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そして始まる二人の物語ー本編ー
こんな俺でいい? ダメ!
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また、いつもの日常が帰ってきた。海音は休みになれば勝利のマンションに通い、時々あのおじ様の誰かともお茶をする事がある。もちろん勝利と一緒にではあるけれど。
「航海長の判断はよかったね。あそこで前に出なかったら、アイツらエンジン止めなかったからな」
「たまにはガツンとやらないと舐められるからね」
「そのガツンの力加減が難しいんですよ」
「まあ、今日はこれくらいで。カノンちゃんが来る頃だろ」
「江本さん、なんで。いや、来てるけどここ迄は来ませんよ」
「どうかな。お疲れさーん」
江本航海長の何やら怪しげな含み笑いが気になる。でも、勝利の心は仕事明けの晴れやかなもので、今頃は部屋で待っているだろう海音のもとに走りたくて仕方がなかった。本部を出ると、自然と急ぎ足になる。
(さぁて、今夜の飯は何だろうな)
海音の仕事は基本的にカレンダー通りで週末や祝日が休み、勝利はシフトで動いているため会える日もまちまちだった。巡視船に乗り込むと何日も陸に上がれない事もあった。そんな任務の後は必ず海音に溺れるのも恒例で、なぜなら海音は勝利が陸に上がる日は必ず有給休暇を取っていたからだ。そんな事をされたら海の男の箍なんて簡単に外れてしまう。
領海警備や排他的経済水域を航行するときは、それなりに緊張する。いつ、工作船や国籍不明船、密漁船に出くわすか分からない。その緊張が解かれ母港が見え始めると、下肢が疼きだす。海の男なら誰もが経験する事だろう。勝利が不思議に思うのは、若い頃よりも疼き方がヤバイらしい。きっとそれは子孫を残したがってるのかもしれない。
(もう、陸に上がってもいい頃だろ)
「ショウさーん!お帰りなさい!」
「おう!?」
本部を出て角を曲がるとすぐ、海音が手を上げて走って来た。あれ以来、海音は勝利のことをショウさんと呼ぶようになった。誰かと同じ呼び方はイヤ! 海音の小さな小さな抵抗でもあった。
(本当に来たのかここ迄! くぅー、可愛いすぎだぞっ!!)
「こんな所まで来るなんて、珍しいな」
「たまには来ても良いかなぁって」
海音は細い腕を勝利にからませて煽るように顔を見上げていた。いや、勝利が勝手に煽られているだけ。今すぐにでもむしゃぶりついて、骨の髄まで吸い尽くしたいなどとゴリラ改め海の猿はそう思う。
(この辺はホテルがないんだよなー)
「あ、あのね。お父さんが、ショウさんに会いたいって言うっちゃけど、どうかいな」
「そうだな。いい加減、嫁にくださいって言わないとな」
恥ずかしそうに俯いた海音の顔は真っ赤だった。その赤い顔にますますソソられた勝利は無骨な手で海音の頬を撫でた。
「休みを合わせて行こう。と、その前に」
「その前に?」
勝利は海音の手を取ってその上から自分の手を重ねた。何が始まるんだろうと、不安と期待感を混ぜ合わせたような顔で海音は勝利を見上げた。海音の肩越しに太陽の光が反射してオレンジ色に染まった湾が見える。沈む夕日に照らされて、キラキラとダイヤモンドの輝きの様に波が跳ねている。それを目に焼き付けて、勝利は海音の瞳を覗き込んだ。
「海音、俺の嫁さんになれ」
なってくれではなく、勝利はなれと言った。海音に拒否権は無いんだと、重ねた手をぎゅっと握った。
(頼む、拒むな。俺を拒まないでくれ!)
