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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常
第35話 これからのいろいろが決まったみたい
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第35話 これからのいろいろが決まったみたい
「ししょーーーーーーっ。ぜひ彼の魔法使いと面会をーーーーー!」
「ええい、やかましい! あいつはもう次の任務に就いたと言うとろうが!!」
げしっとかいう音が聞こえたよ。
今日はしつこいな。
「かような偉大な魔法使いは王国の剣たる宮廷魔導師にこそふさわしいのです。冒険者などに身をやつしているのはもったいない。
説得は私がしますから紹介だけ、ちょっとだけでいいからーーっ」
ちょっとだけなんだっちゅうねん。
「今日はしつこいですね」
僕は吹き抜けから爺ちゃんの足に縋り付いて駄々をこねるクエルさんを眺めた。
すでにスィームルグ討伐…と言っていいかわからないけど、あの一件から半月ほどが過ぎたんだ。
スィームルグがいなくなって、森の様子も落ち着きを取り戻しつつあるみたい。
と言っても以前のように落ち着いたという所まではいかないんだけど、魔物たちの南進は停止した。
そのうえで騎士さんたちや冒険者たちが魔物狩りを適宜しているのでいったん乱れた秩序も再構築されつつあるらしい。
もともと魔物っていうのは魔素の濃いところを好む性質があって、人間の町っていうのは逆に魔素が薄い処に作られている。
だから基本的に強い魔物ほど町のような人間の勢力圏からは離れていく傾向があるんだ。
だからスィームルグに追われて南下してきた魔物たちも北に帰っていく傾向にある。
しかも今ならマンティコアが大挙していなくなったのでいい場所が取り放題。
たぶん北の方、あのスィームルグの巣のあたりは魔物の縄張り争いが盛大に繰り広げられているに違いないのだ。
うん。ちょっと気になる。
そして僕たちの方も忙しかったんだ。
怪我人は毎日毎日量産されてくるわけよ、魔物との戦闘で、量産型けが人。これほどありがたくない量産型も珍しいって話。
まあ、おかげで魔塔の人たちはたくさん仕事ができて、たくさん修業ができてウハウハだったわけ。
なんじゃそりゃ。と思うかもしれないけど、爺ちゃんがそう言うのだ。
『怪我人だの病人だのはいない方がいい。それは間違いない。だが出てしまったならば醫どもの修業にも有効活用する。それが正しいんだぜ。ウハウハだー』
とかね。
ウハウハの使い方を間違ってるよね。
そんな感じで大忙しで妙にハイな爺ちゃんを追いかけまわしていたのがクエルさん。
あの怪獣型魔導士をぜひ王国の宮廷魔導師に! とか言って、爺ちゃんに『紹介してくれ~』『紹介しなさい~』『紹介しろ~』と三段活用で日々迫っている。
いや、毎日じゃないんだけどね。
ほら、クエルさんが連れてきた魔導士たちを鍛えなおすんだ! とか言って森に突撃もしているから。
いやー、家《うち》(神威心闘流)はこんなんばっかだ。
でも今日は粘るな。
「ええ、何でも竜帝様がお戻りになるそうで、それと入れ替わりにクエル様たちは王都にお戻りになるとか。
確か今日の午後には…」
ああ、それで粘りまくっているのか。でもあの正体不明の怪獣魔導師君は僕なので絶対正体不明なのだ。
ただ最後まで正体不明だったからクエルさんを見返すことはできないのだった。
まあ、しゃーない。
◇・◇・◇・◇
「まあ、何とか丸く収まったぜ」
翌日です。竜爺帰ってきました。そして諸々お話を聞きます。
あっ、ちなみにクエルさんは帰っていったよ。泣く泣くだった。マジ泣き。すごいなあの人。
「さて、そんじゃまずはデアネイラのことだが…」
