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5-38 迷宮探索⑩ 戦闘・vs邪妖精
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5-38 迷宮探索⑩ 戦闘・vs邪妖精
敵①は奇怪なオブジェと化していた。
原因は俺のアトモスシールドだ。
空気を構成する酸素だの窒素だの分子の相対位置を固定することで在らざる壁を作る魔法。
俺は空間中に敵①の動きを阻害するように柱や梁のように縦横に空気の塊を作り出した。
敵①はそれに気づかずに進み、通れないところを通ろうとし、結果空中に芸術的なポーズで縫い留められることになった。
「てめえ、この野郎放しやがれ!!」
敵①は敵のリーダーさんだ。
空中に縫い留められあがく姿は芸術的に滑稽だ。
すぐにでもとどめを刺せる状態だったが、俺はそれを先送りした。
倒されたほかの敵からあふれ出た黒い邪気がこの男の中に逃げ込むのを見たからだ。
(こいつを殺ってしまうとほかのところで邪気が凝るかもしれない…)
俺の心配は其処だった。
だったらこのまま邪壊思念の受け皿としてこいつを使い、俺が対処した方がいい。
そして邪気は予想通り集まり、すべての邪気が集まったときにこいつの変貌が始まった。
『あっぎょあがあぁぁぁぴっ』
最後の『ぴっ』が怖い。
敵①は溶岩が噴き出すようにぼこぼこと泡立ち、粘土ででもあるかのように変形していく。
『にゃにゃにゃにゃ・・・・・・にゃなぴょおぉぉぉっ』
悲鳴だけでもうこいつがまともじゃないのがわかるよ。
膨らんでは崩壊し、崩れてはまた膨らみ、どんどん人の姿を失っていく敵①。
出来上がったのは歪んだ下半身の上に絶えず生成されては崩れる10個の頭を持ったコールタールのような化け物だった。
こうなると死んだも同然なので一応ご愁傷様と言っておこう。
◆・◆・◆
「なななななっ何だいこりゃ」
奇怪なオブジェ獣と化した敵を見てまず正気に戻ったのはばあちゃんだった。
さすが年の功。
ルトナには話したことはあったと思うんだが、さすがに現物は初めてのせいだろう。少しあっけにとられている。
クレオはかなりびっくりだ。
俺?
俺とモース君は平気だよ、知ってたし。
意外としゃっきりしていたのか艶たちお姫様組。
自失は一瞬ですぐに正気に戻り、そしてこういった。
「邪神…」
俺に言わせると邪妖精だが、彼女たちは『邪神』と呼んでいるようだ。これはそんな御大層なものじゃないけどね。
にしても彼らは邪妖精と言う存在を知っているらしい。
ふーん、興味深いね。
「こいつがかい? はあ、見るのは初めてだよ」
どうやらばあちゃんも情報は持っていたらしく、驚きはしたがすぐに気を引き締め、ついでにルトナ達にも決して油断しないようにと檄を飛ばし、同時に距離を取らせている。
それを見た艶が手を合わせ、印を組み呪文を紡ぐ。
「掛けまくも畏き、いましたまえる大神。古の聖約に記されしわが権能に給える加護の導きの…」
呪文というより祝詞だった。
どうやら近くにいる心霊や精霊と交信して助力を頼むもののようだ。これが彼女のスキルかな?
だが役には立たないだろう。
だってここは迷宮だからね。
魔力もあって精霊もいて魔法も使えるけど、それは自然現象的なもので、上位精霊のような意志をもって世界に干渉するものはここには入ってこない。
バランスが悪くて入ってこれない。
ここでそういうものを呼ぶのは…
って、俺の意識に助力を~なんて祈りが届いてきました。
そうだった。俺って英霊で大精霊(たぶんともに見習い)だった。
うおおおっ『助けて。助けて。助力を~』みたいな思いがひっきりなしに…
こんなスキルがあるんかい。
結構強力で意識が引っ張られる。何とかしてやらないと~みたいな気分になる。
うーん、しかし第一直接戦っている俺が救援するって意味あるのか?
《面白いかもしれないで在ります》
「えっ、なにが?」
いつの間にか戻ってきたモース君がまた小さくなって俺の肩に乗っている。そのモース君からの助言だ。
《直接戦っているとなかなか環境魔法は維持しづらいで在ります。冥の力を彼女に預けて、支援火力として使ってはどうでありますか?》
むむっそうか…
本来ならここで支援砲撃を獄卒の皆に頼むところだが、ここで獄卒を使うとまた混乱するかもしれない…
何といってもあいつら見た目がスケルトンだからな…よく見るとなかなかに芸術的なんだけどね。
となると、彼女が援護してくれるのはありか?
