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本編
8、安達三曹のアイスクリーム
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今までの頑張ったご褒美はスイーツだった。休みの日に外出先で買ってきたシュークリームや、駅前の期間限定出店のみたらし団子、同じ班員が実家から持ち帰った土産物、営内売店で買うチョコレート。
安達にとって訓練で疲れた体にしみるのは、酒ではなく甘味だった。
そのご褒美が、盆休みを境にがらんと変わった。頑張ったご褒美は若菜と食べるスイーツだ。いつも朗らかで笑顔を絶やさない彼女と食べるスイーツは、美味しいだけではなかった。言葉に表せないほどに何かが満たされていくのだ。
「安達。看護官おめでとう! これでいよいよ立派な衛生隊員だな」
「ありがとう内田。おまえは普通科を極めろよ」
「へっへー。負けてられないからな。目指せ幹部! ってな。てかよ、異動するのは俺の方かよ。またな! スイーツゴリラ男子」
「ああ。内田もがんばれよ。で、そのスイーツのあとになぜゴリラがつく」
「すまん。パンダの間違いだ」
「パンダ? どんな間違いだ」
「ほんと、仏様かよ。ぜんぜん怒らないんだなおまえはさ。どうしたらそんな風になれるんだよ」
「俺が知るわけないだろ。生まれつきだ」
どんなに過酷な訓練でも、どんなに理不尽な命令でも、どんなに周りから揶揄われようとも、安達は怒ったり声を荒げたりしない。我慢強さは同期の中ではいちばんで、だからといって気が弱いわけではない。そこに安達がいるだけで、不思議と同期たちは安心してしまう。それほどに存在感のある男なのだ。
「安達に救護されないようにしないとな」
「そうだな」
親しい仲間との別れは寂しいが、お互いに励まし合い次に会う時はひと味違う男になっていると信じている。それこそ幹部になっているかもしれない。部下を連れて、国防のために勤しんでいるだろう。
また少し忙しくなりますが、できる限りメールします。もらった醤油の感想も忘れていません。
忙しい時は体を休めるのを優先してください。感想はいつでもいいですよ。がんばってください。若菜
ずいぶん慣れたメールでのやりとり。慣れた分、返信が待ち遠しいし、寝る前は必ず確認してしまう。
あなたにまた会いたい。あのメッセージが安達の心を刺激したのは間違いない。ナンパされる若菜を見て、守ってやらねばと気持ちが焦がれていく。
守るためには強くならなければならない。今よりももっと、明日よりもずっと強い自分になる必要がある。
ありがとう。おやすみなさい。
◇
自衛隊病院での研修が終わり、准看護師の試験に合格した安達は赤十字の腕章(衛生腕章)を手にした。
そして、衛生隊員として更なる知識と技術を磨くため、自衛隊衛生学校でのシミュレーション訓練に参加することになった。
このシミュレーションはリアルな戦場を再現している。視覚、聴覚、感覚に様々なプレッシャーをかけ、そんな中でも的確に救助と治療を行うのが目的だ。
「状況開始!」
薄暗い天幕の中で要救護者が横たわっている。頭上ではヘリコプターや戦闘機の音がする。大きな声を出しても相手に届かない。また、相手からの声もなかなか聴き取れない。
「助けに来たぞ! 大丈夫か!」
「名前は? 痛いところはあるか!」
声をかけながら素早く外傷がないか確認に入る。すると突然、煙が吐き出され患者の顔が見えなくなった。それでも脈を取り、意識レベルなどを確認する。
「触るぞ!」
「服を切るぞー」
本人がなにも伝えられないことはよくある。
患者の戦闘服を切り開き出血がないか、直接触れて確認をする。暗闇の中では目視確認ができないため、手の感覚で確かめるのだ。
―― ドドドドッ ドン!