かいつまんで言うと、デアネイラちゃんは王宮に引き取られることになった。
そして彼女の周りの人間は王家が用意することになったらしい。というわけで。
「フウカ、まずお前さんに頼みたいんだがどうだ!」
「ええー、ほんとにいいんですか~。任せてください。無茶苦茶頑張りますよ~」
フウカ姉が〝るんたるんた〟踊ってる。デアネイラちゃんを抱っこしたまま。彼女もなんか楽しそうだ。いいお姉ちゃんになるだろう。
デアネイラちゃんがオッパイで圧殺されなければ。うん。
まあ、ちっちゃい子はオッパイ大好きだからな。
「役職はこのジジイの代理だ。デアネイラの治療、ケアのために大医王の名代としてあらゆる…とまではいかないがかなり広範な権利をもぎ取ってきた。
身の回りの世話と、護衛がメインだな。
お前さんの目から見てダメなやつはのして構わない。
デアネイラが心身ともに傷を負っているのでノヴァ公爵家の預かりになって、治療と育成を第一に考えるというのが名目だ。
なのでお前さんの指示が一番になる。
ごちゃごちゃいうのもいるだろうが構わんからぶっ飛ばせ。責任は儂とこいつがとる」
「おい、勝手に何ぬかしてやがる。
まあ、その通りだがよ、こと、治療に関しては国王だろうが勝手はさせねえのが家の方針だ。好きにやれ、お前なら心配ないだろう。
あと家から気の利いたやつを何人か連れていくと良い。さすがにお前一人で全部をやるのは無理だろうからよ」
竜爺と爺ちゃんの台詞にフウカ姉が神妙にお礼を言っている。さすがにこんな時まで間延びした喋りかたしてないな。ていうか普通に喋れたんだ。
これで俺の頭の重みも…
「そうだ、しばらくリウたんと会えなくなるから、リウたん成分を補充しておこう」
フウカ姉はデアネイラちゃんを膝に抱いて、椅子に座り、僕を足の間に座らせてわざわざおっぱいを僕の頭にのっけた。
重たいっちゅうねん!
《さすがオッパイお化けですよー》
「じゃあ、ネフェルさんはどうなったんです?」
「あれは現状維持だな。
というのも今回の討伐作戦で、リュメルクローテ公爵が功績を上げたんでな、失敗したらそれを理由に離婚させて降爵というのを考えていたんだが、そうもいかなくなった。
まあ、もともとあいつもお姫様でな、基本社交以外のことは何もしねえ、ぶっちゃけ子供も産みっぱなしであとは家人に丸投げで、めったに会いもしなかったようだから、大勢に影響はなしだな。
公爵家も今回のことで命数をつないだわけだし、どういうわけか夫婦仲も悪くないんだ… まあ、今回のことで少しは考えてくれるといいんだが…」
「スィームルグの話はどうしたんだよ」
「それがまた難しい話でな」
ウェザレル伯爵領における魔物の氾濫はとにもかくにも鎮圧された。大局的に見れば原因は僕らが倒したスィームルグが原因で、遠因はそれを襲ったタタリなので、リュメルクローテ公爵家のやったことは場当たり的な対応だったんだけど、それでも町を魔物の群れから守ったことは間違いない。
評判は良くなったわけ。
それに証拠となるべきスィームルグの死体はタタリのせいでなくなってしまった。
「卵じゃ証拠にならんからな」
孵りもしない(と思われている)卵が転がっていたところでドラゴンがいた証拠にはならないのだ。
それに勇者のバフが思いのほか役に立ったのも事実。
確かに勇者は勇者だったのだ。と、王様たちも認識を改めたのだとか。
王家にはあわよくば。と言った思惑は、確かにあったのだと思う。だが、勇者が、まあ、たぶん、おそらく、勇者として期待できるというのであれば少し方向性が変わってくる。
こうなるとどうしてもリュメルクローテ公爵が邪魔になるのだけど。
「あいつは勇者を利用して自己の利益を図ろうとしている。これは勇者の使いかたとしては完全に邪道だ。
何とかしたいが勇者の父親だ。
勇者の能力を考えると無理矢理引き離してうまくいくのかというとなかなかな…」
