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気付かぬそれは、恋煩い
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「わたしは、常世さんのことが好きだと言いました」
あなたのことが好きだと言った十羽の声が、常世の耳から離れない。目の前に言った本人がいるのに、それはどこか夢見こごちだった。
かつて、自分に好意を向けてくれた人間がいただろうか。そんなことを振り返ってしまうのだ。
《兄さん! 常世兄さん!》
妹の常葉はいつも常世のあとを追いかけて、なんでも同じようにやりたがった。兄妹という親しみとは他に、妹は兄を好敵手のようにも思っていた気がする。兄だから妹を守るのは当たり前だと言い聞かされ、妹を守るためにこの体をいじめ抜いた。しかし、妹は幕末という世に自ら飛び込んで兄の知らぬところで大人になった。そう、知らない男たちから大事にされながら。兄など初めからいらなかったのかもしれない。
今ここにある自分は何者なのだろうか。考えれば考えるほどに分からなくなる。あの日守るものを失い、空虚に襲われた。一人で生きていくと決めたはずなのに、失いたくないと思う者が現れた。
それがまた常世を悩ませる。
―― 俺のことが、好きだと。まさか……単なる幻聴だろう
冷静に頭は動くのに、目の前の景色は淡く儚い。脳とは別に心は待ち侘びたようにその言葉だけをうまく拾った。温かな何かが常世の胸いっぱいに広がって、何も行動に起こせなくなっていた。
「あの、大丈夫ですか。具合、悪いですか」
瞬きもせずに呆然とした常世を心配した十羽が、常世の顔を覗き込む。常世の目は開いているのに、視線がどうにも合わないのだ。
「常世さんっ」
十羽は思わず常世の肩に手をおいて、しっかりしろと小さく揺すった。常世は揺すられるがままで、特に反応を示さない。魂だけがここではない何処かに行ってしまったのではないかと思うほどだ。
「しっかりしてくださいまし! 常世さん!」
「あ、ああ」
「まだ傷が癒えておりません。さあ、横になってください。何か食べられますか。わたし、お夕飯作ってまいります」
十羽は常世を布団に寝かせて、それから炊事場へ入った。
◇
数日もすると、常世の体もずいぶん回復した。まだ以前のように機敏な動きはできないが、普段の生活に支障はない。傷は痛めど、我慢できないほどではなくなったのだろう。
「あ、常世さんおはようございます」
「おはよう。もう起きていたのか」
「はい。朝食の準備です。藤田様が、裏庭のものは遠慮なく使えと仰っていたので。おかげでお野菜には困りません。ほら、見てください」
「ああ」
―― そういえば小さな畑があったな。あいつ、いつそんなことを……変なやつだ
「もうすぐできますからね」
「うん」
―― 十羽の作る飯はうまいんだよな。あの時の鹿鍋も最高だった
「ぁ……ふふ」
常世の表情は相変わらず硬く、言葉も非常に少ない。しかし、十羽には常世の心の声が聞こえていた。鹿鍋とは、十羽が強引に常世にお供をすると決め、野次馬から逃げたあの山中での出来事だ。
(そういえば、残りのお肉を干したんだったわ。あれ、どうなったかしら。また、手に入るといいのに)
「お肉があったら、常世さんの体にも力がつくのに。なかなか難しいですね」
「おい、やめろよ」
―― 山に入って鹿だの猪だのとろうなんて思うなよ。怪我でもしたら大変だからな。こいつ鈍臭いから、一人でなんて行かせられねえ
「はい。わかりました」
言葉足らずなはずなのに、本当はたくさんの言葉を持っている。十羽は心が温かくなるのを感じた。
(わたしだけに届く、あなたの言葉。嬉しい)
「朝ごはんです。食べましょう」
十羽に笑顔を向けられた常世はむっとしたような表情で、小さく頷いた。口はさらに引き結ばれていた。
朝食を済ませた十羽はお椀を片付け終わると、休むまもなく井戸の前で洗濯を始めた。天気がよいので、このあとは布団も干したいと考えていた。
十羽の毎日は里にいた頃よりも、茶屋で給仕をしていた頃よりも、新選組であった頃よりもとても幸せだった。
(このまま、こんな日がずっと続けばいいのに)
常世の体調は日に日によくなっている。もとから鍛えられた強靭な肉体は、本当に治りが早い。また、いつ旅に出ると言いだすのかと不安になる程だ。
