263 / 385
第四章 女神降臨編
いつも通りの笑顔が怖いわ、オルフェンズ。
しおりを挟む
ふわりと、国王の全身から湯気が立ち上る様に、黄金色の魔力が溢れる。
と同時に、ぶわりと、つい先日思わず城の窓から逃げ出すことになった原因の、とんでもない嫌悪感が襲って来る。
そうして国王の魔力は黒曜石に吸い込まれるように消えて行き、すぐに石から金の欠片の混じった黒い魔力が一筋の光の帯となって天に昇って行く。
―――これよ!これ!!王様が石に触った時の感覚だったのね、気持ち悪い―――!!!やっぱ吐き気がひどいわ!合わないわ!いくら有難いものだったり王様だったりしても、ムリなものはムリよ!ミワロマイレは何ともないの!
「ぐっ‥‥。」
呻いてるし、真っ青になって倒れてるじゃない!王様気付いて――!!って、王様まで顔色悪っ!!ダメじゃん!
『 あ゛あ゛ あ ‥‥ ゆ る さ‥‥ ぁ 』
ここに来る途中に聞こえて来た変な声も、おかしくなってるし!
何の為か分からないけど、誰も得してないじゃない!こんなことして良い訳ないわ!それに気持ち悪すぎる!緊急事態よ!!
「やめて!!」
黒曜石に触れている国王の手の片方を引っ張って、力尽くで引き離す―――。
ひゅ ‥‥ トスッ!
わたしの頭の上、いいえ、わたしが引っ張るまで国王の頭のあった位置を狙って短刀が飛び、地面に突き刺さった。
その威力が窺えるほど深々と地面に食い込んだ、この短刀には嫌と云うほど見覚えがある‥‥。
「オルフェ!?どうしてっ?」
どうしてここに居るのか。どうして姿を隠していたのか。どうして国王を狙ったのか。色んな「どうして?」が頭の中をぐるぐる回る。
「いけませんねぇ、私の目の前でそんな無粋な真似をするのは。‥‥許しませんよ?それ以上、その手で触れるのは。」
手にした短刀の剝き出しの刃に、愛おし気に頬ずりをしながら薄い笑みを向ける美丈夫は、肩元で一括りにした白銀の髪を腰まで垂らして、いつものように、いつの間にかそこに現れていた。
「遍く地上を見守り給う、母なる月の女神の悲痛な声に導かれて参りました。桜の君はどうぞ、お下がりください。父母を苦しめるこの男の始末をつけてしまいますから。」
「お前っ‥‥いや、蓬萊の玉の枝の継承者オルフェンズよ、何故に私を狙う?」
黒曜石から手を離したデウスエクス王は、ふらりとよろけながら、それでも殺気を向け続けるオルフェンズに油断が出来ないと気を張っているのだろう。体調不良で顔を蒼白にしながらも、気丈に向き合う。
「くっ‥‥青龍の癒しが得られんのはキツイな‥‥。」
「陛下、私の力で良ければ‥‥。」
地面に未だ突っ伏しているミワロマイレが、僅かに身を起こしてデウスエクス王に黄色い魔力を放つけど、それって悪手なんじゃないかって心配になる。だって持久力の魔法を掛けても、具合の悪いところは治らないから、苦しいのを堪えて頑張れる時間が伸びるだけだと思うのよ?
「あぁ‥‥少しだけ楽になった‥‥。」
呟く国王の顔はやっぱり青白いままだ。絶対痩せ我慢よね?とってもツラそうなんだけどー!?
「王様、とにかく石から離れて!王様がこれに触っても何の利も無いからっ!オルフェも、王様が離れれば問題ないでしょ?」
「どうでしょう?憎きその男が、桜の君に触れられること自体、私にとっては不快でしかありませんがね。」
触れられる‥‥って、わたしが引っ張ってる、この状況の事よね!?まさかこんなことで王様の命が危機に陥ってるなんて嘘でしょ!
「離したっ!離したからもう良いでしょ、オルフェ!!」
「触れられた事実は変わりませんが、まぁ良いでしょう‥‥。桜の君にあまり醜いものをお目にかけたくはないですからね。」
醜いものってナニ?いつも通りの笑顔が怖いわ、オルフェンズ。
「それでは、桜の君はこのまま先程抜けてきた扉まで戻って、しばらく待っていてくださいね。」
何を考えているのか分からない。けど、不快感も消えた今は、石に触らないオルフェンズの意見に賛成だ。
「じゃあ、2人とも連れて行くわね?」
「おや、異なことを仰る。桜の君も、この男の作り出す魔力の歪みに嫌悪感を感じていらっしゃるのでは無いですか?それを無くそうと言っているのです。連れて行かれては、達することが出来ません。」
困った子だなぁーと言わんばかりの口調と表情だけど、王様を無くそうと‥‥亡くそうとしている殺害予告よね?いや、聞けませんけど!?努力のベクトルが変な方に振り切れてるわ!
「ダメよ、オルフェ!わたしの前でそんな真似はさせないからね!正当な理由もなく、わたしの前で人を傷付けることは認めないから。」
「この男が、既に人を傷付けているとしてもですか?少なくとも、今この男は桜の君の目の前で、2人の人間を傷付けているのですよ。」
口元は薄い笑みを象っているけど、アイスブルーの瞳は冷え冷えとした光を湛えたままで、殺気を微塵も消していないのが恐ろしい。
いや、それより何より、2人の人間を傷つけてるって何のこと?見た覚えがないんですけど――!?
