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19 かみしま警備隊、出動
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作戦会議室を飛び出した伊佐は、食堂の入り口に駆け込んだ。予備の電灯が照らす室内は決して明るいとは言えない。伊佐の足元にはカップや皿が転がり、何かと争ったのだと一目でわかった。
プラスチック製品が多かったのが幸いした。ガラスの破片などは散らばっていない。
「伊佐さん、勝手に飛び出さないでくださいよ」
歌川が肩を上下させながら伊佐を咎めた。歌川の後ろには特警隊の隊員が立っている。ヘルメット、防弾ベスト、透明シールド、拳銃を構え、腰に警棒、そして肘当て、膝当てと前身フル装備である。
すこし遅れて機関長の佐々木がやってきた。
かみしま特警隊の平良は厳しい表情で伊佐の前にでた。
「丸腰で先頭に立つ気ですか。特警隊の指示に従っていただきたい。これは、船長命令です」
「――分かりました」
伊佐はしぶしぶ後退した。そんな伊佐に歌川がポンと肩を叩く。
「丸腰でなければよろしいのでしょう?」
「おまえその格好!」
歌川は眼鏡を指で顔に押し付けたあと、特別警備隊が装備しているヘルメットと防弾ベスト、特殊警棒をどさりと伊佐の足元に置いた。歌川はすでにそれらを装着している。
「早くつけてください」
「俺たちは何でも屋か」
「その何でも屋を、あなたが勝手にやっちゃうから僕の仕事が増えるんですよ。とんだエリートの下についたもんです。あの約束さえなければ僕は今ごろ人気イラストレーターですよ」
「なんだよあの約束って」
伊佐は素早く装備した。見た目は完全にかみしま特警隊の一員だ。違うのはシールドと拳銃を携帯していないことくらいである。二人はヘルメットのストラップをギュッと締めた。
二人のやりとりを見ていた機関長の佐々木が、伊佐の肩に手をのせながら言う。
「伊佐くん! あいつは簡単じゃないぞ、たとえそれがヤツの体の一部だとしてもな」
「佐々木さん、肝に銘じておきます。歌川、行くぞ」
「はいはい」
どんな敵でも逃げるわけにはいかない。
(おい、ワダツミ近くにいるんだろ。せめてこの船が沈まないように守ってくれよ)
「キャーッ‼︎」
「下がってください。どこですか!」
「あそこ! ちがう、上っ!」
食堂内は修羅場だった。女性職員たちの悲鳴と、何かがぶつかる音、壊れる音が立て続けにした。
特警隊隊長の平良は叫んだ。
「主計科の皆さんは全員ここからでてください。比嘉、誘導できるか」
「はい!」
特別警備隊は十五名を二個小隊に分けている。そのうちの一個小隊が平良と比嘉、他合わせて七名がひとチームだ。B班は命令が出るまで待機している。全滅は許されないからだ。
先頭をいく平良の後ろを一列に隊員が続き、それぞれが拳銃を手に持ち四方を警戒しながら移動する。
隊長が出す合図で彼らは一斉に動き出した。
「よし、前へ」
「前へ!」
中に進むと数名の主計科職員がいた。特警隊は素早く円を作るとその中に職員を囲い込む。彼らを守りながら出口へと後退した。
その時、調理室から黒い影が飛び出してきた。その影の速さは、かみしま特警隊に緊張を走らせた。
「まさか、侵入者か!」
「まだ撃つなよ! まだだ、このまま下がれ」
「隊長! あれは、あれは何ですか!」
一人の隊員が指をさして叫んだ。
飛び出した黒い影が食堂の天井に張り付いたのだ。それを見た平良は眉間にしわを寄せた。それはゴキブリでも、ネズミでもないのだ。
それに足はない。
