上 下
161 / 244
12章 宗七の働き

4話 交易手形

しおりを挟む
 3日目も宗七は俵屋に顔を出す。
 壮吉は宗七に言う
 「宗七さん、何度来ても何も出ないよ。」
 「私から何か出ればいいのですか。」
 「欲しいものはないよ。」
 「大治の商人の奴国の商人の交易の権利はどうですか。」
 「弱いな。今でも交易はしている。」
 「それなら協力した商人だけに権利を与えるのはどうですか。」
 「出来るのかい。」
 「帝に上申します。」
 「帝のお墨付きかい。」
 「そうです。どうでしょう。」
 「権利をもらえる商人はうちだけかい。」
 「俵屋を入れて4軒です。」
 「うちだけにしないのか。」
 「そうすれば、俵屋が大治で商売できなくなるでしょう。」
 「よくわかっているな。いいだろう。」
 「権利がもらえたら協力してもらいますよ。」
 「分かっているよ。」
宗七は話が付くと宿に戻り、帝への上申書を書く。
 使用人が帰ってくると相談して、あと3軒協力してくれる店を絞る。
 宗七は、翌日、その3軒の店を使用人と回って話を付ける。
 宗七と使用人は、その後も毎日店に顔を出す。
 情報があれば、帝に送るためである。
 国府と大治は、馬で5日の距離がある。
 帝の元に能鬼師の笛が届き、翌日には能鬼師の里について書簡が届く。
 帝は、宗七の情報収集能力に感心する。
 そして、さらに4軒の商人に奴国の商人と正式に交易する権利を与えることを望む上申書が届く。
 帝は、九条正親に聞く
 「大治の商人に奴国の商人と正式に交易する権利を与えることをどう思いますか。」
 「奴国とは鎖国状態です。やめたほうがよろしいかと。」
 「しかし、密輸は行われています。」
 「そうですが。」
 「宗七は、奴国の商人から情報を得るために必要だと言っていています。」
 「倭のためなら交易の権利など安いでしょう。」
 「そうですね。」
帝は、4人の商人に奴国の商人と正式に交易する権利を書面で発行する。
 そして、領主の氏原勝成にもそのことを書面で知らせる。
 宗七は、今日も俵屋に顔を出している。
 彼は、壮吉に聞く
 「交易の権利をもらったら何を商いしますか。」
 「織物だな。奴国の織物は柄が繊細で貴族に人気があるんだ。交易の権利があれば、堂々と貴族に売り込める。」
 「倭からは何を売りますか。」
 「食料だよ。」
 「穀物ですか。」
 「食料全般だ。」
 「奴国は戦争でもしているのですか。」
 「分からないが農村が疲弊しているらしい。」
 「働き手を搾取しているのですね。」
 「あの国は軍が大きいからな。」
 「奴国は軍事国家なのですね。」
宗七は、宿に帰ると奴国について知り得た内情を帝に書簡にして送る。
 そして、宗七の元に、4人の商人の交易手形が届く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...