地鳴り、着弾の音がけたたましい。
「出血なし!」
「意識レベル1!」
「小隊長! こちらの隊員、任務続行不可能と診断する!」
「搬送準備! 輸液確認、よし!」
これ以上は任務を続けられないと判断すると、すぐさま搬送し治療をする。任務続行が可能な程度であれば、その場で治療をし衛生隊員はすみやかに退避することになる。今回は続行不可能とした。
「いっちにっさーん」
「上げ準備、上げー」
複数名で連携しながら救護完了。
「状況終了!」
シミュレーションとはいえ、再現があまりにもリアルで緊張が半端ない。患者を診ているときに銃弾が飛んできてもおかしくないのだ。小銃を持った仲間が周囲を警戒しているとはいえ、命の危険は拭えない。いくらジュネーヴ条約で赤十字腕章をつけた衛生隊員は保護対象だと知っていても、実際の現場ではそれが守られるとは限らないのだ。
安達はそんな過酷な状況に膝が震えていた。どんなに訓練をしたって、技術を身につけたって、恐怖は拭えない。それでも「前へ!」と己を叱咤しながら前進をする。自分たちが行かなければ、現場で戦う自衛官は死ぬのを待つだけなのだから。
「死なせない! 必ず家族のもとに連れて帰る!」
「諦めるな! 絶対に!」
担いででも、必ず連れて帰る。
この手は絶対に離さない。
後方支援とはいえ、最前線に赴くこともある衛生隊。今まで安達が見ていた世界とは逆の視点で世界が展開されていく。これまでは国民のために盾になり、前進する訓練をしてきた。今度はその盾になり傷ついた隊員を後方へ連れ帰るのだ。そして、戦える体にしてまた送り出す。
(なんて過酷で残忍で、責任の重い仕事だろうか)
胸の奥がとても熱く、掻きむしりたい衝動にかられた。
◇
お仕事は大変ですか? 朝晩が涼しくなってきました。若菜
安達はあれから自由時間になると、携帯電話を確認するようになった。若菜は早朝か夜にメールを送ってくれる。一日に一通、または二日に一通の間隔だ。
こちらもずいぶん涼しくなりました。今から例のバニラに醤油を試します。
売店で買ったカップに入ったバニラアイスクリーム。あまり人気がないのかそれだけが大量に残っていた。その中のひとつを買うと、安達は部屋に戻って若菜からもらったアイスクリーム用の醤油をロッカーから取り出した。
(開封後はできるだけ早めにご使用ください……か。高温多湿を避け。ここのロッカー大丈夫か?)
そんなことを考えながら、ひとり醤油を開封。バニラアイスクリームの蓋を開け先ずはひと口、ふた口とそのまま食す。間違いのない味である。
(このメーカーのバニラは裏切らんな)
そしていよいよ醤油を試すときが来た。真ん中の窪みに少しだけ醤油を垂らした。醤油は普段使うものとは違い少しとろみがあった。
安達は期待に胸を膨らませ、そこにスプーンをさした。バニラに濃い茶色の醤油ソースが染みこんだところでスプーンをゆっくりと口の中に運んだ。
「ん! これは……ううむ」
安達の低い唸り声が、床を這っていく。たまたま廊下を歩いていた隊員が足を止めるほどのものである。
安達を唸らせたバニラアイスクリームはなんともいえないハーモニーを口の中で奏でていた。間違うことのないあのバニラアイスクリームが、醤油をかけられて冷たい和菓子に変身してしまったのだ。
しかも、醤油のかかり具合でその味が変化する。濃くかかったところはまるでみたらし団子。うっすらとかかったところは甘味の中に塩味が混じった塩アイスになる。
「これは、うまい」
安達はすぐに携帯電話を開いて文字を打った。今のこの感動を伝えなければと思ったのだ。
若菜さん! バニラアイスにいただいた醤油、とてもおいしいです。これは癖になります。ありがとう!
