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五章 キューピットは期待する
Mission②彼の車(カラダ)を乗りこなせ
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それなりに、ロジスティクスの仕事に慣れ始めた週末のこと、私は航さんと前に来た国定公園の湖が見える公園に来ていた。
目的は、ひとつ!
「先ずはこの駐車場から出て、湖を一周するのが目標な」
「はい。よろしくお願いしますっ」
実は安藤主任にしごかれる前に、航さんから車の運転を教えてもらうとしているところだ。
「分かってると思うけど、シートをきちんと合わせて、それからミラーの位置も見て」
「はい。うわっ、シートこんなに後ろにさがるの? 航さんって、どんだけ脚が長いの? ブレーキにつま先つかないよ」
「あははっ。羽七と比べると大人と子供だな」
しかも、スポーツタイプのせいか車高が低い。何だか私、埋もれてない? 前方の見え方に若干の不安を感じる。
「羽七っ、くくくっ。シ、シート上げられるからっ。うははは」
「そうなの。あ、本当だ……え、まだ笑ってるし」
航さんは手で口を覆って肩をゆらしながら、笑っている。そんな航さんは放っておいて、シートの高さを合わせた。ボタン一つで自動で動くんだよ?
私はあらためエンジンをかけることにした。ブレーキを踏み込んで、エンジンスタート!
ブオーン……ドドドド
エンジンの音までも男らしく思えてしまう。
私はドキドキしながらシフトレバーをドライブに入れた。サイドブレーキを解除してブレーキをゆっくり離してアクセルを踏む。
ウーン……ブォン! ブォン!
ちょっとしか踏んでないつもりなのに、ビュンって! 思わずブレーキを強く踏む。
「すみません。加減が分からなくて、飛び出しそうになっちゃいました」
「大丈夫だ。まだ一回目だろ? 手順覚えてるだけ凄いぞ?」
「ありがとう。航さん、優しすぎ」
「こいつクセがあるんだ。感覚で覚えるしかないんだけど、そうだな最初は目で確認するか」
「目で?」
いったんレバーをパーキングに入れた。そして、航さんが指をさしながら説明してくれた。運転手が確認するメーターパネルは、右がスピードメーターで左に回転数や油圧を示すメーターがある。左側のメーターはアクセルを踏み込むと回転数が上がる。速度に合わせてシフトチェンジをすると回転数が徐々に落ちて正常をキープする。
繋がった瞬間に回転数がヒュンと落ちるそうだ。
「いいか、よく見て。ちょっとだけ踏んでみて。ほら、ここ。回転数が落ちてエンジン音が変わったたろ?」
「シフトチェンジできたってこと?」
「そうだ。完全なマニュアル車じゃないから、その辺は自動だけど体で感じることは大事だ。敏感になっていれば、車の異変にも気づくことができるようになる」
「なるほど! これが車の気持ちになってことね」
一旦動き出すとあとはスムーズだ。アクセルやブレーキの踏み方で、車の動きが変わる。問題はカーブでブレーキを踏んだあと、いかにスムーズにもとのスピードに戻すかだ。慎重なのはいいけれど、後ろの車を停止させるほどの低速では逆に危険。
交通の流れに乗ることも大事なのだ。
感度がいいのかハンドルもよく切れるお陰で、なんだか不審な動きになってしまう。
「あぁ、もうっ。うまくいかない」
「焦るなって。この車はクセがあるから、慣れた俺でも初めてこいつに乗った時は、ぎこちない動きしかできなかったし」
「そうなんだ」
航さんは褒めて伸ばすタイプなんだと思った。気長に褒めながら丁寧に教えてくれる。そう言えば中学生に柔道の稽古付けていた時も、怒ったりしてなかった。厳しく指摘はするものの、なぜそうなったのかを説明していた。でも必ず最後は褒める。
「よし! 走行は問題ないな。つぎは、駐車だ」
「駐車って、難しいよね……」
「あははっ。羽七も弱気になるんだな」
「そりゃあもう、しょっちゅうですよ」
白線が引かれた駐車場スペースに、何度も何度もハンドルを切り返して停車。それでも真っ直ぐにならないんだから腹が立つ。
ちなみバッグモニターを消されている。
(そこは航さんも、スパルタなんだね……)
「タイヤがどっちを向いてるか常に頭に置いてないとだめだぞ。ほら、ハンドル切り過ぎ。サイドミラーを見ながら、もう少し……こんな感じで」
とうとう航さんがハンドルに手を添えて駐車を補助してしまった。
途中へこみそうになったけど、航さんはここという所で気持ちを浮上させてくれるので、きっと良い教官になると思う!