「ショウさん、宜しくお願い致します」
海音は少し目を潤ませて、勝利に笑顔で答えた。どこまでも貴方について行きますと、何があっても離れませんと想いを込めて。
「海音。ありがとう。俺の子も産んでくれるか?」
「はい、もちろん!」
勝利は目をキラッとらせて制服の袖をめくり時間を確認した。「ん?」と海音は首を傾げる。すると、
「ひとななさんまる(17:30)、間宮海音拿捕っ!」
勝利は海音を抱き抱えた。まるで子供を抱え上げるように高く。
「ちょっとぉぉ! 子供じゃないっちゃけん、下ろしてぇぇ」
(二度と同じ過ちは犯さない。海音、お前だけを死ぬまで愛し続ける。これは絶対だ)
「よし! 帰ったら乾杯だな」
「飲み過ぎ注意」
「酒で潰れるわけないだろ。そのあと俺は海音を可愛がる任務が残っているんだ」
「はぁ!?」
「隅から隅まで捜査する」
「ばかっ」
火が出るほど顔を赤く染め、海音は勝利の腕に顔を押し付ける。本当は怒っていないことは勝利も分かっている。恥ずかしさと嬉しさを誤魔化せないでいるだけと。可愛い未来の嫁に勝利の胸は幸福感でいっぱいだった。
◇ ◇ ◇
その晩、ひとしきり愛し合ったベッドの上で、勝利は海音を抱き寄せてこれまでの事と、これからの事を話した。残りの人生をずっと海音と過ごすために話しておきたかったから。
「七管区に来る前は、関東で特別救難隊というチームに居た。約30名しかいない。その狭き門を突破して全身オレンジのあの制服を着て任務に就いた。その任務に就いた頃はもう結婚していたよ。でも、念願のトッキューになった事で大切な家族の事、ひとり家で待っている妻のことを考える事なく過ごした。特殊警備隊の訓練も受けながら、国民のために戦う男だと自負していた。その結果が離婚だな。結婚て簡単なのに離婚てめちゃくちゃ大変なんだ。ま、その辺は割愛な」
淡々と話す勝利に海音は黙って耳を傾けた。きっと勝利は吐き出したいのだ。俺はこんな男だよそれでもいいのかと、最後の確認でもするつもりなのだろう。
「いつからか夫婦の間に入ってしまったヒビに気づかずに、夫婦だから大丈夫だという不確かな自信で妻を傷つけていた。おまえなら分かるだろう、おまえなら我慢できるだろうって。深くなったヒビはそのまま割れてしまった。夫婦の営みなんてとっくの昔になくっていて、ある日求めたら別の男の匂いがした。責めるように問い詰めたらそのまま荷物を持って出ていった、否、追い出したんだろうな俺が。これでも落ち込んだんだ。そんな時、七管区への異動が浮上して巡視船の船長になるか、機動救難士になるかの二択。同じ轍は踏みたくなくてさ、巡視船を選んだ。過去に警備の訓練もしたし、これからは防人として生きようって。そしたら、海音に出会えたってわけだ」
※機動救難士:各管区に属し特殊救難隊に準じた救難活動が行える能力を持つ者。
そこまで話すと勝利はぎゅぅっと海音の躰を抱きしめた。海音の頭に何度も頬をすりつけて、会えて良かった、もう離さないと心の中で何度も言う。暫く海音はされるがまま考えていた。自分に話すことで少しは楽なっただろうか、勝利の心は満足したのだろうか。同じ轍を踏みたくないと選んだ警備の任務は、救難への想いに心残りなく挑めているのだろうか。陸に上がろうとしていると以前聞いたけれど、海音に元妻が味わったような想いをさせないように妥協しているのではないか。そんな不安が海音の頭に浮かんだ。
「ねえ、ショウさん。もう、オレンジの服は着らんと? 救難のお仕事は嫌いになった?」
「嫌いにはならないさ。俺のこれまでの人生をかけてきたんだ。人の命を救うその仕事に誇りを持っている。でも、もういいんだ。俺は海音との時間が欲しい。これからはゆっくりと歩きたい」
ほら、やっぱり救難の仕事が好きじゃないと海音は思う。
「船も降りるつもり?」
「もういいだろ。今度は陸から若い奴らをサポートしたいんだ。おっさんはさっさと引っ込んで、のんびりと」
「ダメッ!」
海音はガバッと躰を起こして、勝利の顔を上から睨みつけた。予想していなかった海音の反応に勝利は言葉が出ない。心の何処かで喜んでくれると思いこんでいたからだ。
「私、ショウさんのオレンジが見たい! 前の奥さんは見てるのに私だけ見られないなんて不公平! オレンジのショウさんに会いたい!」
「っ……か、かのん」
「ここで見られんなら、引っ越してもいい!」
「おいっ、落ち着け」
おっとりで、のんびり屋の海音の瞳にキラリと輝くもの。そこには絶対に譲らないと言う頑固な信念。
(海の男の女が一番強いんだから!)
