上 下
44 / 244
2章 官位を得る

16話 盗賊討伐

しおりを挟む
 案内が町を出て国府とは反対の方向の道を行く2時間ほど歩くと林の切れ間に草原がある。
 俺は討伐部隊の陣形を横陣にして草原を進むと前方の丘に盗賊が現れる。
 討伐部隊の動きは盗賊に筒抜けのようだ。
 数が異常である明らかに討伐部隊より数は多く500人はいそうである。
 しかも陣形を山型の魚鱗ぎょりんにして向かってくる。
 中央突破してこちらの陣形を崩し、数ですりつぶすつもりのようだ。
 相手は盗賊ではなく軍隊そのものである。
 俺は討伐部隊にここにとどまるように指示し、抜刀し盗賊に向かって走り出す。
 清音もついてくる。
 俺は刀に力を乗せ、力を刃にして刀を振り、刃を飛ばす。
 飛ばした刃は魚鱗の中央を前方から後ろへと通り過ぎる。
 刃が通って後は血しぶきで赤く染まる。
 両翼に盗賊が残るが、彼らは何が起こっているのか理解できていない。
 俺は右翼に力の刃を飛ばす。
 右翼は血に染まる。
 左翼がようやく逃げ始める。
 俺は左翼に力の刃を飛ばす。
 数人切り損ねるが後は血しぶきに代わる。
 俺と清音は走って追いかけ残りを始末しようとするが残りの盗賊5人は降参する。
 俺たちは降参した盗賊を討伐部隊に引き渡す。
 良房が俺たちの所に駆け付ける
 「つな殿、すばらしい戦いぶりです。」
 「盗賊にしてはおかしくありませんか。」
 「確かに数が多すぎますし、陣形を作って攻めてきました。」
 「捕虜が話してくれると助かるのですが。」
 「後は調査を待ちましょう。」
良房は何か調べていたのだろうか。
 俺と清音は良房の頼みでしばらく扶桑にいることになる。
 盗賊討伐の結果は早馬が国府へ走っている。
 俺と清音は角倉に戻る。
 正面から入るが歓迎される。
 宗七が俺に言う
 「つな殿、盗賊討伐お疲れ様です。」
 「もう知っているのですか。」
 「商人は情報が大事ですよ。」
宗七は嬉しそうだ。
 翌日、町に出ると盗賊討伐の話が町中に広まっている。
 食事処に入ると俺と清音は歓迎される。
 町の中に清音のことをあからさまに忌み人と言う者はいないようだ。
 3日後、領主の良房に呼び出される。
 俺と清音は領主の館に行くと離れに通される
 良房は俺たちに話し始める
 「盗賊は元農民でした。」
 「食い詰めて盗賊になったんですか。」
 「いいえ、兵に連れてこられて盗賊になったそうです。」
 「犠牲者ですね。」
 「そうですが斬首が決まっています。」
 「そんなに多く農民がいなくなったら領主が気づきそうですが。」
 「領主が知っていたらどうです。」
 「その領主が主犯ですか。」
 「いいえ、5人はそれぞれ別の領主がいます。」
 「大がかりですね。」
 「ここだけの話ですが九条正親くじょうまさちかが裏にいるようです。」
 「九条正親とは。」
 「竹丸様を推す、官1位の貴族で娘を竹丸様の正室に狙っています。」
 「すると菊姫の夫を狙う貴族もいるのですね。」
 「はい、あなた様です。」
 「えっ。」
 「そういう噂もありますから気を付けて下さい。」
 「はい、びっくりしました。」
 「四條道隆しじょうみちたかです、官1位の貴族で息子の長良ながらを姫の婿に狙っています。」
俺はとんでもない世界に足を突っ込んでいるようだ。
 「国府に戻ったらこれを菊姫にお渡しください。」
良房は書簡を俺に渡す。
 こうして俺と清音は国府に戻ることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん
ファンタジー
「今のわたしでは・・ここにある・・それだけ」白い部屋で目覚めた俺は、獣人達のいる魔法世界に一人放り出された。女神様にもらえたものはサバイバルグッズと1本の剣だけ。 これだけで俺はこの世界を生き抜かないといけないのか? あそこにいるのはオオカミ獣人の女の子か。モフモフを愛して止まない俺が、この世界で生き抜くためジタバタしながらも目指すは、スローライフ。 無双などできない普通の俺が、科学知識を武器にこの世界の不思議に挑んでいく、俺の異世界暮らし。 ―――――――――――――――――――――――――――― 完結した小説を改訂し、できた話から順次更新しています。基本毎日更新します。 ◇基本的にのんびりと、仲間と共にする異世界の日常を綴った物語です。 ※セルフレイティング(残酷・暴力・性描写有り)作品

あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します

名無し
ファンタジー
 レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。  彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。

【完結】最強の生産王は何がなんでもほのぼのしたいっっっ!

Erily
ファンタジー
エイシャル=ベルベラットは優秀な両親をもつ貴族の令息。 父は暗黒騎士で国の騎士団の騎士長、母は死神の使いという職業。 エイシャルはどちらに転んでも超優秀なハズだった。 しかし、18歳の成人の日に開いたステータス画面の職業は、生産者…。 父と母の落胆は凄まじく、エイシャルは部屋から出るなと言われ2年間引きこもった。 そして、18歳になった弟のダルマスの職業が天雷の剣士である事が分かった。 両親は狂喜乱舞し、ダルマスを継承者に立てると、エイシャルは体良く辺境の屋敷に追い出された。 最悪な展開かと思いきや… エイシャルは、ある事がきっかけで生産スキルの力を発揮し、ほのぼの生活を謳歌していく。 そんな、超ほのぼのしたオハナシ。

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...