安達にしては珍しく感情のこもった文脈である。メールを送信した後の安達は、口元を綻ばせ残りのアイスクリームを食べた。緊張続きだった精神がゆっくりと解れていく気がする。アイスクリームを飲み込むたびに、若菜の笑顔が脳裏に浮かぶ。
(なんて幸せなんだ)
好物の甘味に若菜がプラスされて、安達は心からの幸せを噛み締めていた。
「安達三曹、なんて顔をしてるんすか」
「うん? ああ君は……」
「吉武陸士です。ところで、なんで醤油を?」
同じ衛生科で働く吉武陸士長が怪訝な顔をして安達に問いかける。それもそうだ。知らない者からしたら、訓練のしすぎでとうとう頭が……と思ってしまうのは仕方がない。
「吉武陸士も試してみないか。バニラアイスのために開発された醤油だ」
「えっ、アイス専用の醤油ですか!」
「そうだ。騙されたと思って食ってみろ。ほら、奢ってやるから売店に走れ」
安達はお金を吉武に握らせた。吉武は戸惑いながらもそれを受け取り言われた通りに売店に走った。
(誰が食べても美味いはずだ。不味いわけがない……)
この後、吉武にも絶賛され他の隊員たちにそれは広がり、不人気だったバニラアイスクリームが瞬く間に売れてしまった。訓練で伸びかけた若手衛生隊員の間で安達三曹のアイスクリームを食べると生き返ると噂になり、若菜の醤油も取り合いになった。
安達はというと、怒りもせずにその醤油を彼らのバニラアイスクリームにかけてやった。
「うまいだろ?」
「はい! 疲れが吹っ飛びます!」
「うむ。甘味は心の栄養だからな」
「はい!」
若菜さん、あの醤油は間違いないです。後輩たちにも絶賛で、売店のバニラアイスがなくなりました。ありがとう。
きっと若菜も喜んでくれる。安達は少しづつ若菜の気持ちを想像するようになった。分からないと言っていたあの頃とは違う。言葉を交わしたり、メールでやりとりするたびに若菜の気持ちが安達の心に入ってくるようになった。
わあ! 嬉しい! 今度はもっとたくさんお渡ししますね! わたしにも自衛官さんを喜ばせることができるなんて光栄です。若菜
今度はきちんと買いますよ。あまり俺たちを甘やかしてはいけない。
わたしくらい甘やかしてもいいでしょう? 若菜
(まて、なんで野郎たちが若菜さんに甘やかされるんだ? 違う気がするぞ……)
俺だけを甘やかして欲しいという気持ちに、辿り着きそうで辿り着かない。
それが、安達である。
安達にとって訓練で疲れた体にしみるのは、酒ではなく甘味だった。
そのご褒美が、盆休みを境にがらんと変わった。頑張ったご褒美は若菜と食べるスイーツだ。いつも朗らかで笑顔を絶やさない彼女と食べるスイーツは、美味しいだけではなかった。言葉に表せないほどに何かが満たされていくのだ。
「安達。看護官おめでとう! これでいよいよ立派な衛生隊員だな」
「ありがとう内田。おまえは普通科を極めろよ」
「へっへー。負けてられないからな。目指せ幹部! ってな。てかよ、異動するのは俺の方かよ。またな! スイーツゴリラ男子」
「ああ。内田もがんばれよ。で、そのスイーツのあとになぜゴリラがつく」
「すまん。パンダの間違いだ」
「パンダ? どんな間違いだ」
「ほんと、仏様かよ。ぜんぜん怒らないんだなおまえはさ。どうしたらそんな風になれるんだよ」
「俺が知るわけないだろ。生まれつきだ」
どんなに過酷な訓練でも、どんなに理不尽な命令でも、どんなに周りから揶揄われようとも、安達は怒ったり声を荒げたりしない。我慢強さは同期の中ではいちばんで、だからといって気が弱いわけではない。そこに安達がいるだけで、不思議と同期たちは安心してしまう。それほどに存在感のある男なのだ。
「安達に救護されないようにしないとな」
「そうだな」
親しい仲間との別れは寂しいが、お互いに励まし合い次に会う時はひと味違う男になっていると信じている。それこそ幹部になっているかもしれない。部下を連れて、国防のために勤しんでいるだろう。
また少し忙しくなりますが、できる限りメールします。もらった醤油の感想も忘れていません。
