隣の席の女子が授業中、俺のアソコをまさぐってくるんだが。

第2話 休み時間１

　南沢《みなみさわ》那美《なみ》はここ――深見《ふかみ》高校で一、美しいとされている女子だ。

　そんな南沢だが陰で〝氷の女王〟と揶揄《やゆ》されることもある。

　というのも彼女、ませているというか冷めているというか、他の生徒とまったく関わろうとしないのだ。

　常に独り、ムスッとした表情で難しそうな本と睨めっこしている。話しかけるなオーラを纏《まと》いながら。

　正直言って彼女の普段の学校生活から温もりといったものは微塵も感じられない。

　だというのに、南沢は俺のアソコを熱くさせてくれた。一体全体どうして？

　……訊きたい。本人の口から直接訊きたい。

　けどなんて訊ねれば？

『授業中、俺の、その、陰部《いんぶ》を、触り……ましたよね？　あれはどういう意味だったんでしょうか？』

　う～ん、直接的すぎるのもあれだな。もうちょいオブラートに包んで――、

『もしかしなくても――誘ってた？　俺のこと』

　……うん、多分恥ずかしくて言えないな。というかそもそも先の件を訊くこと自体が恥ずかしいわ。

　俺は隣にいる南沢に気付かれぬよう細心の注意を払い、様子を盗み見る。

　何事もなかったかのように活字《かつじ》を目で追ってるな。

　南沢はいつもとかわらず、本を読みふけている。異性に対してエッチな行いをした後とは思えないほどの落ち着きよう。

　俺が気にしすぎているだけで、今時の高校生は授業中にアソコの一つや金〇マの二つ、こねくりまわされるもんなのか？　――いいや違う！　そんなＡ〇の設定みたいなもんが蔓延《はびこ》ってるわけがない！

　キーンコーンカーンコーン。

　と、ここで二時限目の開始を知らせるチャイムが校内に鳴り響き、

「――ほら～席に着け～」

　鳴り終わるや否や現代文の先生が教室に入ってきた。

　南沢のことは一旦置いといて、授業に集中しよう。

　ちなみに、一時限目での出来事を思い出して勃《た》ってしまっていることは秘密だ。お兄さんとのお約束だぞ？