ただ、人間の手の指らしきものが天井を掴むように広がっていた。
「おまえたち! 下がれ! 下がれ! 出口を確保しろ。まず彼女たちをこの部屋から出せ。そのあと、食堂のドアを閉める」
円の内側に囲われた数名の主計科職員が外に出た。それを確認して、平良はドアクローズのサインを出す。
伊佐と歌川は素早くドアの内側に入った。ドアが閉まる瞬間、主計科の一人が叫ぶ。
「待って! 歌川さん、レナさんが中にいます!」
主任の虹富まどかだ。
「え、我如古主計長が中に? というか、なぜ僕だと分かったのですか!」
「そんなのすぐに分かります。いつだって歌川さんのこと見てるんですから! お願いします! レナさんを助けてください」
こんな大変な時にさらっと、いつもあなたを見ていると言われた歌川は一瞬うろたえる。
「おい! 早くドアをしめろ!」
後ろでは隊長の平良が殺気だっていた。伊佐は歌川の肩を引いて食堂に引き込み、ドアを閉める直前に虹富に答えた。
「必ず主計長を助けます」
ドアの向こうから「お願いします!」と虹富が叫んでいた。伊佐と歌川はそれを背中で聞きながら、腰から警棒を引き抜いた。
◇
誰が自分たちの巡視船の中で特警隊を出動させると想像したであろうか。よく知った船内で、かみしま特警隊は拳銃を構えた。隊長の平良はインカムを使って船橋で待つ船長に連絡を取った。
「食堂内に、何者かが潜んでいるようです。人間なのか動物的なものかは不明。主計長が取り残されており救出を試みます。万が一に備え、発砲許可を要求します」
しばらくして、船長の松平から返答があった。全員がその声をイヤホン越しに聞く。
『平良隊長の判断に委ね、万が一の際は発砲を許可する』
巡視船かみしま内で、発泡が許可されたのだ。同時に隊員たちに更なる重圧がのしかかる。体の前に構えた拳銃をいま一度確認し、握り直す。
―― これは、訓練ではない!
「この船に侵入したことを後悔させてやれ! かみしま特警隊、前へ!」
「前へ‼︎」
伊佐と歌川は警棒を強く握りしめた。
特殊警棒は普段は手のひらに隠れるほど小さく折り畳まれている。それを強く引き抜くと、長さ60センチ近くまで伸びる。
「警棒術か……久しぶりだなぁ」
歌川が小声で呟いた。
海上保安官は制圧術や警棒術も訓練をしている。競技大会もあるほど活発に行われている。
「忘れていなきゃいいな」
「伊佐さんも僕も管理職が長くなりつつありますからね。ここは、体が覚えてくれていることを願いましょう」
「無茶するなよ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
伊佐と歌川は特警隊のあとに続いた。この部屋のどこかにいるはずの我如古レナを探すために。
「それより伊佐さん。なんなんですかあの天井のやつ……腕じゃないですか。最新のドローンかなんかですか」
「あれはさ……」
伊佐が言いかけたとき、銃声が鳴り響いた。特警隊の一人が、その天井に向かって発砲したのだ。
それが始まりだった。黒い腕は弾丸を避けるようにして床に落ちてきた。いや、飛び降りたようにも見えた。
かみしま特警隊は平良の合図で距離をたもったまま、拳銃をその黒い腕に向ける。
「おい、これ人間の腕じゃないよな……義手なのか? なぜ動くんだ」
動かなくなったその黒い腕に平良が近づいて確認しようとした。伊佐はあわてて止める。
「平良さん! 油断してはいけない。それはロボットだ! 意志を持っている」
言い終わったとき、動きを止めていた黒い腕が跳ねた。その腕は拳をにぎり平良に襲いかかる。
「隊長!」
「比嘉、撃て! こいつ、腕だけじゃない! 見えないが、体が、体があるっ……うっ」