うむ、なかなか難しい問題だね。勇者という存在は、それだけ大事ということだろう。予言とかあるわけだし。
「だが、公爵にまるっと任せるのもまずいのでな。現在、勇者とその周辺戦力をどう扱うかを、王家と公爵家で折衝中なのさ」
「公爵家としては主導権を王家には取られたくないだろう。
だが勇者を要する以上、この国の魔物災害に対して対処しないわけにはいかない。
それには莫大な金が必要ってわけだ。
今回の作戦でも、公爵家はかなり大きな出費を強いられているからな。
それが嫌なら国がお金を出してもいい。だがその場合は当然主導権は完全に国のものになる。
それは公爵家が勇者を手放すということと同義だ。
リュメルクローテ公爵としてはこれは絶対に認められないことだろう」
まだ折衝中で答えは出ていないのだが、勇者とその部下は公爵家の所属として、王家から支援を出し、その代わりにある程度口を出す体制を作る。
そしてどしどし魔物を退治させるのだ。
というのが落としどころではないかと、竜爺は言った。
「それに今回の派兵で、公爵家は派閥のほとんどを失っている。
いや、実際構成員がなくなったわけではないんだが、連中が我が身可愛さに逃げ出したことで派閥が完全に形骸化している。
それにこいつらに関しては魔物に背を向けて逃げ出したわけだから、王国としても勇者の行動に口を出させない理由にはなる。
今までは派閥の総力を結集して、勇者の教育をすると主張していたわけだが、もうそんな言い訳は通用しない。
勇者の教育という権利と、勇者隊の行動の決定権の、ある程度を把握できたので、王国としては御の字というわけだな」
今回の作戦はそれなりに成果があった。と、竜爺は満足げに顎をさすった。
でも爺ちゃんが突っ込む。
「だがそれだけじゃねえだろう。
勇者はまだ子供だ。そして公爵家は何があっても勇者を失うわけには行かない。消耗するのは公爵家だ。
おまけに公爵家は、勇者に対する影響力を維持しようと思えばどんどん部隊に金をつぎ込ま無いといけない。
金を出さなきゃ主導権が王家の方に傾くんだ。
そしていざとなれば勇者だけは保護する。
国王の考えそうなことだ」
じいちゃんのツッコミを竜爺はふふんとわらって流した。
どうやら王様というのもなかなか曲者みたいだね。
だけどこれで一つの方向性はでたみたい。
僕たちは、というかフウカ姉たちみたいにかかわりのある人たちはパタパタと準備にかかった。
そして僕が村に帰る日も近づいてくる。
そうだな、もう一回冒険者ギルドに行ってこようか。
でも、その夜なんか変な夢を見た。
うん、良い考えだ。
「ししょーーーーーーっ。ぜひ彼の魔法使いと面会をーーーーー!」
「ええい、やかましい! あいつはもう次の任務に就いたと言うとろうが!!」
げしっとかいう音が聞こえたよ。
今日はしつこいな。
「かような偉大な魔法使いは王国の剣たる宮廷魔導師にこそふさわしいのです。冒険者などに身をやつしているのはもったいない。
説得は私がしますから紹介だけ、ちょっとだけでいいからーーっ」
ちょっとだけなんだっちゅうねん。
「今日はしつこいですね」
僕は吹き抜けから爺ちゃんの足に縋り付いて駄々をこねるクエルさんを眺めた。
すでにスィームルグ討伐…と言っていいかわからないけど、あの一件から半月ほどが過ぎたんだ。
スィームルグがいなくなって、森の様子も落ち着きを取り戻しつつあるみたい。
と言っても以前のように落ち着いたという所まではいかないんだけど、魔物たちの南進は停止した。
そのうえで騎士さんたちや冒険者たちが魔物狩りを適宜しているのでいったん乱れた秩序も再構築されつつあるらしい。
もともと魔物っていうのは魔素の濃いところを好む性質があって、人間の町っていうのは逆に魔素が薄い処に作られている。
だから基本的に強い魔物ほど町のような人間の勢力圏からは離れていく傾向があるんだ。
だからスィームルグに追われて南下してきた魔物たちも北に帰っていく傾向にある。