「決めました! 私っ、オレンジの服を着たショウさんが見れるまで我慢する」
「おいっ海音。何を我慢するんだよ」
海音はキッと勝利を睨みつけて「勝利さんとのエッチです!」と言い切った。勝利が救難隊に復帰するまで海音は勝利とのセックスを断つと言うのだ。
「海音。酒断ちする! みたいに言ってくれるなよ」
「だって、我慢して一番辛いものじゃないと願掛けは意味がないでしょう? だから、辛いけどそれに決めたの」
「かのん、おーい。かーのーんー」
「だめっ」
そう言うとベッドから下りてスタスタと一人でバスルームに向かい、シャワーを浴びてスッキリ。パジャマをきっちりと着て、再びベッドに入って来た。勝利がどんなに背中から迫っても、どんなに甘く囁いても「だーめっ」と許してくれない。
(マジかよー。なんでこうなったぁ……オレンジ着ろって、俺に救難に戻れって……なんでだよ。もう気持ちに整理はつけたんだよ)
「海音」
「………」
まいったなと、天井を仰いだ。隣で眠る女、愛おしい女、残りの人生はこの女とたくさんの時間を共有したい。だから、少しでも安定した職務に就きたかった。それだけだった。
(海音さえ側にいてくれれたら、それでいいんだ。それ以外は望んじゃいない)
「はぁぁー」
深い長いため息をついて瞼を下ろした。
「航海長の判断はよかったね。あそこで前に出なかったら、アイツらエンジン止めなかったからな」
「たまにはガツンとやらないと舐められるからね」
「そのガツンの力加減が難しいんですよ」
「まあ、今日はこれくらいで。カノンちゃんが来る頃だろ」
「江本さん、なんで。いや、来てるけどここ迄は来ませんよ」
「どうかな。お疲れさーん」
江本航海長の何やら怪しげな含み笑いが気になる。でも、勝利の心は仕事明けの晴れやかなもので、今頃は部屋で待っているだろう海音のもとに走りたくて仕方がなかった。本部を出ると、自然と急ぎ足になる。
(さぁて、今夜の飯は何だろうな)
海音の仕事は基本的にカレンダー通りで週末や祝日が休み、勝利はシフトで動いているため会える日もまちまちだった。巡視船に乗り込むと何日も陸に上がれない事もあった。そんな任務の後は必ず海音に溺れるのも恒例で、なぜなら海音は勝利が陸に上がる日は必ず有給休暇を取っていたからだ。そんな事をされたら海の男の箍なんて簡単に外れてしまう。
領海警備や排他的経済水域を航行するときは、それなりに緊張する。いつ、工作船や国籍不明船、密漁船に出くわすか分からない。その緊張が解かれ母港が見え始めると、下肢が疼きだす。海の男なら誰もが経験する事だろう。勝利が不思議に思うのは、若い頃よりも疼き方がヤバイらしい。きっとそれは子孫を残したがってるのかもしれない。
(もう、陸に上がってもいい頃だろ)
「ショウさーん!お帰りなさい!」
「おう!?」
本部を出て角を曲がるとすぐ、海音が手を上げて走って来た。あれ以来、海音は勝利のことをショウさんと呼ぶようになった。誰かと同じ呼び方はイヤ! 海音の小さな小さな抵抗でもあった。
(本当に来たのかここ迄! くぅー、可愛いすぎだぞっ!!)