「体? そんなものは見えません!」
平良はまるで、誰かと組み合っているような動きをした。腕を抑えているのに、膝を折られ床に手をついたり、足を掛けて倒そうとしたり、胸元を掴むようなそぶりを見せる。
「こいつ、人間じゃない! 撃て! ここだ、ここに向かって、ぐ――」
「隊長!」
撃てと言われても、そこには腕しかなく。万が一、平良に当たってはと誰も撃つことができない。
伊佐は平良の動きをじっと見た。平良が掴んで離さない腕の先に、うっすらと形が浮き上がっている。それはぼやけているが、形は確かに人のものだ。
「歌川、俺見えたかもしれない」
「えっ。ちょっと! 伊佐さん」
伊佐は銃を構えるかみしま特警隊の前に飛び出した。そして、平良の正面に立ち警棒を使って何かを羽交い締めにした。
「伊佐さん、あんた」
「俺がこいつを押さえている間に撃ってください! 早く! こいつ、めちゃくちゃ強いですよ!」
見えていないだけで、それには体があったのだ。伊佐と変わらないほどの背丈、なによりも筋肉のつき方が異常だった。鎧でも着ているのかと疑うほどに全体が硬い。
どこかの国の陸軍軍人のようだ。
「ばかな、仲間に銃口は向けられない!」
「防弾ベストを着てるから死にはしない! 早くやらないとまずい」
「なんなんだよ! そいつは!」
平良も感触から分かっていた。それは人間ではない、と。
「人造人間だ!」
「佐々木さん!」
「そいつは透明人間にもなれるのか……我々は、なんて奴を敵に回したんだ。三年前のあれはなんだったんだ……くそ、くそ!」
主計科と外に出たと思っていた佐々木が、立っていた。佐々木は握りしめた拳を自分の太腿に何度も叩きつけた。
『マイ、マスター……マイ、マスター』
「誰だ! どこだ!」
かみしま特警隊の隊員たちは混乱した。伊佐が見えない何かを押さえて自分を撃てと言っている。
その何かが突然喋った。
「頼む、もたない。早く、撃って!」
『マイ、マスター……マ、ス、ター』
恐ろしいほどの力が伊佐の目の前に集まるのが分かった。もうこれ以上、押さえ込むのは難しい。
「くそ……!」
集まった力が弾けた。それと同時に、伊佐はテーブルに積み上げた椅子をなぎ倒しながら食堂の端まで吹っ飛んだ。
「伊佐さん!」
歌川の声が室内を駆け抜けた。
プラスチック製品が多かったのが幸いした。ガラスの破片などは散らばっていない。
「伊佐さん、勝手に飛び出さないでくださいよ」
歌川が肩を上下させながら伊佐を咎めた。歌川の後ろには特警隊の隊員が立っている。ヘルメット、防弾ベスト、透明シールド、拳銃を構え、腰に警棒、そして肘当て、膝当てと前身フル装備である。
すこし遅れて機関長の佐々木がやってきた。
かみしま特警隊の平良は厳しい表情で伊佐の前にでた。
「丸腰で先頭に立つ気ですか。特警隊の指示に従っていただきたい。これは、船長命令です」
「――分かりました」
伊佐はしぶしぶ後退した。そんな伊佐に歌川がポンと肩を叩く。
「丸腰でなければよろしいのでしょう?」
「おまえその格好!」
歌川は眼鏡を指で顔に押し付けたあと、特別警備隊が装備しているヘルメットと防弾ベスト、特殊警棒をどさりと伊佐の足元に置いた。歌川はすでにそれらを装着している。
「早くつけてください」
「俺たちは何でも屋か」
「その何でも屋を、あなたが勝手にやっちゃうから僕の仕事が増えるんですよ。とんだエリートの下についたもんです。あの約束さえなければ僕は今ごろ人気イラストレーターですよ」
「なんだよあの約束って」
伊佐は素早く装備した。見た目は完全にかみしま特警隊の一員だ。違うのはシールドと拳銃を携帯していないことくらいである。二人はヘルメットのストラップをギュッと締めた。