「できたぁ~。そして、疲れたぁ」
「よく頑張ったな。驚いたよ」
「いえいえ、原田教官のお陰です」
私がそう言うと航さんは目尻を下げて微笑んだ。そして、その顔が近づいてきたと思ったら、キスされた。「教官って響きがエロいな」なんて言いながら。
「ちょっと、どうして教官がエロくなるのよ」
「よーし! 飯食いに行くか。この辺の街なら大丈夫だろ。このあいだ行ったファミレスまで羽七が運転してくれよ」
「さっそく⁉︎ が、ガンバります」
大事な車を運転させてもらうなんて、ハラハラドキドキだ。何とかファミレスの駐車場に車を止めると、手にはたくさん汗をかいていた。はじめての路上運転を思い出す。
「着いたよー」
「お疲れ。よし! じゃあ俺が運転するから代わって」
「へ? あ、はい」
てっきりこのファミレスで食べるのかと思っていたけれど、違ったらしい。航さんに運転を代わっていつもの定位置に収まった。お互いにシートを自分用に合わせ直して再出発。やっぱりこの位置が落ち着く。
「たまにはイタリアンでも食う?」
「うん!」
お店はロッジ風の建物で落ち着いた雰囲気だ。
「航さん、よく知ってたね」
「実はネットで調べたんだ」
恥ずかしそうに航さんが言う。きっと、今まではネットで調べたなんてネタばらししなかったんだろうな。正直に言うのは、私のことを信頼してくれているってことだと自惚れてみる。
彼が彼らしく楽に生きることは、私にも良い影響を与えていると思う。
「美味しいね! また素敵なお店がひとつ増えました」
「よし、これからは洋食も攻めるぞ」
「うんうん。でも、やっぱり小春には勝てない気がする。やっぱり小春が一番だって言いそう」
「まあ……言うだろな」
あははと笑い合う。誰の目も気にしない、自分が自分らしくいられる事の幸福感を私たちは覚えた。
◇
ランチの後、少しドライブをして夕方には家に帰り着いた。でも、夕飯まではまだ少し早い。
私はコーヒーを淹れてカップをテーブルに置いた。航さんがソファーで雑誌を見ているので、私はその隣に座る。
(何の雑誌を見てるんだろう)
「コーヒー、置いてるから」
「サンキュ」
「ねえ、何の雑誌?」
「これ? ファッション誌みたいなやつかな。羽七は読んだりしないのか? 女性誌とか」
「女性誌はね、たまに見るくらい」
そういえば、私のミッションは止まったままだ。だって、ぜんぜん航さんに歯が立たないんだもの。
下手に私から仕掛けると倍になって返って来るし、かといって大人しくしていてもいいようにされるだけだし。それにしても航さんにあんな技を仕込んだ手慣れた女って、一体何者なのよ。
「俺さ、体がデカイから店が限られるんだよなって、羽七?」
気がつけば私は、航さんに後ろから抱きついていた。後ろからなら少しは歯が立つかもしれない。私は思いっきり航さんの太い首に唇を押し付けた。
「おいっ。は、羽七。どうしたんだよ」
「今日は大切な愛車を運転させてくれてありがとう」
「お、おう」
「お礼です」
「はあ?」
「動かないでお願いっ。気にせずにその雑誌、読んでて」
「え、あ、おいっ」
今度は首に噛み付いた。痛くはないはず。だって、これは甘噛みだもん。航さんが私の身体に覚えさせたヤツだよ。
航さんは私の様子を伺っているのか、抵抗する素振りは見せない。そのうち反撃されるのは分かっているけど、一矢報いたいじゃない!
