転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ

文字の大きさ
上 下
34 / 57
第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第14話 露見

しおりを挟む
第14話 露見


「で? どうなんだ?」

「はっ、はひ」

 マシス爺の一睨みでちょっと年配のお弟子さんがガタガタ震えながら変な声を上げたよ。完全なヤンキーだね。

 ちなみにお弟子さん。ギアトロスさんという人で、一言で言うと爺ちゃんの高弟というやつらしい。高弟っていうのは弟子の中で特に優れた人たちのことね。
 ただまあ、腕が良ければいいというものではないという感じ。
 つまり研究バカなタイプみたい。

 僕が連れてきた女の子はデアネィラという名前だった。五才だった。
 そんでもって竜爺の曾孫なんだって。
 そんで身分の高い貴族なんだって。

 てことはつまり竜爺も貴族なわけだ。武術バカにしか見えないけど。自分より強い相手に会いに行っちゃうタイプ?
 普通貴族ってドラゴンに喧嘩売らないだろ?

 その竜爺がすっごく怒ってる。デアネィラちゃんのことをすっごくかわいがってたんだってさ。
 でも貴族ってのは面倒くさいことがいろいろあって、溺愛していてもめったに会えないんだって。だからなおさら怒ってる。

 マシス爺ちゃんに事情を説明して診察してもらった結果、日常的に暴力を振るわれていたらしいことが分かりました。
 あざや打撲はもちろん、骨にひびが入っているところまで見つかった。

 なので竜爺は怒り狂いました。
 マシス爺も怒り狂いました。
 僕も当然怒りました。でも押さえました。デアネィラちゃんがおびえたからね、とりあえず抱っこ。

 そして、さあ、これからどうしようかと言っていたところに通りかかったのがギアトロスさん。間が悪い人だ。

 圧迫面接の始まりです。
 なぜならデアネィラちゃんのお家に診察に行っていたのが彼だったから。

 なんでも公爵家だそうで、当然お抱えの医師とかもいるらしいんだけど、なんか特殊な家だそうで、年に2回、マシス爺ちゃんの高弟が診察に出向いていたんだそうな。
 つまりこの子も本当は彼が診察して、虐待はとうに発見されていないといけなかったということ。

「その、エーリュシオン殿は毎回ちゃんと診察しておったのですが…姫様に関しましては、信頼できない医師の診察を嫌がるということで、公爵家の典医殿がちゃんと毎日診察をして問題ないからと…」

 うん、ギアトロスさん、ただのダメな子ではなかった。最初はちょっとビビってたけど、落ち着いたらちゃんと状況を説明してます。
 ぶっちゃけギアトロスさんの仕事はエーリュシオンという人の診察であって、これがメイン。他はおまけと言うと語弊があるけど、まあどうしてもというわけではない。

 つまりそのエーリュシオン氏が監視対象なようだ。

 となるとデアネィラちゃんを診てなかったというのは一概には責められない。

「ただ、迂闊の誹りはまぬかれないな、エーリュシオンの状況把握が確かにお前の仕事だがよ、周りの人間の健康も把握しておくべきだった。
 まあ、話を聞くとその典医もグルだろうから、見せたくなかったんだろうが…となると…」

「どうせルーザー《あのくず》が手を回したのだろうよ!!」

 竜爺激怒《げきおこ》! テーブルご臨終。

「だからわしは反対したのだ、あんな小物に!
 だが、あれもあれだ!」

 デアネィラちゃん、僕に抱き付いてねんこしちゃいました。
 うるさくないように空気の振動を少し軽減しましょう。どうも周りがみんなエキサイトしているからね。

 そしてさらにメンバーが増えた。

「マシスさま、フェネル・ルーザー公爵夫人が至急お会いしたいと…」

 取次にきたお弟子さんの言葉はそこで途切れた。後ろから女の人が飛び込んで来たから。
 かなり慌てているみたい。

「マシス殿、一大事です、娘が、デアネィラが、さらわれたと…お願いです、お力を貸してください」

 かなりきれいなお姉さんだね。
 髪の色は金色で、瞳の色はエメラルド。デアネイラちゃんと同じ色合いだね。
 当然デアネイラちゃんのママなんだろうけど、この国のお母さんはみんな若いな。ちょっとおばさんとは言いにくい。
 彼女はひたすらマシス爺ちゃんだけを見ていて他の人には注意が行ってない。すぐ近くで僕が当の本人を抱っこしているのに全然儀つかない。

 というか活火山みたいに怒気を噴出している竜爺にも気が付かない。鈍いのか?