(でも、わたしに常世さんを止める権利はないから……)
そう思うと、十羽の心は少し濁ってしまう。この桶の水のように澱んで、何もかもが不安になるのだ。
「十羽」
声がする方を振り返ると常世が縁側に立っている。いつものあの不機嫌そうな顔である。
「はい。どうかしましたか」
「いや、なんでもない」
こんなやりとりが最近増えた。なんの用もないらしいが、常世は十羽を探して声をかけるとまた家の中に消えてしまう。まるで十羽の居場所を把握するための行動のようだった。小さな子供が母親の居場所を確認するそれに似ている。
魚売りが訪ねてきたときも、隣人と挨拶をしているときも、十羽の背中にはいつも常世の気配があった。しかし、十羽が振り返る頃には常世の姿はない。
十羽がこの家は借り物だからと掃除を始めれば、常世も無言で手伝い始める。手が届かない高い場所はどこからともなく現れて「どけ」と言って自分がする。
「ありがとうございます」
「いや、別に」
「ふふふ」
「笑うな」
―― くそ、なんで笑うななんて言った。泣かれたらどうするんだ。十羽には笑っていて欲しいんだよ
「常世さん。ありがとうございます」
十羽に常世の気持ちは届いてる。だから最高の笑顔でそう言った。常世は視線を泳がせたのち、ふいっと顔を逸らしてその場から離れた。
なんと、不器用な男であろうか。そんな常世を見ているだけで、十羽はじゅうぶんに幸せだった。
◇
ある日、十羽は町に出ることにした。どうしても買い足さなければならないものが出てきたのだ。
「常世さん。わたしちょっと町に出てきます。お味噌とお塩が切れそうなので。それから何か必要なもの、ありますか」
十羽が常世の背中にそう問いかけると、今までにないくらい不機嫌な顔で振り返り十羽を一瞥した。そして、無言で立ち上がると奥の部屋に入ってしまった。いつも聞こえてくる心の声はまだない。
「怒ったのかしら。いちいち煩いって思ったのかもしれない。失敗したなぁ」
最近は常世の扱いに慣れたつもりでいた。少し、調子に乗りすぎたのかもしれない。十羽は胸に手を当てて目を瞑った。
(おごりすぎては、だめ……)
とにかく、買わないわけにはいかないので落ち込みながらも身支度をした。わずかではあるがお金を懐にしまって草履を履く。
「早く帰って来なくっちゃ」
戸に手をかけた時、ぶっきらぼうな声がした。
「おい」
「あ、すぐに戻りますから」
「俺も行く」
―― また変な男に絡まれたらどうする。俺のそばから離れようとするな
その声を聴いた十羽は自然と口元が綻んだ。
「はい! では、参りましょう」
(嬉しい。常世さんと、町でお買い物ができるなんて。今夜はお夕飯、がんばらないと)
町までは歩いて一里ほどである。同じ東京とはいえ、まだまだ一部を除いては江戸の頃となんら変わらない暮らしをしている。噂では異国の者が横浜に大勢上陸したという。眼の色が違うのよと、隣人から聞かされた。
「異人さんて、眼の色が青いそうですよ。同じ人間なのに不思議ですね。そういえば髪の色も違うのですって。何を食べたら変わるのでしょうか」
十羽は楽しくてつい、たくさん話してしまう。たとえ常世からの返事がなくても、気持ちが踊るのは抑えられないのだ。
十羽は相変わらずな表情で歩く常世に、置いていかれぬよう常世の少し前を歩きながら振り返っては色々な話をした。十羽が借りている藤田の家の隣人は、たくさんの珍しい話をしてくれる。それを常世に話したくて仕方がない。
「あっ、もしかしたら町にはお肉があるかもしれません。鶏鍋ができるかも……きゃっ」
後ろ向きで歩いていたせいで、小石に躓いてしまったのだ。こんなところで転けてしまえば、常世から呆れられるかもしれない。
「ばーか」
「あ……」
天を仰ぎかけたところで、常世が十羽の体を支えた。言葉は悪いくせに、両腕で大切そうに十羽の体を受け止めている。
「ごめんなさい、わたし」
「前を見て歩け。ほら、行くぞ」
常世は十羽と目を合わそうとはしない。しかし、その手には十羽の手がしっかりと握られぎゅっと力を込めて、歩き出したのだ。
手を引かれた十羽は胸の奥が締め付けられたように苦しくなった。常世の手のひらがとても熱かったから。
「常世、さん」
「なんだ」
「ありがとう、ございます」
