精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ

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5-16 神殿を再建しよう

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5-16 神殿を再建しよう


「そ…そそんなたいいきん」

 テテニス嬢どもりまくり。

 五万リゼルというのは日本のお金だと五〇万円ほどになる。
 ここは物価も安いので価値はもっと上がって八〇万円分ぐらいは使えると思う。
 月八〇万円の収入はかなり大きいのではないだろうか?

 ここはかなり草ぼうぼうの空き地というより荒地で、しかも建物は崩れていて廃墟もいいところだ。そんな場所を高額で借りたいという人間がいきなり現れたらそれは驚くし警戒もするだろう。

 だがここにはそれだけの価値があると俺は思っている。

 まず冥属性の精霊たちから救援要請が出ていること。
 ここを守ってほしいという意向があるのだ。ここはこの町を守る要の聖域だ。なくなると精霊たちはとても困るし俺も困るのだ。
 この段階でもう金銭的価値を越えて此処には価値がある。

 そしてここがかなり広い敷地を持っているのもいい。使い道がある。
 今はただの瓦礫だがこれを治していけばそれなりに良い建物ができると思うし、これでも一応貴族なので多少の見栄は必要なのだ。

「というわけで多少見栄えのする建物を作らないといけないですし、工房もと考えるとなかなかこれだけ広い土地も借りられない。
 勿論それだけの手間をかけて作るのだから簡単に契約解除などはできないわけで、契約期間はとりあえず五〇年でお願いしたいんですよ。
 先行き何がどうなるかわからないけどね、月、五万リゼル取っておけば対応できるでしょう?
 勿論契約はキハール伯爵の所にある貴族院を通して条件を詰めてからします」

 貴族院というのはこの国の貴族のもろもろを統括している組織だ。王都と国の主要な都市におかれていて、貴族の動向を監視している。
 重要な契約などはここを通してするのが慣例で、契約書の控えなどを保存してくれて、後々のトラブルに対応してくれる。
 日本で言えば公証役場のようなものだ。

 もっとも存在意義は契約の公平を守ることではなく貴族の品位を守ること。つまり平民を守るというよりも貴族が馬鹿をしないように監視するのがここの仕事だ。
 まあ結果として契約相手は守られたりするのだからそれでいいのである。

「ええっとはい…そう言うことでしたら…でも」
「ええ、勿論神殿や孤児院の活動を妨げるようなことはしません。それも契約書に入れておきましょう」
「はい」

 とこんな形で仮契約が成立した。
 テテニス嬢は俺が貴族だったことに驚いたが、貴族が貴族院を使って契約をするということは契約が守られると言う意味なので、とりあえず安心できたらしい。
 本当はもっと検討したり、相談したりしたかったのだろうが、ここで契約に応じるというのはかなり困窮しているということではないだろうか?
 とりあえずそこら辺も踏まえて契約を作る。

 契約内容は土地の賃貸借で条件は日本のそれを参考にしてちょっと手を加え。

 ① 契約期間は五〇年として、ディア・ナガン一位爵(甲)は甲都合により中途解約の際、半年前までにテテニス・ノール(乙)に対して通告すること。また解約の際、甲の使用していた建築物、土地付属物は乙並びに乙の神殿に帰属するものとする。
 ②乙の都合によって解約が発生する際は乙は甲の建てた建物並び土地付属物を貴族院の査定額で買い取る物とする。
 ③甲は借地使用に際して乙神殿並びに乙孤児院の活動に支障をきたさないように配慮することとする。
 ④賃料は一か月あたり五万リゼルとし、甲は毎月末日までに翌月分を乙当て支払うこととする。

 まあ簡単にこんなものだ。
 ②は不安をあおられる感じだが、こちらが一方的に不利益を飲むような契約だと契約として成立しなくなってしまうので公平を期すために仕方がない。
 それに深読みすればテテニス嬢の側には果たすべき義務が設定されていないので解約しなければならない事情などそうそうないので、実はリスクになっていないのだ。恣意的に解約するのでなければ問題は生じない。

 賃料に関してはまったく何の問題もない。

 なぜなら一位爵に陞爵したことで国から支払われる年金は格段に上がっているからだ。

 三位爵のルトナは年間四二万リゼルを受け取っているが、王女を助けたりしたことで一位爵にまで陞爵した俺の年金はなんと月六〇〇万リゼル。
 じつにこれだけで年収6000万円相当。

 お金持ちである。しかも貴族の義務とかはほとんどないのでかなり気楽。というか使わないとまずいんだよね、経済的な観点から。その意味でも毎月ほっとくだけで五万リゼルを消費してくれるこの契約はなかなか素晴らしい。
 しかしなあ…お金をどんどん使わないといけないなんて状況があるなんて日本にいた時には夢にも思わなかった。

 その夜は俺は崩れた寮の無事な部屋を使わせてもらうことにし、貴族院に話を通しに行った。
 クレオはどうするのかと思ったら孤児院の方に泊めてもらうという形で話がまとまっていた。
 その夜は食材などを持ち出しで子供たちとバーベキューだ。

 テテニス嬢にはパンなどを買いに行ってもらって、俺達がやるバーベキューにみんなを招待する形にした。
 だってそうしないとかなり節約した晩飯になりそうだったからだ。子供はちゃんと食べないとね。