 でもさすがにその人も…確かフェネルさんといったっけ?
 空気がおかしいことに気が付いたみたい。爺ちゃんが呆れたような眼で見てたしね。

 そんで周りを見回して、僕にというか僕が抱っこしている女の子に気が付いた。
 はい、顔にいっぱい疑問符浮かんでますね。

「なんで? どうして? どういうことです?」

 そう言ったかと思うと僕の方に突進。
 もちろんそれを許したりはしないんだぜ。虐待の犯人が誰か判明《わ》かってないからね。

 フェネルさんは水の塊にでも突っ込んだかのように思うように進めなくなって、そして『なんでどうして』と声を荒げる。

 この状況に終止符を打ったのは竜爺だった。

「いいかげんにせんか! このバカ者が!!」

 うん、雷が落ちるというのはこういうことを言うのだ。

「ふにゃ?」

 さすがに消音結界もこの怒号は消せなかった。
 デアネィラちゃんが目覚めました。
 そして僕を見てにへっと笑う。

 うん、かわいい。

 あっ、フェネルさんも竜爺の拳骨を食らってうずくまってるね、これもちょっとかわいいかも。
 女の子みたいなおばさんだ。

◇・◇・◇・◇

 当然フェネルさんがデアネィラちゃんのママということは、竜爺の孫なわけだ。
 〝おじいちゃん〟とか言ってたから間違いない。

 そのフェネルさんは現在気絶中。
 竜爺の拳固…のせいではなく、デアネィラちゃんの症状を知らされたショックで。
 おでこに手を当てて『ふ~~~っ』とか言って倒れた。初めて見たよ。

 マシス爺ちゃんがフェネルさんの前で、デアネィラちゃんの診察をして、治療もしたのだ。このために治療を先延ばしにしたらしい。
 うーん、確かに必要なことなのかもしれないが…ちょっと厳しいね。

 そして現在この部屋には他の人もいる。
 デアネィラちゃんのお守をしていたおばさんと、護衛の騎士たちだ。
 どういう状況だったかというと、彼らは入ってくるなり。

『こいつです、こいつが姫様をさらった犯人です』

 とか叫んで飛び掛かってきた。
 いやまあね、立場的にいろいろまずい状況なので、僕のことを捕まえなきゃと思ったのかもしれないけど、状況が全く見えてなかったね。
 三人はあっという間にジジイ二人に軽くなでられて行動不能になりました。

 何、こいつら、むっちゃ弱いんだけど。

 さすがにこれ以上は子供の見るものじゃないということで僕とデアネィラちゃんは別の部屋に。仕方ないのでおとなしく退去しよう、表向きは。

『いけ、しーぽん、スパイ活動だ!』

《らじゃーですよー》

 スパイ衛星しーぽんが起動した。

◇・◇・◇・◇

 はい、こちらしーぽんですよー。状況を報告するですよー。
 あっ、リウ太、ワチシに内緒で美味しいもの食べてるです。ずるいです。とっておくですよー。

 おっと、状況が動いたです。
 ママさん目を覚ましたです。ヒステリーです。たけり狂っているです。子守のおばさんが張り飛ばされたですよー。

「たわけたことを! 四六時中デアネィラのそばにいて、あの子の世話をしているそなたが気づかないはずがないでしょう!」

「おっ、奥方様、わたくしは本当に、あの子供です。あの子が姫様をさらったときにぼうりょくを……ひいっ!!!」

 おばさんがリウ太に罪を擦り付けようとしたデス。
 死刑確定デス!
 この野郎ただじゃおかねえですよー、一丁やったるかーですよー…ひぃっ

 竜爺からなんかものすごく恐ろしいオーラが漏れているですよー。超怖いですよー。
 おばさんも一瞬で真っ青を通り越して真っ白になったですよー。しかもあっという間にやつれたようになったですよー。

「よう、ばばあ」

 マシスジジイ(老人)にアラサーの女の人がばばあと呼ばれたです。何かが間違っているような気もするですよー。でもいいきみですよー。
 ばばあにはもう抵抗する力は残って無かったですよー。
 マシスジジイはチビお嬢(デアネィラ)に対するいじめを知っていたか聞いたです。
 もう返事をする気力もなかったばばあはカクカクと頷くです。