十羽がそう告げると、返事の代わりにまたぎゅっと手を握られた。手のひらからも常世の声が溢れてくる。
―― 俺から離れるなよ、ばか
あなたのことが好きだと言った十羽の声が、常世の耳から離れない。目の前に言った本人がいるのに、それはどこか夢見こごちだった。
かつて、自分に好意を向けてくれた人間がいただろうか。そんなことを振り返ってしまうのだ。
《兄さん! 常世兄さん!》
妹の常葉はいつも常世のあとを追いかけて、なんでも同じようにやりたがった。兄妹という親しみとは他に、妹は兄を好敵手のようにも思っていた気がする。兄だから妹を守るのは当たり前だと言い聞かされ、妹を守るためにこの体をいじめ抜いた。しかし、妹は幕末という世に自ら飛び込んで兄の知らぬところで大人になった。そう、知らない男たちから大事にされながら。兄など初めからいらなかったのかもしれない。
今ここにある自分は何者なのだろうか。考えれば考えるほどに分からなくなる。あの日守るものを失い、空虚に襲われた。一人で生きていくと決めたはずなのに、失いたくないと思う者が現れた。
それがまた常世を悩ませる。
―― 俺のことが、好きだと。まさか……単なる幻聴だろう
冷静に頭は動くのに、目の前の景色は淡く儚い。脳とは別に心は待ち侘びたようにその言葉だけをうまく拾った。温かな何かが常世の胸いっぱいに広がって、何も行動に起こせなくなっていた。
「あの、大丈夫ですか。具合、悪いですか」
瞬きもせずに呆然とした常世を心配した十羽が、常世の顔を覗き込む。常世の目は開いているのに、視線がどうにも合わないのだ。
「常世さんっ」
十羽は思わず常世の肩に手をおいて、しっかりしろと小さく揺すった。常世は揺すられるがままで、特に反応を示さない。魂だけがここではない何処かに行ってしまったのではないかと思うほどだ。
「しっかりしてくださいまし! 常世さん!」
「あ、ああ」
「まだ傷が癒えておりません。さあ、横になってください。何か食べられますか。わたし、お夕飯作ってまいります」
十羽は常世を布団に寝かせて、それから炊事場へ入った。
◇
数日もすると、常世の体もずいぶん回復した。まだ以前のように機敏な動きはできないが、普段の生活に支障はない。傷は痛めど、我慢できないほどではなくなったのだろう。
「あ、常世さんおはようございます」
「おはよう。もう起きていたのか」
「はい。朝食の準備です。藤田様が、裏庭のものは遠慮なく使えと仰っていたので。おかげでお野菜には困りません。ほら、見てください」
「ああ」
―― そういえば小さな畑があったな。あいつ、いつそんなことを……変なやつだ
「もうすぐできますからね」
「うん」
―― 十羽の作る飯はうまいんだよな。あの時の鹿鍋も最高だった
「ぁ……ふふ」
常世の表情は相変わらず硬く、言葉も非常に少ない。しかし、十羽には常世の心の声が聞こえていた。鹿鍋とは、十羽が強引に常世にお供をすると決め、野次馬から逃げたあの山中での出来事だ。
(そういえば、残りのお肉を干したんだったわ。あれ、どうなったかしら。また、手に入るといいのに)
「お肉があったら、常世さんの体にも力がつくのに。なかなか難しいですね」
「おい、やめろよ」
―― 山に入って鹿だの猪だのとろうなんて思うなよ。怪我でもしたら大変だからな。こいつ鈍臭いから、一人でなんて行かせられねえ
「はい。わかりました」
言葉足らずなはずなのに、本当はたくさんの言葉を持っている。十羽は心が温かくなるのを感じた。
(わたしだけに届く、あなたの言葉。嬉しい)
「朝ごはんです。食べましょう」
十羽に笑顔を向けられた常世はむっとしたような表情で、小さく頷いた。口はさらに引き結ばれていた。
朝食を済ませた十羽はお椀を片付け終わると、休むまもなく井戸の前で洗濯を始めた。天気がよいので、このあとは布団も干したいと考えていた。
十羽の毎日は里にいた頃よりも、茶屋で給仕をしていた頃よりも、新選組であった頃よりもとても幸せだった。
(このまま、こんな日がずっと続けばいいのに)
常世の体調は日に日によくなっている。もとから鍛えられた強靭な肉体は、本当に治りが早い。また、いつ旅に出ると言いだすのかと不安になる程だ。
(でも、わたしに常世さんを止める権利はないから……)
そう思うと、十羽の心は少し濁ってしまう。この桶の水のように澱んで、何もかもが不安になるのだ。
「十羽」
