転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ

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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第19話 異変の始まり

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第19話 異変の始まり


 さて、このシッポタヌキ、なにがけったいかというと尻尾がけったいだった。
 ボディは狸なのよ、普通に。
 そんで尻尾も狸なのよ。ちょっと変わった。  

 どういうことかというと尻尾が胴体よりも一回りぐらい大きくて、しかも模様のせいか狸のように見えるというね。
 しかもそれが三本も生えている。

 つまり見た目は一匹のタヌキのおしりに三匹のタヌキがくっついているように見えるのさ。
 おしりの所を中心に、四方向に狸がいて、『本物はどーれだ?』みたいな感じ?
 しかも。

《これはある種のトカゲと同じで自切できる尻尾ですよー、尻尾を置いて逃げるですよー》

 ということらしい。
 まあたぶんそんなことなんだろうとは思った。  

 でも触ってみるとシッポは芯が通っているだけで、狸に見える部分はすべて毛で出来ている。しかもものすごく上質な毛ですっごいフサフサ。

 しかも風が吹くとさわさわと動いて狸が動いているというか蠢いているようにも見えるのだ。
 確かにこれなら尻尾を切り離せば敵の注意を引き付けられるかもしれない。

《しっぽを切ったばかりだと、自分でうねうね動くですよー》 

 そう言う機能まで! なお、リアルだね。

 でもそのシッポ。芯があるだけなのでまとめるとぐぐっと小さくなる。 

 行動を阻害することはないわけだ。
 多分そういう方向に進化した魔物なのだろう。  

「あの…、尻尾ももらっていい?」  

「どうすんだこんなもん?」 

 振り回して遊ぶのか?
 それともドッキリにつかうのか?   

「売ると高く売れる」  

「ああ、手触りいいもんな。
 分かったいいぞ、もってけ、仲良く分けろよ。
 喧嘩したらクソムシに逆戻りだぞ」  

 さて、解体だ。  

 シッポは根元から切り落とす。
 偽狸が三匹。  

 足を縛って吊りなおしてこれから本格的に解体である。
 教わったよ。 

 まず首を斬る。 

 スパッ! 
 ボトっ! 

「ひぃっ」

 むむっ、この程度で悲鳴を上げるとは軟弱な。 

「よっ、よくきれるないふですね…」 

 ああっ、なるほど、ナイフの切れ味に驚いていたのか、まあ、アダマンタイト製だからな。 

《たぶん違うですよ~》 

 ここからは苦手な人は読まなくてOKだよ。 

 まず手順の説明だね。
 一番、血抜き 
 二番、内臓の処理
 三番、皮はぎ
 四番、解体
 の、順番だ。

 じゃあまず一番の血抜きから。

 血抜きをしないとお肉が生臭くなったりするみたい。これは生物の体の中のもので血が一番腐敗しやすいからなんだって。
 本当はまだ心臓が動いているうちに血抜きをしないとうまくいかないのだけど、今回はナイフの投射で一撃必殺してしまったので最初からご臨終だったから仕方ない。

 それでも木につるしてできるだけ抜きました。あと操魔でぎゅっとして少し頑張りました。
 これが今回の精一杯。

 ここがもし地球だったら、川とか池に放りこんでしばらく冷やさないといけないのだけど、まあそうする人もいるのだけど、ここは魔法の世界だから魔法で代用してしまうケースもある。
 僕も当然、操魔の冷却で全体をヒンヤリする。
 そしたら次は内臓の処理だ。 

 まず、初めに胸から股間までを切開し、胸骨と骨盤を切断します。切り開いた部分から内臓を取り出し、鮮度が良ければ心臓とか肝臓とか食べることもできます。
 でも今回はめんどくさいから全部廃棄。それにこの動物に関するデータがないから無責任なことできません。 