二人のやりとりを見ていた機関長の佐々木が、伊佐の肩に手をのせながら言う。
「伊佐くん! あいつは簡単じゃないぞ、たとえそれがヤツの体の一部だとしてもな」
「佐々木さん、肝に銘じておきます。歌川、行くぞ」
「はいはい」
どんな敵でも逃げるわけにはいかない。
(おい、ワダツミ近くにいるんだろ。せめてこの船が沈まないように守ってくれよ)
「キャーッ‼︎」
「下がってください。どこですか!」
「あそこ! ちがう、上っ!」
食堂内は修羅場だった。女性職員たちの悲鳴と、何かがぶつかる音、壊れる音が立て続けにした。
特警隊隊長の平良は叫んだ。
「主計科の皆さんは全員ここからでてください。比嘉、誘導できるか」
「はい!」
特別警備隊は十五名を二個小隊に分けている。そのうちの一個小隊が平良と比嘉、他合わせて七名がひとチームだ。B班は命令が出るまで待機している。全滅は許されないからだ。
先頭をいく平良の後ろを一列に隊員が続き、それぞれが拳銃を手に持ち四方を警戒しながら移動する。
隊長が出す合図で彼らは一斉に動き出した。
「よし、前へ」
「前へ!」
中に進むと数名の主計科職員がいた。特警隊は素早く円を作るとその中に職員を囲い込む。彼らを守りながら出口へと後退した。
その時、調理室から黒い影が飛び出してきた。その影の速さは、かみしま特警隊に緊張を走らせた。
「まさか、侵入者か!」
「まだ撃つなよ! まだだ、このまま下がれ」
「隊長! あれは、あれは何ですか!」
一人の隊員が指をさして叫んだ。
飛び出した黒い影が食堂の天井に張り付いたのだ。それを見た平良は眉間にしわを寄せた。それはゴキブリでも、ネズミでもないのだ。
それに足はない。
ただ、人間の手の指らしきものが天井を掴むように広がっていた。
「おまえたち! 下がれ! 下がれ! 出口を確保しろ。まず彼女たちをこの部屋から出せ。そのあと、食堂のドアを閉める」
円の内側に囲われた数名の主計科職員が外に出た。それを確認して、平良はドアクローズのサインを出す。
伊佐と歌川は素早くドアの内側に入った。ドアが閉まる瞬間、主計科の一人が叫ぶ。
「待って! 歌川さん、レナさんが中にいます!」
主任の虹富まどかだ。
「え、我如古主計長が中に? というか、なぜ僕だと分かったのですか!」
「そんなのすぐに分かります。いつだって歌川さんのこと見てるんですから! お願いします! レナさんを助けてください」
こんな大変な時にさらっと、いつもあなたを見ていると言われた歌川は一瞬うろたえる。
「おい! 早くドアをしめろ!」
後ろでは隊長の平良が殺気だっていた。伊佐は歌川の肩を引いて食堂に引き込み、ドアを閉める直前に虹富に答えた。
「必ず主計長を助けます」
ドアの向こうから「お願いします!」と虹富が叫んでいた。伊佐と歌川はそれを背中で聞きながら、腰から警棒を引き抜いた。
◇
誰が自分たちの巡視船の中で特警隊を出動させると想像したであろうか。よく知った船内で、かみしま特警隊は拳銃を構えた。隊長の平良はインカムを使って船橋で待つ船長に連絡を取った。
「食堂内に、何者かが潜んでいるようです。人間なのか動物的なものかは不明。主計長が取り残されており救出を試みます。万が一に備え、発砲許可を要求します」
しばらくして、船長の松平から返答があった。全員がその声をイヤホン越しに聞く。
『平良隊長の判断に委ね、万が一の際は発砲を許可する』
巡視船かみしま内で、発泡が許可されたのだ。同時に隊員たちに更なる重圧がのしかかる。体の前に構えた拳銃をいま一度確認し、握り直す。
―― これは、訓練ではない!