忙しい時は体を休めるのを優先してください。感想はいつでもいいですよ。がんばってください。若菜
ずいぶん慣れたメールでのやりとり。慣れた分、返信が待ち遠しいし、寝る前は必ず確認してしまう。
あなたにまた会いたい。あのメッセージが安達の心を刺激したのは間違いない。ナンパされる若菜を見て、守ってやらねばと気持ちが焦がれていく。
守るためには強くならなければならない。今よりももっと、明日よりもずっと強い自分になる必要がある。
ありがとう。おやすみなさい。
◇
自衛隊病院での研修が終わり、准看護師の試験に合格した安達は赤十字の腕章(衛生腕章)を手にした。
そして、衛生隊員として更なる知識と技術を磨くため、自衛隊衛生学校でのシミュレーション訓練に参加することになった。
このシミュレーションはリアルな戦場を再現している。視覚、聴覚、感覚に様々なプレッシャーをかけ、そんな中でも的確に救助と治療を行うのが目的だ。
「状況開始!」
薄暗い天幕の中で要救護者が横たわっている。頭上ではヘリコプターや戦闘機の音がする。大きな声を出しても相手に届かない。また、相手からの声もなかなか聴き取れない。
「助けに来たぞ! 大丈夫か!」
「名前は? 痛いところはあるか!」
声をかけながら素早く外傷がないか確認に入る。すると突然、煙が吐き出され患者の顔が見えなくなった。それでも脈を取り、意識レベルなどを確認する。
「触るぞ!」
「服を切るぞー」
本人がなにも伝えられないことはよくある。
患者の戦闘服を切り開き出血がないか、直接触れて確認をする。暗闇の中では目視確認ができないため、手の感覚で確かめるのだ。
―― ドドドドッ ドン!
地鳴り、着弾の音がけたたましい。
「出血なし!」
「意識レベル1!」
「小隊長! こちらの隊員、任務続行不可能と診断する!」
「搬送準備! 輸液確認、よし!」
これ以上は任務を続けられないと判断すると、すぐさま搬送し治療をする。任務続行が可能な程度であれば、その場で治療をし衛生隊員はすみやかに退避することになる。今回は続行不可能とした。
「いっちにっさーん」
「上げ準備、上げー」
複数名で連携しながら救護完了。
「状況終了!」
シミュレーションとはいえ、再現があまりにもリアルで緊張が半端ない。患者を診ているときに銃弾が飛んできてもおかしくないのだ。小銃を持った仲間が周囲を警戒しているとはいえ、命の危険は拭えない。いくらジュネーヴ条約で赤十字腕章をつけた衛生隊員は保護対象だと知っていても、実際の現場ではそれが守られるとは限らないのだ。
安達はそんな過酷な状況に膝が震えていた。どんなに訓練をしたって、技術を身につけたって、恐怖は拭えない。それでも「前へ!」と己を叱咤しながら前進をする。自分たちが行かなければ、現場で戦う自衛官は死ぬのを待つだけなのだから。
「死なせない! 必ず家族のもとに連れて帰る!」
「諦めるな! 絶対に!」
担いででも、必ず連れて帰る。
この手は絶対に離さない。
後方支援とはいえ、最前線に赴くこともある衛生隊。今まで安達が見ていた世界とは逆の視点で世界が展開されていく。これまでは国民のために盾になり、前進する訓練をしてきた。今度はその盾になり傷ついた隊員を後方へ連れ帰るのだ。そして、戦える体にしてまた送り出す。
(なんて過酷で残忍で、責任の重い仕事だろうか)
胸の奥がとても熱く、掻きむしりたい衝動にかられた。
◇
お仕事は大変ですか? 朝晩が涼しくなってきました。若菜
安達はあれから自由時間になると、携帯電話を確認するようになった。若菜は早朝か夜にメールを送ってくれる。一日に一通、または二日に一通の間隔だ。
こちらもずいぶん涼しくなりました。今から例のバニラに醤油を試します。
売店で買ったカップに入ったバニラアイスクリーム。あまり人気がないのかそれだけが大量に残っていた。その中のひとつを買うと、安達は部屋に戻って若菜からもらったアイスクリーム用の醤油をロッカーから取り出した。
(開封後はできるだけ早めにご使用ください……か。高温多湿を避け。ここのロッカー大丈夫か?)