「こんな所まで来るなんて、珍しいな」
「たまには来ても良いかなぁって」
海音は細い腕を勝利にからませて煽るように顔を見上げていた。いや、勝利が勝手に煽られているだけ。今すぐにでもむしゃぶりついて、骨の髄まで吸い尽くしたいなどとゴリラ改め海の猿はそう思う。
(この辺はホテルがないんだよなー)
「あ、あのね。お父さんが、ショウさんに会いたいって言うっちゃけど、どうかいな」
「そうだな。いい加減、嫁にくださいって言わないとな」
恥ずかしそうに俯いた海音の顔は真っ赤だった。その赤い顔にますますソソられた勝利は無骨な手で海音の頬を撫でた。
「休みを合わせて行こう。と、その前に」
「その前に?」
勝利は海音の手を取ってその上から自分の手を重ねた。何が始まるんだろうと、不安と期待感を混ぜ合わせたような顔で海音は勝利を見上げた。海音の肩越しに太陽の光が反射してオレンジ色に染まった湾が見える。沈む夕日に照らされて、キラキラとダイヤモンドの輝きの様に波が跳ねている。それを目に焼き付けて、勝利は海音の瞳を覗き込んだ。
「海音、俺の嫁さんになれ」
なってくれではなく、勝利はなれと言った。海音に拒否権は無いんだと、重ねた手をぎゅっと握った。
(頼む、拒むな。俺を拒まないでくれ!)
「ショウさん、宜しくお願い致します」
海音は少し目を潤ませて、勝利に笑顔で答えた。どこまでも貴方について行きますと、何があっても離れませんと想いを込めて。
「海音。ありがとう。俺の子も産んでくれるか?」
「はい、もちろん!」
勝利は目をキラッとらせて制服の袖をめくり時間を確認した。「ん?」と海音は首を傾げる。すると、
「ひとななさんまる(17:30)、間宮海音拿捕っ!」
勝利は海音を抱き抱えた。まるで子供を抱え上げるように高く。
「ちょっとぉぉ! 子供じゃないっちゃけん、下ろしてぇぇ」
(二度と同じ過ちは犯さない。海音、お前だけを死ぬまで愛し続ける。これは絶対だ)
「よし! 帰ったら乾杯だな」
「飲み過ぎ注意」
「酒で潰れるわけないだろ。そのあと俺は海音を可愛がる任務が残っているんだ」
「はぁ!?」
「隅から隅まで捜査する」
「ばかっ」
火が出るほど顔を赤く染め、海音は勝利の腕に顔を押し付ける。本当は怒っていないことは勝利も分かっている。恥ずかしさと嬉しさを誤魔化せないでいるだけと。可愛い未来の嫁に勝利の胸は幸福感でいっぱいだった。
◇ ◇ ◇
その晩、ひとしきり愛し合ったベッドの上で、勝利は海音を抱き寄せてこれまでの事と、これからの事を話した。残りの人生をずっと海音と過ごすために話しておきたかったから。
「七管区に来る前は、関東で特別救難隊というチームに居た。約30名しかいない。その狭き門を突破して全身オレンジのあの制服を着て任務に就いた。その任務に就いた頃はもう結婚していたよ。でも、念願のトッキューになった事で大切な家族の事、ひとり家で待っている妻のことを考える事なく過ごした。特殊警備隊の訓練も受けながら、国民のために戦う男だと自負していた。その結果が離婚だな。結婚て簡単なのに離婚てめちゃくちゃ大変なんだ。ま、その辺は割愛な」
淡々と話す勝利に海音は黙って耳を傾けた。きっと勝利は吐き出したいのだ。俺はこんな男だよそれでもいいのかと、最後の確認でもするつもりなのだろう。