しかも今ならマンティコアが大挙していなくなったのでいい場所が取り放題。
たぶん北の方、あのスィームルグの巣のあたりは魔物の縄張り争いが盛大に繰り広げられているに違いないのだ。
うん。ちょっと気になる。
そして僕たちの方も忙しかったんだ。
怪我人は毎日毎日量産されてくるわけよ、魔物との戦闘で、量産型けが人。これほどありがたくない量産型も珍しいって話。
まあ、おかげで魔塔の人たちはたくさん仕事ができて、たくさん修業ができてウハウハだったわけ。
なんじゃそりゃ。と思うかもしれないけど、爺ちゃんがそう言うのだ。
『怪我人だの病人だのはいない方がいい。それは間違いない。だが出てしまったならば醫どもの修業にも有効活用する。それが正しいんだぜ。ウハウハだー』
とかね。
ウハウハの使い方を間違ってるよね。
そんな感じで大忙しで妙にハイな爺ちゃんを追いかけまわしていたのがクエルさん。
あの怪獣型魔導士をぜひ王国の宮廷魔導師に! とか言って、爺ちゃんに『紹介してくれ~』『紹介しなさい~』『紹介しろ~』と三段活用で日々迫っている。
いや、毎日じゃないんだけどね。
ほら、クエルさんが連れてきた魔導士たちを鍛えなおすんだ! とか言って森に突撃もしているから。
いやー、家《うち》(神威心闘流)はこんなんばっかだ。
でも今日は粘るな。
「ええ、何でも竜帝様がお戻りになるそうで、それと入れ替わりにクエル様たちは王都にお戻りになるとか。
確か今日の午後には…」
ああ、それで粘りまくっているのか。でもあの正体不明の怪獣魔導師君は僕なので絶対正体不明なのだ。
ただ最後まで正体不明だったからクエルさんを見返すことはできないのだった。
まあ、しゃーない。
◇・◇・◇・◇
「まあ、何とか丸く収まったぜ」
翌日です。竜爺帰ってきました。そして諸々お話を聞きます。
あっ、ちなみにクエルさんは帰っていったよ。泣く泣くだった。マジ泣き。すごいなあの人。
「さて、そんじゃまずはデアネイラのことだが…」
かいつまんで言うと、デアネイラちゃんは王宮に引き取られることになった。
そして彼女の周りの人間は王家が用意することになったらしい。というわけで。
「フウカ、まずお前さんに頼みたいんだがどうだ!」
「ええー、ほんとにいいんですか~。任せてください。無茶苦茶頑張りますよ~」
フウカ姉が〝るんたるんた〟踊ってる。デアネイラちゃんを抱っこしたまま。彼女もなんか楽しそうだ。いいお姉ちゃんになるだろう。
デアネイラちゃんがオッパイで圧殺されなければ。うん。
まあ、ちっちゃい子はオッパイ大好きだからな。
「役職はこのジジイの代理だ。デアネイラの治療、ケアのために大医王の名代としてあらゆる…とまではいかないがかなり広範な権利をもぎ取ってきた。
身の回りの世話と、護衛がメインだな。
お前さんの目から見てダメなやつはのして構わない。
デアネイラが心身ともに傷を負っているのでノヴァ公爵家の預かりになって、治療と育成を第一に考えるというのが名目だ。
なのでお前さんの指示が一番になる。
ごちゃごちゃいうのもいるだろうが構わんからぶっ飛ばせ。責任は儂とこいつがとる」
「おい、勝手に何ぬかしてやがる。
まあ、その通りだがよ、こと、治療に関しては国王だろうが勝手はさせねえのが家の方針だ。好きにやれ、お前なら心配ないだろう。
あと家から気の利いたやつを何人か連れていくと良い。さすがにお前一人で全部をやるのは無理だろうからよ」
竜爺と爺ちゃんの台詞にフウカ姉が神妙にお礼を言っている。さすがにこんな時まで間延びした喋りかたしてないな。ていうか普通に喋れたんだ。
これで俺の頭の重みも…
「そうだ、しばらくリウたんと会えなくなるから、リウたん成分を補充しておこう」
フウカ姉はデアネイラちゃんを膝に抱いて、椅子に座り、僕を足の間に座らせてわざわざおっぱいを僕の頭にのっけた。
重たいっちゅうねん!