そんなことを考えながら、ひとり醤油を開封。バニラアイスクリームの蓋を開け先ずはひと口、ふた口とそのまま食す。間違いのない味である。
(このメーカーのバニラは裏切らんな)
そしていよいよ醤油を試すときが来た。真ん中の窪みに少しだけ醤油を垂らした。醤油は普段使うものとは違い少しとろみがあった。
安達は期待に胸を膨らませ、そこにスプーンをさした。バニラに濃い茶色の醤油ソースが染みこんだところでスプーンをゆっくりと口の中に運んだ。
「ん! これは……ううむ」
安達の低い唸り声が、床を這っていく。たまたま廊下を歩いていた隊員が足を止めるほどのものである。
安達を唸らせたバニラアイスクリームはなんともいえないハーモニーを口の中で奏でていた。間違うことのないあのバニラアイスクリームが、醤油をかけられて冷たい和菓子に変身してしまったのだ。
しかも、醤油のかかり具合でその味が変化する。濃くかかったところはまるでみたらし団子。うっすらとかかったところは甘味の中に塩味が混じった塩アイスになる。
「これは、うまい」
安達はすぐに携帯電話を開いて文字を打った。今のこの感動を伝えなければと思ったのだ。
若菜さん! バニラアイスにいただいた醤油、とてもおいしいです。これは癖になります。ありがとう!
安達にしては珍しく感情のこもった文脈である。メールを送信した後の安達は、口元を綻ばせ残りのアイスクリームを食べた。緊張続きだった精神がゆっくりと解れていく気がする。アイスクリームを飲み込むたびに、若菜の笑顔が脳裏に浮かぶ。
(なんて幸せなんだ)
好物の甘味に若菜がプラスされて、安達は心からの幸せを噛み締めていた。
「安達三曹、なんて顔をしてるんすか」
「うん? ああ君は……」
「吉武陸士です。ところで、なんで醤油を?」
同じ衛生科で働く吉武陸士長が怪訝な顔をして安達に問いかける。それもそうだ。知らない者からしたら、訓練のしすぎでとうとう頭が……と思ってしまうのは仕方がない。
「吉武陸士も試してみないか。バニラアイスのために開発された醤油だ」
「えっ、アイス専用の醤油ですか!」
「そうだ。騙されたと思って食ってみろ。ほら、奢ってやるから売店に走れ」
安達はお金を吉武に握らせた。吉武は戸惑いながらもそれを受け取り言われた通りに売店に走った。
(誰が食べても美味いはずだ。不味いわけがない……)
この後、吉武にも絶賛され他の隊員たちにそれは広がり、不人気だったバニラアイスクリームが瞬く間に売れてしまった。訓練で伸びかけた若手衛生隊員の間で安達三曹のアイスクリームを食べると生き返ると噂になり、若菜の醤油も取り合いになった。
安達はというと、怒りもせずにその醤油を彼らのバニラアイスクリームにかけてやった。
「うまいだろ?」
「はい! 疲れが吹っ飛びます!」
「うむ。甘味は心の栄養だからな」
「はい!」
若菜さん、あの醤油は間違いないです。後輩たちにも絶賛で、売店のバニラアイスがなくなりました。ありがとう。
きっと若菜も喜んでくれる。安達は少しづつ若菜の気持ちを想像するようになった。分からないと言っていたあの頃とは違う。言葉を交わしたり、メールでやりとりするたびに若菜の気持ちが安達の心に入ってくるようになった。
わあ! 嬉しい! 今度はもっとたくさんお渡ししますね! わたしにも自衛官さんを喜ばせることができるなんて光栄です。若菜
今度はきちんと買いますよ。あまり俺たちを甘やかしてはいけない。
わたしくらい甘やかしてもいいでしょう? 若菜
(まて、なんで野郎たちが若菜さんに甘やかされるんだ? 違う気がするぞ……)
俺だけを甘やかして欲しいという気持ちに、辿り着きそうで辿り着かない。
それが、安達である。
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