冥属性の魔法をどこどこ撃ってくれると結構助かるかも。
『じゃあモース君は聖水噴霧をお願い、ちょっと強めで』
俺は聖水の制御をモース君に移譲する。
邪懐思念は毒ガスのようなものだ。
放っておくと充満するし、中にいると汚染される。
特に耐性のないクレオやばあちゃんがまずい。
《承知であります》
その瞬間霧の濃度が濃くなった。
なのに透明度が上がってうごきやすくなる。
霧がかなりの速さで渦を巻いているからだ。
「うんうん、やっぱりこの制御はモース君にかなわないよね」
「そーれ」
「はい」
「くたばりな」
霧が渦を巻き、邪妖精の表面で火花が散り、邪妖精が苦しみだした。
それを好機と見たのかうちのご婦人たちが邪壊思念の塊、邪妖精に攻撃を仕掛ける。
本当に血気盛んである。
「皆やめて、それに手を出すのはだめなの」
艶が危機感たっぷりにみんなを止めるが大丈夫。この聖水の霧で細かい邪壊思念はどんどん消滅していて他者を汚染するような効果は出ていない。
モース君はいい仕事をしてくれている。
逆に彼女たちの攻撃も結構効いている。
もともとは粘土みたいな塊だ。切っても切っても元に戻る。だが今はその表面で聖水と邪気が対消滅をしている。
切断され表面積が大きくなると対消滅が早くなるし、切られたときに拡散した邪気は聖水であっという間に浄化されてしまう。
切れば切るほどダメージになる。
よい傾向だ。
そしてついに艶が参戦。
空間収納から取り出した杖を構えて祈りをささげている。
彼女に関しては何というか場数を踏んでますね。みたいな感じがある。
見た目からは想像がつかないけどね。
うちの女性陣が邪妖精に攻撃をかけたとき、みんなを止めようとした艶。
汚染を心配したのだろう。だが周囲に漂う霧がそれを防いでいるとみてからは即座にみんなの救援を捨てて攻撃に転換した。
彼女が使ったのは。
「【エレメンタルショット】!」
己の魔力をただ弾丸として打ち出す極めて原始的な魔法。
だが属性相性のゆえにはまれば強力だ。
俺が送った冥力で構築されたエレメンタルショット。
冥属性のそれが次々と邪妖精に打ち込まれていく。
味方の動きを把握してフレンドリーファイアーがないように調節もしている。
ちょっとこのお姫様に興味が出てきたぞ。
さて、俺もそろそろ…
そんな時に俺の魔力知覚に反応があった。
極めて高い隠密性。
空間の揺らぎを検出しないと把握できないシノビのもの。
あいつが再登場か。
敵①は奇怪なオブジェと化していた。
原因は俺のアトモスシールドだ。
空気を構成する酸素だの窒素だの分子の相対位置を固定することで在らざる壁を作る魔法。
俺は空間中に敵①の動きを阻害するように柱や梁のように縦横に空気の塊を作り出した。
敵①はそれに気づかずに進み、通れないところを通ろうとし、結果空中に芸術的なポーズで縫い留められることになった。
「てめえ、この野郎放しやがれ!!」
敵①は敵のリーダーさんだ。
空中に縫い留められあがく姿は芸術的に滑稽だ。
すぐにでもとどめを刺せる状態だったが、俺はそれを先送りした。
倒されたほかの敵からあふれ出た黒い邪気がこの男の中に逃げ込むのを見たからだ。
(こいつを殺ってしまうとほかのところで邪気が凝るかもしれない…)
俺の心配は其処だった。
だったらこのまま邪壊思念の受け皿としてこいつを使い、俺が対処した方がいい。
そして邪気は予想通り集まり、すべての邪気が集まったときにこいつの変貌が始まった。
『あっぎょあがあぁぁぁぴっ』
最後の『ぴっ』が怖い。
敵①は溶岩が噴き出すようにぼこぼこと泡立ち、粘土ででもあるかのように変形していく。
『にゃにゃにゃにゃ・・・・・・にゃなぴょおぉぉぉっ』
悲鳴だけでもうこいつがまともじゃないのがわかるよ。
膨らんでは崩壊し、崩れてはまた膨らみ、どんどん人の姿を失っていく敵①。
出来上がったのは歪んだ下半身の上に絶えず生成されては崩れる10個の頭を持ったコールタールのような化け物だった。
こうなると死んだも同然なので一応ご愁傷様と言っておこう。
◆・◆・◆
「なななななっ何だいこりゃ」
奇怪なオブジェ獣と化した敵を見てまず正気に戻ったのはばあちゃんだった。
さすが年の功。
ルトナには話したことはあったと思うんだが、さすがに現物は初めてのせいだろう。少しあっけにとられている。
クレオはかなりびっくりだ。
俺?