《さすがオッパイお化けですよー》
「じゃあ、ネフェルさんはどうなったんです?」
「あれは現状維持だな。
というのも今回の討伐作戦で、リュメルクローテ公爵が功績を上げたんでな、失敗したらそれを理由に離婚させて降爵というのを考えていたんだが、そうもいかなくなった。
まあ、もともとあいつもお姫様でな、基本社交以外のことは何もしねえ、ぶっちゃけ子供も産みっぱなしであとは家人に丸投げで、めったに会いもしなかったようだから、大勢に影響はなしだな。
公爵家も今回のことで命数をつないだわけだし、どういうわけか夫婦仲も悪くないんだ… まあ、今回のことで少しは考えてくれるといいんだが…」
「スィームルグの話はどうしたんだよ」
「それがまた難しい話でな」
ウェザレル伯爵領における魔物の氾濫はとにもかくにも鎮圧された。大局的に見れば原因は僕らが倒したスィームルグが原因で、遠因はそれを襲ったタタリなので、リュメルクローテ公爵家のやったことは場当たり的な対応だったんだけど、それでも町を魔物の群れから守ったことは間違いない。
評判は良くなったわけ。
それに証拠となるべきスィームルグの死体はタタリのせいでなくなってしまった。
「卵じゃ証拠にならんからな」
孵りもしない(と思われている)卵が転がっていたところでドラゴンがいた証拠にはならないのだ。
それに勇者のバフが思いのほか役に立ったのも事実。
確かに勇者は勇者だったのだ。と、王様たちも認識を改めたのだとか。
王家にはあわよくば。と言った思惑は、確かにあったのだと思う。だが、勇者が、まあ、たぶん、おそらく、勇者として期待できるというのであれば少し方向性が変わってくる。
こうなるとどうしてもリュメルクローテ公爵が邪魔になるのだけど。
「あいつは勇者を利用して自己の利益を図ろうとしている。これは勇者の使いかたとしては完全に邪道だ。
何とかしたいが勇者の父親だ。
勇者の能力を考えると無理矢理引き離してうまくいくのかというとなかなかな…」
うむ、なかなか難しい問題だね。勇者という存在は、それだけ大事ということだろう。予言とかあるわけだし。
「だが、公爵にまるっと任せるのもまずいのでな。現在、勇者とその周辺戦力をどう扱うかを、王家と公爵家で折衝中なのさ」
「公爵家としては主導権を王家には取られたくないだろう。
だが勇者を要する以上、この国の魔物災害に対して対処しないわけにはいかない。
それには莫大な金が必要ってわけだ。
今回の作戦でも、公爵家はかなり大きな出費を強いられているからな。
それが嫌なら国がお金を出してもいい。だがその場合は当然主導権は完全に国のものになる。
それは公爵家が勇者を手放すということと同義だ。
リュメルクローテ公爵としてはこれは絶対に認められないことだろう」
まだ折衝中で答えは出ていないのだが、勇者とその部下は公爵家の所属として、王家から支援を出し、その代わりにある程度口を出す体制を作る。
そしてどしどし魔物を退治させるのだ。
というのが落としどころではないかと、竜爺は言った。
「それに今回の派兵で、公爵家は派閥のほとんどを失っている。
いや、実際構成員がなくなったわけではないんだが、連中が我が身可愛さに逃げ出したことで派閥が完全に形骸化している。
それにこいつらに関しては魔物に背を向けて逃げ出したわけだから、王国としても勇者の行動に口を出させない理由にはなる。
今までは派閥の総力を結集して、勇者の教育をすると主張していたわけだが、もうそんな言い訳は通用しない。
勇者の教育という権利と、勇者隊の行動の決定権の、ある程度を把握できたので、王国としては御の字というわけだな」
今回の作戦はそれなりに成果があった。と、竜爺は満足げに顎をさすった。
でも爺ちゃんが突っ込む。
「だがそれだけじゃねえだろう。
勇者はまだ子供だ。そして公爵家は何があっても勇者を失うわけには行かない。消耗するのは公爵家だ。
おまけに公爵家は、勇者に対する影響力を維持しようと思えばどんどん部隊に金をつぎ込ま無いといけない。
金を出さなきゃ主導権が王家の方に傾くんだ。
そしていざとなれば勇者だけは保護する。
国王の考えそうなことだ」
じいちゃんのツッコミを竜爺はふふんとわらって流した。
どうやら王様というのもなかなか曲者みたいだね。
だけどこれで一つの方向性はでたみたい。
僕たちは、というかフウカ姉たちみたいにかかわりのある人たちはパタパタと準備にかかった。
そして僕が村に帰る日も近づいてくる。
そうだな、もう一回冒険者ギルドに行ってこようか。
でも、その夜なんか変な夢を見た。
うん、良い考えだ。
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