と同時に、ぶわりと、つい先日思わず城の窓から逃げ出すことになった原因の、とんでもない嫌悪感が襲って来る。
そうして国王の魔力は黒曜石に吸い込まれるように消えて行き、すぐに石から金の欠片の混じった黒い魔力が一筋の光の帯となって天に昇って行く。
―――これよ!これ!!王様が石に触った時の感覚だったのね、気持ち悪い―――!!!やっぱ吐き気がひどいわ!合わないわ!いくら有難いものだったり王様だったりしても、ムリなものはムリよ!ミワロマイレは何ともないの!
「ぐっ‥‥。」
呻いてるし、真っ青になって倒れてるじゃない!王様気付いて――!!って、王様まで顔色悪っ!!ダメじゃん!
『 あ゛あ゛ あ ‥‥ ゆ る さ‥‥ ぁ 』
ここに来る途中に聞こえて来た変な声も、おかしくなってるし!
何の為か分からないけど、誰も得してないじゃない!こんなことして良い訳ないわ!それに気持ち悪すぎる!緊急事態よ!!
「やめて!!」
黒曜石に触れている国王の手の片方を引っ張って、力尽くで引き離す―――。
ひゅ ‥‥ トスッ!
わたしの頭の上、いいえ、わたしが引っ張るまで国王の頭のあった位置を狙って短刀が飛び、地面に突き刺さった。
その威力が窺えるほど深々と地面に食い込んだ、この短刀には嫌と云うほど見覚えがある‥‥。
「オルフェ!?どうしてっ?」
どうしてここに居るのか。どうして姿を隠していたのか。どうして国王を狙ったのか。色んな「どうして?」が頭の中をぐるぐる回る。
「いけませんねぇ、私の目の前でそんな無粋な真似をするのは。‥‥許しませんよ?それ以上、その手で触れるのは。」
手にした短刀の剝き出しの刃に、愛おし気に頬ずりをしながら薄い笑みを向ける美丈夫は、肩元で一括りにした白銀の髪を腰まで垂らして、いつものように、いつの間にかそこに現れていた。
「遍く地上を見守り給う、母なる月の女神の悲痛な声に導かれて参りました。桜の君はどうぞ、お下がりください。父母を苦しめるこの男の始末をつけてしまいますから。」
「お前っ‥‥いや、蓬萊の玉の枝の継承者オルフェンズよ、何故に私を狙う?」
黒曜石から手を離したデウスエクス王は、ふらりとよろけながら、それでも殺気を向け続けるオルフェンズに油断が出来ないと気を張っているのだろう。体調不良で顔を蒼白にしながらも、気丈に向き合う。
「くっ‥‥青龍の癒しが得られんのはキツイな‥‥。」
「陛下、私の力で良ければ‥‥。」
地面に未だ突っ伏しているミワロマイレが、僅かに身を起こしてデウスエクス王に黄色い魔力を放つけど、それって悪手なんじゃないかって心配になる。だって持久力の魔法を掛けても、具合の悪いところは治らないから、苦しいのを堪えて頑張れる時間が伸びるだけだと思うのよ?
「あぁ‥‥少しだけ楽になった‥‥。」
呟く国王の顔はやっぱり青白いままだ。絶対痩せ我慢よね?とってもツラそうなんだけどー!?
「王様、とにかく石から離れて!王様がこれに触っても何の利も無いからっ!オルフェも、王様が離れれば問題ないでしょ?」
「どうでしょう?憎きその男が、桜の君に触れられること自体、私にとっては不快でしかありませんがね。」
触れられる‥‥って、わたしが引っ張ってる、この状況の事よね!?まさかこんなことで王様の命が危機に陥ってるなんて嘘でしょ!
「離したっ!離したからもう良いでしょ、オルフェ!!」
「触れられた事実は変わりませんが、まぁ良いでしょう‥‥。桜の君にあまり醜いものをお目にかけたくはないですからね。」
醜いものってナニ?いつも通りの笑顔が怖いわ、オルフェンズ。
「それでは、桜の君はこのまま先程抜けてきた扉まで戻って、しばらく待っていてくださいね。」
何を考えているのか分からない。けど、不快感も消えた今は、石に触らないオルフェンズの意見に賛成だ。
「じゃあ、2人とも連れて行くわね?」
「おや、異なことを仰る。桜の君も、この男の作り出す魔力の歪みに嫌悪感を感じていらっしゃるのでは無いですか?それを無くそうと言っているのです。連れて行かれては、達することが出来ません。」
困った子だなぁーと言わんばかりの口調と表情だけど、王様を無くそうと‥‥亡くそうとしている殺害予告よね?いや、聞けませんけど!?努力のベクトルが変な方に振り切れてるわ!
「ダメよ、オルフェ!わたしの前でそんな真似はさせないからね!正当な理由もなく、わたしの前で人を傷付けることは認めないから。」
「この男が、既に人を傷付けているとしてもですか?少なくとも、今この男は桜の君の目の前で、2人の人間を傷付けているのですよ。」
口元は薄い笑みを象っているけど、アイスブルーの瞳は冷え冷えとした光を湛えたままで、殺気を微塵も消していないのが恐ろしい。
いや、それより何より、2人の人間を傷つけてるって何のこと?見た覚えがないんですけど――!?
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる