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14章 囚われの菊姫

6話 大治、再び

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 俺と清音は、大治の門に着く。
 俺は門番に言う
 「熊野つなである。領主の氏原殿にお目通り願いたい。」
門番の1人が領主の館に走る。
 俺たちは館に着くと馬を降りる。
 領主の氏原勝成が出迎える。
 勝成は俺たちに言う
 「黒鬼討伐の時はお世話になりました。今日は何かありましたか。」
 「話は中でします。」
 「分かりました。」
勝成は俺たちを広間に案内する。
 俺は勝成に話し始める
 「菊姫が鬼柳に攫われました。奴は洞戸村で私たちを待っています。」
 「それは大変です。帝は知っているのですか。」
 「帝から書簡を預かっています。」
俺は勝成に書簡を渡す。
 勝成は書簡を読むと配下の者を呼び軍1000を直ちに洞戸村に向かわせるように指示する。
 俺は勝成に言う
 「鬼柳の目的は私です。軍を当たらせても犠牲が出るだけです。」
 「軍は戦闘のために出すのではありません。村人の救助のためです。」
俺は菊のことばかり考えて、村人のことを失念していた。
 「すみません。村人が無事だといいのですが。」
 「今は最善を尽くしましょう。つな殿と清音殿は菊姫のことを一番に考えてください。」
 「村人が人質になる恐れもあります。」
 「その時は村人を見捨ててください。」
 「それはできません。」
 「そんな甘いことでは勝てませんよ。」
 「氏原殿の言うことは正しいと思いますが、納得はできません。」
俺には割り切ることはできない。
 「大丈夫、その時は私が戦う。菊の方が大事だから。」
清音が言うと勝成が俺に言う
 「清音殿にそこまで言わせてどうするんですか。」
 「分かりました。そのようにします。」
俺はそういったが、迷いを残している。
 日が落ち、俺と清音は館の庭に陣を張り、中で待ち伏せる。
 勝成が俺たちに声をかける
 「何をしているのですか。」
 「待ち伏せをしています。」
 「黒鬼でも来るというのですか。」
 「扶桑と国府で黒鬼に襲撃されました。」
 「ここも来るのですか。」
 「分かりませんが、襲撃はあります。」
 「見張りの兵を増やしましょうか。」
 「いいえ、庭から人を遠ざけてください。」
 「分かりました。」
勝成は手配をして、館は騒然となる。
 館は落ち着きを取り戻して、夜は更けていく。
 深夜になると館の屋根の上に黒い影が現れる。
 黒い影は、体重を殺して着地する。
 俺はそれと同時に力の刃を放ち、黒い影の両足を切り落とす。
 そして俺と清音は陣を飛び出すと黒い影の両腕を切り飛ばす。
 さらに清音は黒い影が地面に落ちる前に首をはねる。
 それでも黒い影はうごめき続ける。
 俺が刀で心臓を貫くと黒い影は動きを止める。
 館に明かりがともる。
 庭にも灯りが届き、黒い影が黒鬼だったことが判る。
 勝成は俺たちに言う。
 「腕を上げていますね。たった2人で討伐するとはすごいです。」
 「これでも鬼柳には及びません。」
俺が言うと勝成は考え込む。
 俺と清音は少し寝ると早朝に大治を出発する。
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