声がする方を振り返ると常世が縁側に立っている。いつものあの不機嫌そうな顔である。
「はい。どうかしましたか」
「いや、なんでもない」
こんなやりとりが最近増えた。なんの用もないらしいが、常世は十羽を探して声をかけるとまた家の中に消えてしまう。まるで十羽の居場所を把握するための行動のようだった。小さな子供が母親の居場所を確認するそれに似ている。
魚売りが訪ねてきたときも、隣人と挨拶をしているときも、十羽の背中にはいつも常世の気配があった。しかし、十羽が振り返る頃には常世の姿はない。
十羽がこの家は借り物だからと掃除を始めれば、常世も無言で手伝い始める。手が届かない高い場所はどこからともなく現れて「どけ」と言って自分がする。
「ありがとうございます」
「いや、別に」
「ふふふ」
「笑うな」
―― くそ、なんで笑うななんて言った。泣かれたらどうするんだ。十羽には笑っていて欲しいんだよ
「常世さん。ありがとうございます」
十羽に常世の気持ちは届いてる。だから最高の笑顔でそう言った。常世は視線を泳がせたのち、ふいっと顔を逸らしてその場から離れた。
なんと、不器用な男であろうか。そんな常世を見ているだけで、十羽はじゅうぶんに幸せだった。
◇
ある日、十羽は町に出ることにした。どうしても買い足さなければならないものが出てきたのだ。
「常世さん。わたしちょっと町に出てきます。お味噌とお塩が切れそうなので。それから何か必要なもの、ありますか」
十羽が常世の背中にそう問いかけると、今までにないくらい不機嫌な顔で振り返り十羽を一瞥した。そして、無言で立ち上がると奥の部屋に入ってしまった。いつも聞こえてくる心の声はまだない。
「怒ったのかしら。いちいち煩いって思ったのかもしれない。失敗したなぁ」
最近は常世の扱いに慣れたつもりでいた。少し、調子に乗りすぎたのかもしれない。十羽は胸に手を当てて目を瞑った。
(おごりすぎては、だめ……)
とにかく、買わないわけにはいかないので落ち込みながらも身支度をした。わずかではあるがお金を懐にしまって草履を履く。
「早く帰って来なくっちゃ」
戸に手をかけた時、ぶっきらぼうな声がした。
「おい」
「あ、すぐに戻りますから」
「俺も行く」
―― また変な男に絡まれたらどうする。俺のそばから離れようとするな
その声を聴いた十羽は自然と口元が綻んだ。
「はい! では、参りましょう」
(嬉しい。常世さんと、町でお買い物ができるなんて。今夜はお夕飯、がんばらないと)
町までは歩いて一里ほどである。同じ東京とはいえ、まだまだ一部を除いては江戸の頃となんら変わらない暮らしをしている。噂では異国の者が横浜に大勢上陸したという。眼の色が違うのよと、隣人から聞かされた。
「異人さんて、眼の色が青いそうですよ。同じ人間なのに不思議ですね。そういえば髪の色も違うのですって。何を食べたら変わるのでしょうか」
十羽は楽しくてつい、たくさん話してしまう。たとえ常世からの返事がなくても、気持ちが踊るのは抑えられないのだ。
十羽は相変わらずな表情で歩く常世に、置いていかれぬよう常世の少し前を歩きながら振り返っては色々な話をした。十羽が借りている藤田の家の隣人は、たくさんの珍しい話をしてくれる。それを常世に話したくて仕方がない。
「あっ、もしかしたら町にはお肉があるかもしれません。鶏鍋ができるかも……きゃっ」
後ろ向きで歩いていたせいで、小石に躓いてしまったのだ。こんなところで転けてしまえば、常世から呆れられるかもしれない。
「ばーか」
「あ……」
天を仰ぎかけたところで、常世が十羽の体を支えた。言葉は悪いくせに、両腕で大切そうに十羽の体を受け止めている。
「ごめんなさい、わたし」
「前を見て歩け。ほら、行くぞ」
常世は十羽と目を合わそうとはしない。しかし、その手には十羽の手がしっかりと握られぎゅっと力を込めて、歩き出したのだ。
手を引かれた十羽は胸の奥が締め付けられたように苦しくなった。常世の手のひらがとても熱かったから。
「常世、さん」
「なんだ」
「ありがとう、ございます」
十羽がそう告げると、返事の代わりにまたぎゅっと手を握られた。手のひらからも常世の声が溢れてくる。
―― 俺から離れるなよ、ばか
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