
沙衣は苦しそうに答える
 「やったわ。」
祐二はホッとする。
 彼がもたれかかっていた壁がひび割れを起こす。
 ひびは四方八方に広がり天井や余暇もひび割れていく。
 家が揺れ始め
 「うおおおおおおお」
と叫ぶような音が聞こえる。
 沙衣は祐二に聞く
 「何をやったの。」
 「壁にもたれていました。」
 「とにかく逃げるわよ。」
 「はい。」
2人が壊した窓から外に出ると赤壁に家は崩れてつぶれる。
 沙衣の目にはつぶれた家から多くの霊が飛び出していくのが見える。
 そして、彼女は祐二を見る。
 祐二は言い訳をする
 「僕は壁にもたれただけですよ。」
沙衣は、祐二は霊に鈍感と言うわけではなく耐霊体質かもしれない思っていた。
 しかし、赤壁の家自体が霊的なものなら抗霊体質かもと考えるが、そんなものが存在するのかもわからない。
 彼女は今度、美湖に相談しようと思ったが、美湖が祐二に興味を持つといけないのでやめておくことにする。
 沙衣は、美湖に電話する
 「怨霊は除霊したよ。」
 「ありがとう、解呪ができるわ。」
美湖は除霊成功にホッとする。
 彼女はすぐに解除を始める
 まずはひまりから呪具に気を込めて頭をたたく
 美湖が呪具で何回か叩くを顔のゆがみはなくなる。
 彼女はさくら、かえでの順に解呪する。

 後日、かえで、さくら、ひまりは、沙衣に会うため、中野沙衣探偵事務所を訪れる。
 祐二が応対に出るとひまりが祐二の手を握って言う
 「先生、ありがとうございます。」
 「あのー」
祐二は戸惑う。
 沙衣は祐二に聞く
 「祐二のお友達かしら。」
 「違います。」
 「なら、その女は、なーに」
沙衣は祐二を睨む。
 ひまりは祐二に言う
 「沙衣先生どうしたのですか。」
 「僕は祐二です。助手です。」
ひまりは手を離すと奥にいる沙衣を見る
 「先生、除霊の取材をさせてください。」
彼女は沙衣に迫る。
 沙衣は3人が今回の多額の出費を沙衣を取材することで補おうとしていることを知る。
 沙衣は断るがしばらく3人に付きまとわれることになる。
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