航さんのティシャツを後ろから一気に捲り上げ、ガチガチの腹筋に手を這わした。相変わらず硬くて逞しい。この体に柔道の白い道着は眼福だった。
「航さん? さっきから同じページだよ。ちゃんと、読まなきゃ」
航さんの右耳に優しく囁いて、耳朶を噛んだ。私がする技にオリジナリティーなんてないよ。全部、航さんから与えられて覚えたものだもの。
「は、羽七っ。なあ、最後までスるつもりか?」
少し息を乱しながらそう尋ねてくる彼の、少し震えた声に興奮した。ダメ、しっかりしないと、また返り討ちにあうと気持ちを整える。いったい何と戦っているのだろう。でも、負けたくないの。
「もちろんです」
「だったら、正面から来いよ」
航さんはわざとそうやって挑発する。彼は私の性格を分かっていて敢えて煽ったりする。私も自分のことはよく分かっている。そういう煽りは嫌いじゃない。
「望むところよ」
私は航さんの膝を跨いで座った。
「お触りはダメだから」
「なんでだ」
「わたしに、ハンディをください!」
反論させないように睨みつけて言うと、航さんは口を閉じたまま笑った。航さんの目は明らかに「上等じゃないか」と言っている。
「こうしたらいいんだろ?」
航さんは両手をだらりと下ろしてみせる。すかさず私は航さんのシャツを剥ぎ取る。すると、厚い胸板があらわになった。何度見ても彼の筋肉は飽きない。じっと見ていると、だんだん自分の身体も熱くなってきた。
その逞しい胸に手を添えて、顔を近づけてキスをした。そのあと舌をだして舐めてみる。首筋から肩、鎖骨、そして最後はつんと主張し始めた乳首を躊躇いなく唇で食んだ。
その瞬間はさすがの航さんもわずかだけど反応した。でも、声は出さない。
(気持ちいいところは男も女と同じって、書いてあったし!)
私は航さんの肩に置いていた手を、お腹を飛び越えて男の大事な部分に伸ばした。
「くっ、羽七……」
航さんの口から初めて甘い声が漏れた。私はそれが嬉しくて航さんのものを手で刺激した。すると、だんだんとソレは硬さを増していく。
(感じてくれてる! 私の、私の手で航さんのものがっ)
「羽七、本気なんだな」
「悪ふざけで、こんな事しない。本気です」
「じゃあ、ハンディは不要だろ?」
「え?」
「スポーツマンシップにのっとって、正々堂々と戦うぜ」
「え、わ、ヤダっ。やぁぁ」
ほら、まただよ!
悔しい!
彼の弱い所を攻める前に、私はまたも返り討ちされてしまう。しかも、彼が言う得意の寝技だ。
(寝技しか、かけられてないじゃん!)
今日の私は航さんから有効くらいは取れただろうか。
いつか、その身体からっ……一本取ってやるんだからね!
目的は、ひとつ!
「先ずはこの駐車場から出て、湖を一周するのが目標な」
「はい。よろしくお願いしますっ」
実は安藤主任にしごかれる前に、航さんから車の運転を教えてもらうとしているところだ。
「分かってると思うけど、シートをきちんと合わせて、それからミラーの位置も見て」
「はい。うわっ、シートこんなに後ろにさがるの? 航さんって、どんだけ脚が長いの? ブレーキにつま先つかないよ」
「あははっ。羽七と比べると大人と子供だな」
しかも、スポーツタイプのせいか車高が低い。何だか私、埋もれてない? 前方の見え方に若干の不安を感じる。
「羽七っ、くくくっ。シ、シート上げられるからっ。うははは」
「そうなの。あ、本当だ……え、まだ笑ってるし」
航さんは手で口を覆って肩をゆらしながら、笑っている。そんな航さんは放っておいて、シートの高さを合わせた。ボタン一つで自動で動くんだよ?
私はあらためエンジンをかけることにした。ブレーキを踏み込んで、エンジンスタート!
ブオーン……ドドドド
エンジンの音までも男らしく思えてしまう。
私はドキドキしながらシフトレバーをドライブに入れた。サイドブレーキを解除してブレーキをゆっくり離してアクセルを踏む。
ウーン……ブォン! ブォン!
