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8章 見えない脅威

15話 帝、菊とつなの仲を認める

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 扶桑から国府まで馬で3日ほどの距離である。
 1日目の夕方になり、俺たちは寝る場所を決めて陣を張る。
 俺が陣を張っていると達郎が興味深そうに聞いてくる。
 「つな様、何をしているのですか。」
 「陣を張っている。この中は、音を立てない限り化け物から分からないんだ。」
 「それは便利だ。安心して寝れますね。」
 「用心のためだよ。」
達郎は感心する。
 深夜、一つ目が5匹現れるが、俺たちが静かにしていると立ち去って行く。
 2日目も順調に旅は続く。
 清音が俺に言う
 「襲撃はないのかしら。」
 「分からない、無事に国府に着きたいね。」
 「そうね。」
俺たちは、襲撃を警戒していたが今のところ気配はない。
 2日目の夕方になり、俺たちは寝る場所を決め、陣を張る。
 夜中、地面の振動に目を覚ます。
 達郎はすでに目を覚ましていたのか、俺に耳打ちする。
 「青鬼が5匹こちらに来ます。」
フクロウの達郎と呼ばれるだけあって、暗闇の中、見えているらしい。
 俺たちは息をひそめてやり過ごそうとする。
 しかし、馬が鳴いてしまう。
 俺は刀を抜き、刀に力を乗せ、刃の形にすると青鬼に向かって飛ばす。
 力の刃は、3匹の青鬼を切り裂く。
 弥次郎が陣を飛び出てすれ違いざまわき腹を切る。
 青鬼がうずくまったところを背中から心臓を貫く。
 清音は、青鬼の右腕をかいくぐり、右足を切り落とす。
 そして、千代音がバランスを崩した青鬼の首をはねる。
 達郎は一瞬の出来事に言葉を失う。
 彼はつなや弥次郎たちなら土蜘蛛を倒せるのではないかと思う。
 3日目の午後、俺たちは国府に着く。
 街の門から入り、大通りをまっすぐ進むと城の外門に行きあたる。
 俺は門番に言う
 「熊野つなである。帝の召喚に応じてきた。」
 「開門。」
門番が大声を上げると門が開く。
 俺たちは、馬で100メートル位進むと中門に着き、馬を降りる。
 俺たちは中門を通り、建物の入り口に着く。
 履き物を脱ぎ廊下を歩く、2度階段を上がり、何も置いていない部屋に入る。
 部屋には兵が2人いる。
 達郎は中門を入ってから、何者かに見張られている感じをしている。
 さらにこの部屋の兵は剣の腕が尋常でないことを感じる。
 それでも、弥次郎たちの方が剣の腕は上だろう。
 彼は今化け物に囲まれているのかもしれないと思う。
 俺は言う
 「帝の召喚により参上しました。お目通り願います。」
清音と弥次郎、千代音が面を外す。
 達郎は、千代音と清音の美しさに驚く。
 兵は黙ってふすまを開ける。
 俺たちは、中に入り、部屋の中央まで来ると正座して平伏する。
 部屋の一段高いところから帝が俺に話しかける
 「つな、武芸大会以来ですね。」
 「はい。」
 「今回は、土蜘蛛を討伐してもらいます。」
 「仰せのままに」
 「討伐に成功したならどうしましょう。」
 「官位で報いるべきだと愚考します。」
控えていた九条正親が言う。
 「官位が軽く見られてしまいます。」
今泉清光が反論する。
 「私は官位を上げることに異論はありませんが、菊はクモと引き換えるほど安くありませんよ。」
 「はい。」
俺は菊の話が出てきて冷や汗が出る。
 「つなと清音は、菊と風呂を一緒に入るほど仲が良いそうですね。」
 「・・・」
俺は腹の下が冷えてくる。
 「水浴びも一緒です。」
清音がとどめを刺す。
 貴族たちがざわめく。
 帝は咳払いをして言う
 「大変仲が良いようですね。」
 「はい。」
 「官3位は次の功を上げた時にしましょう。」
 「はい。」
 「菊を大事にするのですよ。」
 「えっ・・・」
 「不満ですか。」
 「いいえ、ありがたき幸せです。」
 「よろしい。ほかの3名は官位と報奨金で報いましょう。」
貴族たちはざわめく。
 帝が菊姫とつなの仲を認めたのである。
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