 ついでに後ろで巻き込まれた騎士たちもカクカク頷いたです。共犯ですよー。

「そんでよ」

 ジジイが斜《はす》に構えてグラサンでぎろりとねめつけるです。かっこいいですよー。

「あんなチビ助に暴力ふるっていやがったクズ野郎はどこのどいつだ? ああん?」

 でも今度はしゃべらなかったです。
 より血の気が無くなって、ずん黙っているですよー。

「ははん、てめえら喋ると命がねえと思ってやがるな。
 安心しろや、しゃべらなくても主君の姫君の虐待に加担したんだ、死罪は間違いねえ。
 犯罪者として死刑台だあぜ、残された家族はさぞかし泣いて喜ぶだろうなあ…」

「ひいぃぃぃぃぃぃっ」

 ジジイの精神攻撃炸裂ですよー、もっとやれやれですよー。

「お、お助けください、家族だけは、家族だけはーーーーっ。
 ご当主様に黙っているように命じられたんです、子供の悪ふざけだからと…
 姫様を殴っておいでだったのはエーリュシオン様ですーーーーーーーーっ」

 わっと泣き崩れたです。身も世もない様子で地面にダイブですよー。

「そんなバカな…」

 そしてもう一人、エーリュシオンという名前を聞いて驚いて立ち上がった人がいたです、ママさんです。
 ママさんはしばらく地面に身を投げ嘆くばばあをみて、それが事実なのかもと認識したですよー。そして『ふうっ…』とまたぶっ倒れたです。
 現実逃避ですよー。収拾がつかないですよー。

 そもそもだれですよー? エーリュシオンって!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

元魔王おじさん

うどんり
ファンタジー
激務から解放されようやく魔王を引退したコーラル。 人間の住む地にて隠居生活を送ろうとお引越しを敢行した。 本人は静かに生活を送りたいようだが……さてどうなることやら。 戦いあり。ごはんあり。 細かいことは気にせずに、元魔王のおじさんが自由奔放に日常を送ります。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』~リエナIf~異世界を救って帰還したら聖女がついてきたのでイチャコラ同棲して面倒をみようと思います。

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
ファンタジー
◆1行あらすじ 異世界を救った勇者(元陰キャ)が、ともに戦った可愛い聖女と地球に帰還して甘々ラブコメしつつ学校などで無双します。 ◆あらすじ  織田修平は学校カースト底辺の陰キャ男子高校生。  修平はある日突然、異世界『オーフェルマウス』に召喚され、召喚した神官リエナとともに5年をかけて魔王を倒し、世界を救った。  そして地球に帰還する瞬間、なんとリエナが一緒に着いてきてしまったのだ――!  修平は鍛え上げた身体能力や勇者スキルによって学校で大活躍。  家でも学校でも好意を寄せてくるリエナと甘々ライフを送ります。  (一緒に寝たり、遊園地で甘々デートをしたり)  ついでにこの世界までやってきた魔王も、勇者の力で余裕で粉砕! ――――  本来は異世界に残り負けヒロインルートをたどるはずのリエナが、最初の段階で着いてきてしまった「もしも」のストーリー。  つまりリエナがヒロインバージョンのリスクールです。  これ単体で完全に完結した1つの物語になっています。  でも本編とリンクしたシーンも所々ありますので、本編を読んでからの方が「ああこれはあのシーンね!」と少しだけニヤリとできるかと思います(*'ω'*)b 本編である 『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』はカクヨムなどで連載しています。

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。 タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。 小説家になろうでも公開しています。 https://ncode.syosetu.com/n5715cb/ カクヨムでも公開してします。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500 ●現状あれこれ ・2021/02/21 完結 ・2020/12/16 累計1000000ポイント達成 ・2020/12/15 300話達成 ・2020/10/05 お気に入り700達成 ・2020/09/02 累計ポイント900000達成 ・2020/04/26 累計ポイント800000達成 ・2019/11/16 累計ポイント700000達成 ・2019/10/12 200話達成 ・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成 ・2019/06/08 累計ポイント600000達成 ・2019/04/20 累計ポイント550000達成 ・2019/02/14 累計ポイント500000達成 ・2019/02/04 ブックマーク500達成

処理中です...