「この船に侵入したことを後悔させてやれ! かみしま特警隊、前へ!」
「前へ‼︎」
伊佐と歌川は警棒を強く握りしめた。
特殊警棒は普段は手のひらに隠れるほど小さく折り畳まれている。それを強く引き抜くと、長さ60センチ近くまで伸びる。
「警棒術か……久しぶりだなぁ」
歌川が小声で呟いた。
海上保安官は制圧術や警棒術も訓練をしている。競技大会もあるほど活発に行われている。
「忘れていなきゃいいな」
「伊佐さんも僕も管理職が長くなりつつありますからね。ここは、体が覚えてくれていることを願いましょう」
「無茶するなよ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
伊佐と歌川は特警隊のあとに続いた。この部屋のどこかにいるはずの我如古レナを探すために。
「それより伊佐さん。なんなんですかあの天井のやつ……腕じゃないですか。最新のドローンかなんかですか」
「あれはさ……」
伊佐が言いかけたとき、銃声が鳴り響いた。特警隊の一人が、その天井に向かって発砲したのだ。
それが始まりだった。黒い腕は弾丸を避けるようにして床に落ちてきた。いや、飛び降りたようにも見えた。
かみしま特警隊は平良の合図で距離をたもったまま、拳銃をその黒い腕に向ける。
「おい、これ人間の腕じゃないよな……義手なのか? なぜ動くんだ」
動かなくなったその黒い腕に平良が近づいて確認しようとした。伊佐はあわてて止める。
「平良さん! 油断してはいけない。それはロボットだ! 意志を持っている」
言い終わったとき、動きを止めていた黒い腕が跳ねた。その腕は拳をにぎり平良に襲いかかる。
「隊長!」
「比嘉、撃て! こいつ、腕だけじゃない! 見えないが、体が、体があるっ……うっ」
「体? そんなものは見えません!」
平良はまるで、誰かと組み合っているような動きをした。腕を抑えているのに、膝を折られ床に手をついたり、足を掛けて倒そうとしたり、胸元を掴むようなそぶりを見せる。
「こいつ、人間じゃない! 撃て! ここだ、ここに向かって、ぐ――」
「隊長!」
撃てと言われても、そこには腕しかなく。万が一、平良に当たってはと誰も撃つことができない。
伊佐は平良の動きをじっと見た。平良が掴んで離さない腕の先に、うっすらと形が浮き上がっている。それはぼやけているが、形は確かに人のものだ。
「歌川、俺見えたかもしれない」
「えっ。ちょっと! 伊佐さん」
伊佐は銃を構えるかみしま特警隊の前に飛び出した。そして、平良の正面に立ち警棒を使って何かを羽交い締めにした。
「伊佐さん、あんた」
「俺がこいつを押さえている間に撃ってください! 早く! こいつ、めちゃくちゃ強いですよ!」
見えていないだけで、それには体があったのだ。伊佐と変わらないほどの背丈、なによりも筋肉のつき方が異常だった。鎧でも着ているのかと疑うほどに全体が硬い。
どこかの国の陸軍軍人のようだ。
「ばかな、仲間に銃口は向けられない!」
「防弾ベストを着てるから死にはしない! 早くやらないとまずい」
「なんなんだよ! そいつは!」
平良も感触から分かっていた。それは人間ではない、と。
「人造人間だ!」
「佐々木さん!」
「そいつは透明人間にもなれるのか……我々は、なんて奴を敵に回したんだ。三年前のあれはなんだったんだ……くそ、くそ!」
主計科と外に出たと思っていた佐々木が、立っていた。佐々木は握りしめた拳を自分の太腿に何度も叩きつけた。
『マイ、マスター……マイ、マスター』
「誰だ! どこだ!」
かみしま特警隊の隊員たちは混乱した。伊佐が見えない何かを押さえて自分を撃てと言っている。
その何かが突然喋った。
「頼む、もたない。早く、撃って!」
『マイ、マスター……マ、ス、ター』
恐ろしいほどの力が伊佐の目の前に集まるのが分かった。もうこれ以上、押さえ込むのは難しい。
「くそ……!」
集まった力が弾けた。それと同時に、伊佐はテーブルに積み上げた椅子をなぎ倒しながら食堂の端まで吹っ飛んだ。
「伊佐さん!」
歌川の声が室内を駆け抜けた。
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