転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ

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第二章・リウ君のそこそこ平穏な日常

第12話 ギルドでは貴族よりギルマスの方が恐れられている件について

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第12話 ギルドでは貴族よりギルマスの方が恐れられている件について


 掲示板のところまでトコトコ戻ってくるとその様子を眺める。
 コルクボードに虫ピンで依頼書が張り付けてあるみたい。ここら辺は地球と変わらないね。
 掲示板はランクごとに分けられていて、そこに貼られた依頼がそのランクで受けられる依頼ということみたいだ。

 ちなみに冒険者のランクは実質四段階。
 『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『プラチナ』の四段階。
 一番下が『見習い』ランクがあって、一番上が『アダマンタイト』になっている。んだけど、アダマンタイトは特に素晴らしい功績を立てたものに対する名誉称号みたいなもので、まあ、冒険者の能力とは直接関係がないんだ。

 父さんはプラチナで実質超一流というやつだね。
 マシス爺ちゃんはアダマンタイトだ。まあ、いろいろやってるから。

 ちなみに僕は現在『ブロンズ』だったりするのだ。
 なぜって父さんのギルドが開設してからすぐに登録して冒険者になったからね。

 見習いって3か月だけしかないんだよね、試用期間?
 この間に冒険者としてやって行くのかよく考えてね、みたいなやつだよ。

 その間にお使いイベントとか無理のない依頼をこなして、三か月後にはブロンズ昇格だね。
 そこからは厳しいけど自己責任で行くしかないんだって言ってた。
 それが冒険者、危険を冒す者なんだってさ。

 まあ、『クラン』とか言う大人数のグループを組んで助け合っている人たちもいるし、危ないばっかりでもないみたい。

《リウ太、この依頼面白そうですよ、うけるですよー》

『えー、ヤダよ、そんな暇ないじゃん』

 しーぽんが飛んで行って一つの依頼を指さす、その姿を見て僕は思わず吹き出してしまったよ。
 しーぽんの着ぐるみが怪獣みたいになってた。
 直立したワニに角と蝙蝠の羽をつけた、口の中に顔があるのはどれも同じなんだけど、一言で言うとSD怪獣王に近い。

 結構気分で変わった着ぐるみを着ていることがあるんだけど、ライオンとか河馬とか、しかしこれか、とうとう来たか。
 マジでむせった。

 まさかしーぽんがラスボスで最後に変身した僕と一騎打ちとかあるのだろうか?
 それは………それで楽しそうだ。うん。

「よう、チビ助、大丈夫か?」

「何か困っているのか?」

「おりぇたちが助けとやるぜ」

 振り返る。

「何だ子供か」

「「「「「お前の方が子供じゃん」」」」」

 ごもっとも。
 まあ、僕に声をかけてきたのはたぶん十台半ばぐらいの少年たち。子供だよね。でも僕ってば今10歳だから彼らのいうことも間違いではない。
 しかも見事にそろった突っ込み、一人カミカミだけど。それもよし。

「あははははっ、何か用ですか?」

「いや、お前新人冒険者だろ?」
「ここは先輩である俺たちが助けてやろうとか思ってさ」
「お、おりぇたち先日ぶろんずになったんだーぞ」

 ふむ、これはあれだろうか、先輩風を吹かせたい子供。と考えるべきか?

「お前みたいな貴族の坊ちゃんはいろいろ危ないからな。少し手助けしてやろうと思ってさ」
「安くしとくぜ」

 そう言うとずいっと近づいてきた。

「なんだ、集《たか》りか」

「何だとてめえ!」
「バカやめろ、護衛とかいたらどうすんだ。あくまでも優しく接してご褒美をもらうんだろ」

 ふむむっ、集りというにはちょっとつつましやかだな。
 だが残念なことに。

「僕は貴族じゃないんだ」

「「えっ、そんないい服着ているのに?」」

 それかー。

《確かに貴族っぽい格好ですよー》

 魔塔のお姉さまがたに飾り立てられた結果だ。
 ただそんなにゴテゴテはしてないぞ。地球的感覚だとちょっとしゃれた服。みたいな?
 それに、

「服と身分は…いや、大体関連してたか…いや、でもいい服を着ているのが貴族とは限らない」

《でもそれは公爵家の服ですよー》

 そう言えばそうだった。

「じゃあ裕福な商人とかかな」
「だったらなおさら好都合」
「俺たちが少し面倒見てやるから、お礼とかくれるよな」
「商人なんだな、お金持ちなんだな」

 商人がすべてお金持ちだとは思わないが…

「残念、商人でもない」

「「じゃあお前の家は何なんだよ!」」

 こうね、ペアを組んで交互に突っ込みを入れる姿勢が素晴らしい。タイミングも。
 でもちょっと騒ぎすぎたかもしれない。
 気が付けはちょっとガラの悪そうなやつらが子供達の後ろ、少し離れたところでこちらを伺っている。