ちょっとしか踏んでないつもりなのに、ビュンって! 思わずブレーキを強く踏む。
「すみません。加減が分からなくて、飛び出しそうになっちゃいました」
「大丈夫だ。まだ一回目だろ? 手順覚えてるだけ凄いぞ?」
「ありがとう。航さん、優しすぎ」
「こいつクセがあるんだ。感覚で覚えるしかないんだけど、そうだな最初は目で確認するか」
「目で?」
いったんレバーをパーキングに入れた。そして、航さんが指をさしながら説明してくれた。運転手が確認するメーターパネルは、右がスピードメーターで左に回転数や油圧を示すメーターがある。左側のメーターはアクセルを踏み込むと回転数が上がる。速度に合わせてシフトチェンジをすると回転数が徐々に落ちて正常をキープする。
繋がった瞬間に回転数がヒュンと落ちるそうだ。
「いいか、よく見て。ちょっとだけ踏んでみて。ほら、ここ。回転数が落ちてエンジン音が変わったたろ?」
「シフトチェンジできたってこと?」
「そうだ。完全なマニュアル車じゃないから、その辺は自動だけど体で感じることは大事だ。敏感になっていれば、車の異変にも気づくことができるようになる」
「なるほど! これが車の気持ちになってことね」
一旦動き出すとあとはスムーズだ。アクセルやブレーキの踏み方で、車の動きが変わる。問題はカーブでブレーキを踏んだあと、いかにスムーズにもとのスピードに戻すかだ。慎重なのはいいけれど、後ろの車を停止させるほどの低速では逆に危険。
交通の流れに乗ることも大事なのだ。
感度がいいのかハンドルもよく切れるお陰で、なんだか不審な動きになってしまう。
「あぁ、もうっ。うまくいかない」
「焦るなって。この車はクセがあるから、慣れた俺でも初めてこいつに乗った時は、ぎこちない動きしかできなかったし」
「そうなんだ」
航さんは褒めて伸ばすタイプなんだと思った。気長に褒めながら丁寧に教えてくれる。そう言えば中学生に柔道の稽古付けていた時も、怒ったりしてなかった。厳しく指摘はするものの、なぜそうなったのかを説明していた。でも必ず最後は褒める。
「よし! 走行は問題ないな。つぎは、駐車だ」
「駐車って、難しいよね……」
「あははっ。羽七も弱気になるんだな」
「そりゃあもう、しょっちゅうですよ」
白線が引かれた駐車場スペースに、何度も何度もハンドルを切り返して停車。それでも真っ直ぐにならないんだから腹が立つ。
ちなみバッグモニターを消されている。
(そこは航さんも、スパルタなんだね……)
「タイヤがどっちを向いてるか常に頭に置いてないとだめだぞ。ほら、ハンドル切り過ぎ。サイドミラーを見ながら、もう少し……こんな感じで」
とうとう航さんがハンドルに手を添えて駐車を補助してしまった。
途中へこみそうになったけど、航さんはここという所で気持ちを浮上させてくれるので、きっと良い教官になると思う!
「できたぁ~。そして、疲れたぁ」
「よく頑張ったな。驚いたよ」
「いえいえ、原田教官のお陰です」
私がそう言うと航さんは目尻を下げて微笑んだ。そして、その顔が近づいてきたと思ったら、キスされた。「教官って響きがエロいな」なんて言いながら。
「ちょっと、どうして教官がエロくなるのよ」
「よーし! 飯食いに行くか。この辺の街なら大丈夫だろ。このあいだ行ったファミレスまで羽七が運転してくれよ」
「さっそく⁉︎ が、ガンバります」
大事な車を運転させてもらうなんて、ハラハラドキドキだ。何とかファミレスの駐車場に車を止めると、手にはたくさん汗をかいていた。はじめての路上運転を思い出す。
「着いたよー」
「お疲れ。よし! じゃあ俺が運転するから代わって」
「へ? あ、はい」
てっきりこのファミレスで食べるのかと思っていたけれど、違ったらしい。航さんに運転を代わっていつもの定位置に収まった。お互いにシートを自分用に合わせ直して再出発。やっぱりこの位置が落ち着く。
「たまにはイタリアンでも食う?」
「うん!」
お店はロッジ風の建物で落ち着いた雰囲気だ。
「航さん、よく知ってたね」
「実はネットで調べたんだ」
恥ずかしそうに航さんが言う。きっと、今まではネットで調べたなんてネタばらししなかったんだろうな。正直に言うのは、私のことを信頼してくれているってことだと自惚れてみる。
彼が彼らしく楽に生きることは、私にも良い影響を与えていると思う。
「美味しいね! また素敵なお店がひとつ増えました」
「よし、これからは洋食も攻めるぞ」
「うんうん。でも、やっぱり小春には勝てない気がする。やっぱり小春が一番だって言いそう」
