異常な恋

のりべん

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異常

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加奈は一目惚れをした相手がコンビニから出てるくのを待っていた。

その間加奈の頭の中には、在り来たりな妄想で溢れていた。

2人は遊園地のお化け屋敷にいた。加奈は一緒に遊園地に来ていた相手の女性の手を恋人繋ぎで手を繋いでいた。

少し先に進むと急に加奈の目の前にマネキン顔が落ちてぶら下がっていた。

「きゃっ!」

加奈は咄嗟に手を繋いでいた相手の手を一旦離し、怯えるように怖がりながら腰の辺りに抱きついた。

この様な恋愛ストーリーのシチュエーションにありがちな妄想で加奈の頭の中は埋まっていた。

加奈が、少し口が緩むと唾液が垂れそうな勢いで妄想に浮かれているとコンビニの自動ドアがピロピロリンというメロディーと共に開いた。

そして自動ドアが開くと同時に人が出てきた。

加奈が一目惚れをした相手だ。待っていた時間は
2.3分程度だったが、加奈にはいつも見ている好きなアニメを1話分見た様な時間の長さに感じた。

加奈は相手の方へ向かい勇気を出して話を掛けた。
「あ、あの!先程はありがとうございました。」

すると少し笑みを浮かべながらこう答えた。

「いえいえ。結局はお金も渡していませんし。」
「そんな事より僕の顔に何か付いてますかね?」

「あ、いえ!さっきは少しぼーっとしてしまって。」

加奈は正直に一目惚れをしたと答えようとも思ったが、まだ加奈にそんな勇気はなく適当に嘘を答えた。

「そうですか。なら良かったです。」

加奈はその時、如何にか彼女との連絡手段を得るためにどうしたら良いのかを考えていた。

率直に言うか、それともこの後の予定を聞き出し一緒に出掛けませんかと誘い、仲が深まったところで連絡先を聞き出そうか、加奈はこの二択のどちらを選ぶかで悩んでいた。

「あ、あの。飴何個かありますよ僕ので良ければ。」

「くれるんですか?。」

加奈は彼女の心遣い、優しさに更に自分の心の中に好きと言う文字が増えていく。

「パイナップルの味なんですけど、えーと。」

彼女はズボンの右ポケットの中に手を入れて何かを探す様に手を動かしていた。恐らくパイナップル味の飴をポケットに入れていたのだろう。

しかし右ポケットから手を取り出したが、飴は出てこなかった。彼女は左のポケットも確認したが飴は出てこなかった。

すると彼女は何かを思い出したかの様に言った。

「部屋に置いてきちゃったかも…」

彼女には大丈夫という顔をしたが、本当は物凄い残念な気持ちになった。

加奈は彼女から貰えるものなら何でも嬉しかった。彼女の手で触れたもの、彼女が舐めようとしていた飴。それだけで彼女に少し近づけた様な気がしたからだ。加奈は自分で単純なのだろうと思う。

「ごめんなさい。飴家に置いて行ったの忘れていました。」

「いえ、本当に大丈夫ですよ。飴くらい自分の家にもあるので。」

正直飴なんか加奈にはもうどうでも良くなっていた。それより彼女がこの場にいる内にどう連絡先を聞き出すかの方が重要だった。

そうこうしている間に彼は携帯をズボンの後ろポケットから取り出し画面を見ていた。恐らく時間を確認しているのだろう。

加奈は勇気を出して連絡先を聞き出そうとしたがやはり言うのを躊躇ってしまう。

この時だけは自分の積極性や決断力のなさを加奈は恨んだ。

「ごめんなさい。友達が家で待ってるんでそろそろ行きますね。」

「あ、はい。ありがとうございました。」

彼女は携帯をズボンの後ろポケットにしまいながら加奈が行こうとしていたショッピングモールとは逆の方向へ歩いて行った。

嫌だ、行かないでほしい、そんなこと言えるわ訳もない。しかしもう2度と会うことができないかも知れない。そんなことは絶対に嫌だ。

まだ今なら間に合う距離だ。加奈はまぶたを閉じ頭の中で何かを考えて始めた。

そしてゆっくりと目を開けた。加奈は恥を捨て連絡先を聞き出すことにした。聞いた後に断られようがもうどうでもいい。このままチャンスを逃すよりは。

彼女はまだ目の届く距離にいた。正直早歩きでも間に合う距離ではあるが加奈は全力で彼女の方へ走った。

そして加奈と彼女の距離が約10mになった所で、加奈は何時もよりも2倍大きい声で彼女に声を掛けた。

「あの!!!!」

彼女は何事かと驚きながら加奈の方に体を向けた。

「あ、先程の方でしたか。何かありましたか?」

「如何しても聞きたい事があって」

「聞きたい事ですか?」

それから、6秒程加奈は顔を下に向け言葉を口にはしなかった。彼女も加奈の方を見て、加奈の返事を待っていた。

そして加奈は、もうどうにでもなれと、勢いに任せてようやく言葉を発した。

「ら、LINEを教えてくれませんか!?」

「え、LINEですか?」

「は、はい。あなたともっと仲良くなりたいんです!」

加奈はここぞと言わんばかりに積極的に攻めてた。 
自分らしくはないがそれでもいい。それで仲良くなれるのなら性格だって変えてやる。

すると、彼女が笑みを浮かべながらこう言った。

「もちろん!自分なんかでいいなら。」

「本当に?」

加奈は驚きながら再度確認をした。彼女も笑顔で頷いた。

こんな事があっていいのだろうか。少し自分らしくない事をしただけで加奈の思った様に物事が進んだ。大袈裟かもしれないが、こんなに嬉しい事はもうないかも知れないと思う程だ。

「あ、じゃあQRみせますね!」

「はい。登録しますね」

加奈はスマホを鞄から取り出してLINEを開き、そのまま自分のQRを表示して彼女に見せた。

「これです!登録お願いします!」

彼女もズボンのポケットからスマホを取り出した。

「えーと。LINEを開いてっと、これで良いかな。」

加奈のスマホに彼女がスマホを近づけQRを読み込んだ。と同時に加奈はある重要な事を忘れていることに気がついた。

まだ名前を聞いていなかった。というより加奈にそんな余裕は無かった。

だがようやく彼女の名前が分かる。もしかすると彼女のLINEの名前がハンドルネームという可能性もあったが、その時はまた勇気を出して本名を聞こうと考えた。

「西尾加奈さんって言うんですね。覚えやすい名前で可愛らしい。」

「そ、そんな。ぜ、全然そんなことないですよ。」

加奈は自分の名前を褒められただけで顔が物凄く赤くなった。

幸せだ。もうショッピングモールなんてどうでもいい。恋愛対象が女性だと伝える必要もない。
彼女とたわいもない会話をしてるだけでもそれでいい。ただ話していたい。そう加奈は思った。

そして加奈はLINEのQR表示を閉じ、彼女の名前を確認する為友達一覧を開いた。その中に新しい友達に追加されたという項目があった。

加奈は少し緊張しながらその項目を人差し指で軽く押し、彼女の名前が表示された。

しかし加奈は彼女の名前を知った瞬間、頭の中が真っ白になった。

そして間違えがないように彼女に名前を確認した。

「や、山崎 健吾さん…」

加奈は彼と出会った頃から、勘違いをしていた事が1つある。

        彼女は男性である。


次回、2章へ…
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