 内臓を取り出して綺麗にしたら次は皮の剥ぎ取りだね。

 足首の所を丸く切って、さらに縦に切り込みを入れ、そこからベリベリと剥がす感じで皮を剥ぎ取ります。
 皮と肉の間に刃を当てて削いでいく感じだね。 

 僕一人でやるのは大変なので、もちろん操魔も総動員します。

 魔素はエネルギーで、それ自体が力場を発生させるので、対象となる毛皮のいたるところに力の作用するポイントが発生するような感じになるんだ。
 大人数で適切な方向に引っ張りながら作業する感じかな。すごくやりやすい。 

 そしたら最後は解体。つまり枝肉に切り分ける作業だよ。ただこれは解説するとちょっとグロくなるから割愛しましょう。 

 というわけで無事、お肉と呼べる枝肉が完成しました。 

 以上。解体終了。
 ここまでね。

「すげー、皮って簡単に剥げるんだー」

「にくうまそー」

「薬草も取れたしはやくかえりてー」 

 うん、さすがこの世界の子供。動物の死骸は死骸じゃなくてお肉です。

 そしてじっと僕を見ています。

 一部誤解が発生したような気もするけど、まあそこまでは知らないよということで。 

「ではとりあえず今日の授業はここまでである。各自肉お持ち帰り、しっかり食って力をつけること。
 以上解散」 

「「「「「軍曹殿、ありがとうございました」」」」」 

 そう言うと子ども冒険者たちは、肉と薬草と毛皮と素材を担いで喜び勇んで町に帰っていった。
 大人冒険者ほったらかしだね。

 いいのか? まあいいか。

 ◇・◇・◇・◇ 

 僕も『ドムドム』しながら家に帰りました。当然僕の方が早いです。
 でも脱走がばれました。
 なぜって、『ニジリュウノツカイ』を出したから。 

「じいちゃん、これいる?」

 は、我ながらなかったと思う。うん、失敗失敗。 

 そんでちょっとは怒られたんだけど、魔塔の魔法使いたちはすごかった。
 石膏版みたいなもので綺麗に型を取り、あっという間に彩色し、立体的な魚拓? を作ってしまった。
 記念品だってさ。

 そしたら次はあっという間に解体し、ニジリュウノツカイは食材にクラスチェンジ。

「ここが一番うまいんだぜ」 

 とか言いながらその日は、なんとお寿司パーティーになった。

 こっちの方ではお寿司とは言わないんだよね。こういうにぎり寿司は『エドマーエ』って言うんだってさ。
 多分江戸前だと思う。

 いろんなネタが用意されて、盛大なお寿司パーティーを満喫した僕だった。
 うわーん、ご飯だー。お寿司だーっ。うれしーっ。

 あれ、そういえばこいつら魔法使いじゃなくて医者じゃなかったか? 

 ◇・◇・◇・◇  

 お腹いっぱいになって、お風呂にゆっくり浸かって、温泉旅行気分でゆっくり休んだ次の日は微妙な喧騒で目が覚めた。 

「あっ、リウたん、起きたんだ」 

 パタパタとフウカ姉ちゃんがやって来た。
 その腕には、デアネィラが抱かれている。 

「おはよう」

「おあよう」(byデアネィラ) 

 デアネィラも昨日、初めてのお寿司をいっぱい食べて、うれしそうにしてたね。
 その後いつもどおりフウカ姉ちゃんと一緒に寝てた。
 フウカ姉ちゃんはおっぱいが大きいからデアネィラちゃんは大好きです。
 最近はいつも穏やかで幸せそうにしているのがとてもいいと思います。 

 うれしそうに手を伸ばしてくるのでフウカ姉ちゃんから受け取ってコアラ抱っこ。 

「姉ちゃん騒がしいけど何かあったの?」 

 フウカ姉ちゃんは眉をひそめた。 

「私もまだはっきりとわからないんだけどー、冒険者ギルドの方で何かあったみたいなのよねー
 夜のうちに緊急の治療依頼があって、それが結構ひどいみたいで医療チームが組まれて、運び込まれてきた冒険者たちの治療が行われているみたいなのー」 

「へー、なんか強いのでも出たのかな?」 

「うーん、結界があるからそんなはずないんだけどなあー」 

 あーそうか、結界があるからあまり強いのは近くに来ないんだった。
 じゃあ一体何なんだろう。 
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