「まあ……言うだろな」
あははと笑い合う。誰の目も気にしない、自分が自分らしくいられる事の幸福感を私たちは覚えた。
◇
ランチの後、少しドライブをして夕方には家に帰り着いた。でも、夕飯まではまだ少し早い。
私はコーヒーを淹れてカップをテーブルに置いた。航さんがソファーで雑誌を見ているので、私はその隣に座る。
(何の雑誌を見てるんだろう)
「コーヒー、置いてるから」
「サンキュ」
「ねえ、何の雑誌?」
「これ? ファッション誌みたいなやつかな。羽七は読んだりしないのか? 女性誌とか」
「女性誌はね、たまに見るくらい」
そういえば、私のミッションは止まったままだ。だって、ぜんぜん航さんに歯が立たないんだもの。
下手に私から仕掛けると倍になって返って来るし、かといって大人しくしていてもいいようにされるだけだし。それにしても航さんにあんな技を仕込んだ手慣れた女って、一体何者なのよ。
「俺さ、体がデカイから店が限られるんだよなって、羽七?」
気がつけば私は、航さんに後ろから抱きついていた。後ろからなら少しは歯が立つかもしれない。私は思いっきり航さんの太い首に唇を押し付けた。
「おいっ。は、羽七。どうしたんだよ」
「今日は大切な愛車を運転させてくれてありがとう」
「お、おう」
「お礼です」
「はあ?」
「動かないでお願いっ。気にせずにその雑誌、読んでて」
「え、あ、おいっ」
今度は首に噛み付いた。痛くはないはず。だって、これは甘噛みだもん。航さんが私の身体に覚えさせたヤツだよ。
航さんは私の様子を伺っているのか、抵抗する素振りは見せない。そのうち反撃されるのは分かっているけど、一矢報いたいじゃない!
航さんのティシャツを後ろから一気に捲り上げ、ガチガチの腹筋に手を這わした。相変わらず硬くて逞しい。この体に柔道の白い道着は眼福だった。
「航さん? さっきから同じページだよ。ちゃんと、読まなきゃ」
航さんの右耳に優しく囁いて、耳朶を噛んだ。私がする技にオリジナリティーなんてないよ。全部、航さんから与えられて覚えたものだもの。
「は、羽七っ。なあ、最後までスるつもりか?」
少し息を乱しながらそう尋ねてくる彼の、少し震えた声に興奮した。ダメ、しっかりしないと、また返り討ちにあうと気持ちを整える。いったい何と戦っているのだろう。でも、負けたくないの。
「もちろんです」
「だったら、正面から来いよ」
航さんはわざとそうやって挑発する。彼は私の性格を分かっていて敢えて煽ったりする。私も自分のことはよく分かっている。そういう煽りは嫌いじゃない。
「望むところよ」
私は航さんの膝を跨いで座った。
「お触りはダメだから」
「なんでだ」
「わたしに、ハンディをください!」
反論させないように睨みつけて言うと、航さんは口を閉じたまま笑った。航さんの目は明らかに「上等じゃないか」と言っている。
「こうしたらいいんだろ?」
航さんは両手をだらりと下ろしてみせる。すかさず私は航さんのシャツを剥ぎ取る。すると、厚い胸板があらわになった。何度見ても彼の筋肉は飽きない。じっと見ていると、だんだん自分の身体も熱くなってきた。
その逞しい胸に手を添えて、顔を近づけてキスをした。そのあと舌をだして舐めてみる。首筋から肩、鎖骨、そして最後はつんと主張し始めた乳首を躊躇いなく唇で食んだ。
その瞬間はさすがの航さんもわずかだけど反応した。でも、声は出さない。
(気持ちいいところは男も女と同じって、書いてあったし!)
私は航さんの肩に置いていた手を、お腹を飛び越えて男の大事な部分に伸ばした。
「くっ、羽七……」
航さんの口から初めて甘い声が漏れた。私はそれが嬉しくて航さんのものを手で刺激した。すると、だんだんとソレは硬さを増していく。
(感じてくれてる! 私の、私の手で航さんのものがっ)
「羽七、本気なんだな」
「悪ふざけで、こんな事しない。本気です」
「じゃあ、ハンディは不要だろ?」
「え?」
「スポーツマンシップにのっとって、正々堂々と戦うぜ」
「え、わ、ヤダっ。やぁぁ」
ほら、まただよ!
悔しい!
彼の弱い所を攻める前に、私はまたも返り討ちされてしまう。しかも、彼が言う得意の寝技だ。
(寝技しか、かけられてないじゃん!)
今日の私は航さんから有効くらいは取れただろうか。
いつか、その身体からっ……一本取ってやるんだからね!
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