 子供たちがあんまり必死に食べるものだからお腹を壊さないが心配させられた。うん、これでいい。

 ◆・◆・◆

 翌日、朝から作業を始める。

「役割分担として華芽姫とスケアクロウマンは神殿の修理だ」

『はーい』
「ハイ」

「精霊虫を呼び出して建物を補修してくれ。崩れてしまっている所は後で設計図起こすから、とりあえずは隙間風と雨漏りの補修、そして外観の修繕だ」

 二人は監督で実際に作業するのは土の精霊虫たちだ。彼らは口から捏ねた土を歯磨き粉のように捻りだし、それを盛り上げていろいろなものを作る。
 作れるのは土系であれば何でもありで砂とか漆喰とかもありだがなんと石まで作れるのだ。

 彼らが粘土を盛り上げるようにして作ったオブジェクトは彼らの力でそのまま一個の石になってしまったりするわけだ。それを家でやったら?
 全体が一つの石で出来た精巧な建物が出来てしまうのだ。
 すごいな。

 神殿はこのように端から分解しつつ再構築して作り直す予定である。

 ただ彼らはあまり高い知能は持っていないし、動くのに魔力が必要になる。良いものを作るためにはかなり大量の魔力が必要になる。
 それは俺が供給するからいいのだが、それをどうやって分け与えるか。中継点としての華芽姫たちであり、彼らをコントロールする頭脳の役割でもある。

「あと拝殿の椅子なんかは…これを使います」

 パンパカパーン!
 自分でファンファーレをつけてみた。
 そして取り出したのは天樹の枝。

『あー、天樹のえだだー』

 さすが華芽姫、よくわかる。
 以前エルフの所でもらったものだが今は数が増えて六本ほどある。
 俺の計画ではこれを並んだ椅子の後ろ側に植えて、そこから広がる根っこと枝葉で椅子を作ろうかと考えている。
 細かい枝と根が複雑に絡み合った籐椅子のようなものを考えている。

「たぶん大丈夫~。まかせて~」

 ここら辺は土と木を司る上位精霊の独壇場だろう。
 細い根で編み上げられたベンチはきっとすわり心地がよいはずだ。
 そしてこの土地ならば十分に天樹の成長も安定も見込める。

 神殿の修復と聖地の安定を狙った良い作戦だとおもう。

「では神殿の方はそんな感じで」
『はーいー』

「でこちらの家の方だが昨日すでに設計は出来ている。モース君に精霊虫ワーカーの指揮をとってもらって建造に入ってもらいます。同時進行で温泉も掘ります」
『お任せくださいであります』

 こちらは俺の寝室、作業部屋が二つ。そして大浴場。あとはルトナのための個室がいくつか。
 本当は個室を一つにとも考えたのだ。そうすれば嫁が増えずに済むかな…と。だがそれでもルトナはとまらないと思い直した。
 俺のハーレムメンバーを絶対連れて来て、下手をすると俺の寝室に放り込むかもしれない。
 ここは俺自身の安息のためのいずれ増えるかもしれないメンバーのための個室設置は不可欠だろう。

 デザインの効果で俺達の目には家の完成図が見えている。
 三階建ての建物になる予定だ。中世的な洒落た作りの建物で、バロック様式が近いかもしれない。
 手前にある神殿を少し離れた位置で包み込むように弧を描く大きな建物だ。

 これは神殿自体が小さいながらバロック様式の教会に近いデザインで建てられているので合わせるためにそうしてみた。

 神殿の方も礼拝堂の後ろにある居住区画のような部分がかなり傷んでいるのでこちらの修復が終わればいい感じになるのではないだろうか?

 裏側にはまだかなり広い敷地があるのでここは庭園なりなんなりにしてここは天樹を中心にして迷路庭園みたいな魔法陣でも作ろう。

「よっし、こんなものだな。とりあえず作業にかかってくれ」

『はいであります』
『はーい』
『ハーイ』

『時にマスターは何をするであります?』

「飯作るよ、みんなが起きる前に」

 実はまだみんな寝ている時間なのだ。
 俺達には空の明るさとか関係ないしね。

 寸動鍋で肉のちゃんと入ったスープを作り、パンを用意する。パンは昨日買ってきて貰ったものを空間収納でしまっておいたので“あまり”固くなったりはしていない。
 なぜあまりかというとテテニス嬢にお使いを頼んだら節約しまくってくれて、やはりあまり良いパンは買ってこなかった。
 節約は大事だと思うけどあまり行き過ぎたのはね、その分スープを贅沢にしましょう。

 子供たちが起きてきてみんなで食事をとって、みんながそれぞれの仕事にもどったころに貴族院から役人がやってきてここの賃貸契約が整った。
 神殿があるくせにここは冥王神殿が手放していて前任のゲルト神官が所有者になっていた。つまりここは自費で運営されていた孤児院だったのだ。

 だが今回はそれでいい。ゲルト神官の後、所有者がよくわからない状態だったが今回はテテニス嬢で確定させての賃貸契約だ。
 どうせ神殿も行政も監理していない見捨てられた土地だから問題ない。

 そして今月の日割り分の賃料と来月の賃料、合わせて7万リゼルを支払い手続きは終了。

 精霊たちも地道に仕事をしてくれている。
 きっとびっくりするぞ…

 なんか楽しみ~。
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