《あいつらはよくないですよー》

 としーぽんが言うのでろくでなしだろう。
 仕方ない。

「うちが何なのかというと、別に貴族でも商人でもないんだけど…僕の父さんは」

「「「「「父さんは?」」」」」

「ギルドマスターだね」

 あははははっ、みんなが一斉に回れ右していなくなった。
 おもしろーい。

 ギルドでは貴族よりギルマスの方が恐れられている件について。

◇・◇・◇・◇

 というわけで外に出ました。

《意味が分からないですよー》

 いやだって、冒険者のごついやつらが幅を利かせている所にこんな愛らしいお子さんがいたら違和感バリバリじゃん。

《自分であいらしいおこさんというです? リウ太の成長に衝撃を受けるですよー》

「いや、このくらい達観しないとあの不良老人たちの相手はできないぞ」

 僕も随分揉まれたからね、少しスレたよね。
 さて、それはさておき今の僕は冒険者、といっても町の探検だけどね。

 冒険者ギルドは町の中心街にあって、周りは常に人であふれている。
 冒険者がよく出入りする所なのでそれ用のお店、武器屋、防具屋、食料品店、衣料品店、医薬品店なんかが周辺にいっぱいある。
 あと宿屋街でもある。

「鍛冶屋とかはないのかな?」

《職人さん街は別の所に固まっているです、鍛冶屋とか錬金術屋とか汚染物質が出るですよー》

 マジか!
 当然か!

「でもお店だって面白いよね」

 ウインドウショッピングは嫌いじゃない、嫌いじゃないぞー。
 それにいろいろな人がいて面白い。

 やっぱりドワーフの人はずんぐり体形で、髪の毛や髭がいっぱいで、大概それをおしゃれに編み込んでいる。こだわりがすごい。
 あとエルフの人もいる。
 人族よりちょっと小柄で、細身で、スレンダーだ。大人でも少女みたいに見えるのだ。

 僕の村にはもともといなかったんだけど、迷宮がオープンになってからちらほらと見かけるようになってたんだよね。
 ただ話す機会はなかったからどんな人かはわからないのだ。

《基本的に魔法が得意な種族ですよー、魔力が多いです。
 腕力はないのでみんな軽戦士ですよー
 ラノベまんまです。
 でも別に火が嫌いとかはないですよ?
 火がないと料理もできないですよー》

 そらそうか。
 でもしーぽんは僕よりラノベとか詳しいよね。

《父さんのおかげですよー》

 あの神様ヒキニートだからなあ…

 あと一番面白いのが獣人《ヴェスティア》だね。

 これはもう人間より小柄の直立した動物といった感じの人たちなんだけど、実にいろいろな見た目の人がいる。
 テンテン姉はウサギ型だけど、町を歩いていると狸型とか、熊さん方とかいる。
 狸とかジ●リじゃん、熊とかテディベアだよね、あるくテディベア。

 クマ型でもまだ小さいね。
 獣人はみんな小柄なのだろうか。
 まっすぐ立って150cmぐらい。マントを羽織ってカブトを装備して腰に剣を下げているんだ。
 かっこいい。

 俺はけもなーじゃなくてよかったよ。もしけもなーの人だったら獣人の人に飛びついて人生を台無しにする感じだろう。

 ドン。

 あっ、ぶつかってしまった。
 見とれていたクマさんだ。

「やあ、すまない」

「あっ、ありがとう」

 跳ね返ってしまった僕に手を差し伸べてくれる。
 さわやか系の熊騎士だな。
 あっ、ちなみにちゃんと服も来ているよ。毛皮とかも踏まえた服だけど、ちゃんと彼らには彼らの文化があるのだ。

 去り行くクマのお兄ちゃん(本当は年とか見た目で分からん)に手を振って…

 ドン、またかい。

「ふえっ」

 振り返ったら今度は女の子だった。
 なんかものすごくおびえた感じの小さな女の子。
 5歳ぐらいかな。

 あっ、ヤバイ。泣きそうだ。
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