「いつからか夫婦の間に入ってしまったヒビに気づかずに、夫婦だから大丈夫だという不確かな自信で妻を傷つけていた。おまえなら分かるだろう、おまえなら我慢できるだろうって。深くなったヒビはそのまま割れてしまった。夫婦の営みなんてとっくの昔になくっていて、ある日求めたら別の男の匂いがした。責めるように問い詰めたらそのまま荷物を持って出ていった、否、追い出したんだろうな俺が。これでも落ち込んだんだ。そんな時、七管区への異動が浮上して巡視船の船長になるか、機動救難士になるかの二択。同じ轍は踏みたくなくてさ、巡視船を選んだ。過去に警備の訓練もしたし、これからは防人として生きようって。そしたら、海音に出会えたってわけだ」
※機動救難士:各管区に属し特殊救難隊に準じた救難活動が行える能力を持つ者。
そこまで話すと勝利はぎゅぅっと海音の躰を抱きしめた。海音の頭に何度も頬をすりつけて、会えて良かった、もう離さないと心の中で何度も言う。暫く海音はされるがまま考えていた。自分に話すことで少しは楽なっただろうか、勝利の心は満足したのだろうか。同じ轍を踏みたくないと選んだ警備の任務は、救難への想いに心残りなく挑めているのだろうか。陸に上がろうとしていると以前聞いたけれど、海音に元妻が味わったような想いをさせないように妥協しているのではないか。そんな不安が海音の頭に浮かんだ。
「ねえ、ショウさん。もう、オレンジの服は着らんと? 救難のお仕事は嫌いになった?」
「嫌いにはならないさ。俺のこれまでの人生をかけてきたんだ。人の命を救うその仕事に誇りを持っている。でも、もういいんだ。俺は海音との時間が欲しい。これからはゆっくりと歩きたい」
ほら、やっぱり救難の仕事が好きじゃないと海音は思う。
「船も降りるつもり?」
「もういいだろ。今度は陸から若い奴らをサポートしたいんだ。おっさんはさっさと引っ込んで、のんびりと」
「ダメッ!」
海音はガバッと躰を起こして、勝利の顔を上から睨みつけた。予想していなかった海音の反応に勝利は言葉が出ない。心の何処かで喜んでくれると思いこんでいたからだ。
「私、ショウさんのオレンジが見たい! 前の奥さんは見てるのに私だけ見られないなんて不公平! オレンジのショウさんに会いたい!」
「っ……か、かのん」
「ここで見られんなら、引っ越してもいい!」
「おいっ、落ち着け」
おっとりで、のんびり屋の海音の瞳にキラリと輝くもの。そこには絶対に譲らないと言う頑固な信念。
(海の男の女が一番強いんだから!)
「決めました! 私っ、オレンジの服を着たショウさんが見れるまで我慢する」
「おいっ海音。何を我慢するんだよ」
海音はキッと勝利を睨みつけて「勝利さんとのエッチです!」と言い切った。勝利が救難隊に復帰するまで海音は勝利とのセックスを断つと言うのだ。
「海音。酒断ちする! みたいに言ってくれるなよ」
「だって、我慢して一番辛いものじゃないと願掛けは意味がないでしょう? だから、辛いけどそれに決めたの」
「かのん、おーい。かーのーんー」
「だめっ」
そう言うとベッドから下りてスタスタと一人でバスルームに向かい、シャワーを浴びてスッキリ。パジャマをきっちりと着て、再びベッドに入って来た。勝利がどんなに背中から迫っても、どんなに甘く囁いても「だーめっ」と許してくれない。
(マジかよー。なんでこうなったぁ……オレンジ着ろって、俺に救難に戻れって……なんでだよ。もう気持ちに整理はつけたんだよ)
「海音」
「………」
まいったなと、天井を仰いだ。隣で眠る女、愛おしい女、残りの人生はこの女とたくさんの時間を共有したい。だから、少しでも安定した職務に就きたかった。それだけだった。
(海音さえ側にいてくれれたら、それでいいんだ。それ以外は望んじゃいない)
「はぁぁー」
深い長いため息をついて瞼を下ろした。
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