俺とモース君は平気だよ、知ってたし。
意外としゃっきりしていたのか艶たちお姫様組。
自失は一瞬ですぐに正気に戻り、そしてこういった。
「邪神…」
俺に言わせると邪妖精だが、彼女たちは『邪神』と呼んでいるようだ。これはそんな御大層なものじゃないけどね。
にしても彼らは邪妖精と言う存在を知っているらしい。
ふーん、興味深いね。
「こいつがかい? はあ、見るのは初めてだよ」
どうやらばあちゃんも情報は持っていたらしく、驚きはしたがすぐに気を引き締め、ついでにルトナ達にも決して油断しないようにと檄を飛ばし、同時に距離を取らせている。
それを見た艶が手を合わせ、印を組み呪文を紡ぐ。
「掛けまくも畏き、いましたまえる大神。古の聖約に記されしわが権能に給える加護の導きの…」
呪文というより祝詞だった。
どうやら近くにいる心霊や精霊と交信して助力を頼むもののようだ。これが彼女のスキルかな?
だが役には立たないだろう。
だってここは迷宮だからね。
魔力もあって精霊もいて魔法も使えるけど、それは自然現象的なもので、上位精霊のような意志をもって世界に干渉するものはここには入ってこない。
バランスが悪くて入ってこれない。
ここでそういうものを呼ぶのは…
って、俺の意識に助力を~なんて祈りが届いてきました。
そうだった。俺って英霊で大精霊(たぶんともに見習い)だった。
うおおおっ『助けて。助けて。助力を~』みたいな思いがひっきりなしに…
こんなスキルがあるんかい。
結構強力で意識が引っ張られる。何とかしてやらないと~みたいな気分になる。
うーん、しかし第一直接戦っている俺が救援するって意味あるのか?
《面白いかもしれないで在ります》
「えっ、なにが?」
いつの間にか戻ってきたモース君がまた小さくなって俺の肩に乗っている。そのモース君からの助言だ。
《直接戦っているとなかなか環境魔法は維持しづらいで在ります。冥の力を彼女に預けて、支援火力として使ってはどうでありますか?》
むむっそうか…
本来ならここで支援砲撃を獄卒の皆に頼むところだが、ここで獄卒を使うとまた混乱するかもしれない…
何といってもあいつら見た目がスケルトンだからな…よく見るとなかなかに芸術的なんだけどね。
となると、彼女が援護してくれるのはありか?
冥属性の魔法をどこどこ撃ってくれると結構助かるかも。
『じゃあモース君は聖水噴霧をお願い、ちょっと強めで』
俺は聖水の制御をモース君に移譲する。
邪懐思念は毒ガスのようなものだ。
放っておくと充満するし、中にいると汚染される。
特に耐性のないクレオやばあちゃんがまずい。
《承知であります》
その瞬間霧の濃度が濃くなった。
なのに透明度が上がってうごきやすくなる。
霧がかなりの速さで渦を巻いているからだ。
「うんうん、やっぱりこの制御はモース君にかなわないよね」
「そーれ」
「はい」
「くたばりな」
霧が渦を巻き、邪妖精の表面で火花が散り、邪妖精が苦しみだした。
それを好機と見たのかうちのご婦人たちが邪壊思念の塊、邪妖精に攻撃を仕掛ける。
本当に血気盛んである。
「皆やめて、それに手を出すのはだめなの」
艶が危機感たっぷりにみんなを止めるが大丈夫。この聖水の霧で細かい邪壊思念はどんどん消滅していて他者を汚染するような効果は出ていない。
モース君はいい仕事をしてくれている。
逆に彼女たちの攻撃も結構効いている。
もともとは粘土みたいな塊だ。切っても切っても元に戻る。だが今はその表面で聖水と邪気が対消滅をしている。
切断され表面積が大きくなると対消滅が早くなるし、切られたときに拡散した邪気は聖水であっという間に浄化されてしまう。
切れば切るほどダメージになる。
よい傾向だ。
そしてついに艶が参戦。
空間収納から取り出した杖を構えて祈りをささげている。
彼女に関しては何というか場数を踏んでますね。みたいな感じがある。
見た目からは想像がつかないけどね。
うちの女性陣が邪妖精に攻撃をかけたとき、みんなを止めようとした艶。
汚染を心配したのだろう。だが周囲に漂う霧がそれを防いでいるとみてからは即座にみんなの救援を捨てて攻撃に転換した。
彼女が使ったのは。
「【エレメンタルショット】!」
己の魔力をただ弾丸として打ち出す極めて原始的な魔法。
だが属性相性のゆえにはまれば強力だ。
俺が送った冥力で構築されたエレメンタルショット。
冥属性のそれが次々と邪妖精に打ち込まれていく。
味方の動きを把握してフレンドリーファイアーがないように調節もしている。
ちょっとこのお姫様に興味が出てきたぞ。
さて、俺もそろそろ…
そんな時に俺の魔力知覚に反応があった。
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