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第二章 誘拐編
この茶番劇の成り行きを見守っているみたいだ。けどごめんね。
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「王子。」
「アポロニウス副会長と。なんならアポロと呼び捨てても?」
呼べるか――!!こんっっ‥‥の、こまっしゃくれた王子を誰か何とかしてー!なんて言えるわけもなく、口元だけ笑みの形をとって胡乱に見返すと、それはそれは良い笑顔が返ってきた。
「副会長!会議開始時間までは今しばらく間がありますので、ごゆるりと時間を潰していらしてください。」
「では、私も生徒会長と一緒に時間を潰すことにしよう。」
やっと落ち着いた学園生活を再開できると思ったのに、なんでこうも色々起きるんだろうね。結局わたしは教室から、王子一行とともに生徒会室に向かう羽目になった。すると、当然のように女豹ユリアンも付いてくる。生徒会室に着くと、執行部に所属していない王子のご学友達は、わたしの護衛ズと共に待機場所となっている隣室へと入っていった。
――けれど。
「いや、生徒会室には入れないからね?2人とも執行部員じゃないからね!?」
「何言ってるの?あたしは彼たちの真ん中に立つヒロインとして参加するだけで、執行部の仕事なんてするわけないじゃない。」
当然のように扉を潜って来ようとするユリアンと、それに引っ張られたカインザだけれど、いや、だからわたしの話聞いてる?ヒロインって何!?自己中な娘ってこと!?カインザも、少しくらい抵抗すれば良いのに、色々諦めた虚ろな表情でぐいぐい引っ張られるがままだし。
その時、廊下の向こうからタタタッと、軽い足音が聞こえてきた。
「お待ちになって!やっと見付けましたわ、カインザ様っ!」
「‥‥っ、メリリアン嬢!」
「やっぱり噂は本当でしたのね?」
突然の飴色サラ艶ストレート髪のお嬢さんの登場に、ようやくカインザが再起動したらしい。咄嗟にそのご令嬢の方へ一歩踏み出そうとしたものの、ユリアンにガッチリ確保されている為、その場でたたらを踏んで動きを止める。
入口で立ち止まったわたしの様子を見に来たのか、先に生徒会室内へ入っていた王子一行からギリムがこちらへやって来た。
「あのご令嬢は誰?」
「メリリアン・ジアルフィー子爵令嬢だ。以前に話した、ホーマーズの婚約者だと言えば分かるか?」
あぁ、なるほどー。それでこんな浮気現場を押さえられたみたいな状況になっちゃってるんだ。
「じゃ、あなたたちはこっちね。しっかり、お話をするべきだわ。」
こっそり腕に魔力を纏わせて、少々強引にユリアン、カインザを廊下へ押し出す。廊下には目を潤ませたメリリアンが立っている。生徒会室を振り返れば、既に執行部員が全員揃って、固唾を吞んでこの茶番劇の成り行きを見守っているみたいだ。けどごめんね。
パタン・ガチャン
「新体制での第1回会合を始めましょうか。」
しっかり鍵をかけたドアノブが、廊下側からガチャガチャ回されるけど、気にしない。って言うか、誰が開けようとしているのよ。往生際の悪い。
生徒会執行部による会議には、会長・副会長・会計・書記・庶務・広報の役職に就く生徒が出席する。会長・副会長以外の役職には各学年から選出された2名が就いていて、合計10名が会議のテーブルに着くことになる。ちなみに会長はわたしセレネ・バンブリア。副会長はアポロニウス・エン・フージュ。会計は4年のギリム・マイアロフと2年の女生徒。書記に1年の女生徒と、3年のヘリオス・バンブリアだけど今回は欠席。庶務に4年のバネッタ・ニスィアン嬢と、1年のロザリオン・レミングス。広報に2年の男子生徒と、3年の女生徒(ユリアンではない。断じてない。)。
『 だから なんでもないって 仕事だから 』
「ではまず今回の議題ですが、恒例行事となっている文化体育発表会の開催についてです。概要について庶務のバネッタ・ニスィアン様、ご説明願います。」
意外によく聞こえる扉の向こうの声を無視して会議を進めることにした。ちらりとバネッタへ視線を向けると、落ち着いた表情で小さく頷き、しっかり準備されている資料を手に取ってコホンと咳ばらいをする。
『 あたしは 本気よ みんな あたしに 夢中なのは 仕方ないでしょ! だって ヒロインになれる 力を持った あたしは 特別なんだから 』
「えぇ、承りましたわ。特に1学年の役員の方はよく聞いてくださいませ。文化体育大会とは新入生や編入生の皆様も学園に慣れて来たこの時期に行われているものであり――。」
『 はっきり おっしゃってください! カインザ様の 本心を お聞かせください! 何のお返事も いただけないのは どういう事なのですか 』
「全学園生を、学年や講義の教室分けには拘らないグループに分けて、全学園生での親睦を図るとともに――。」
『 分かりきったこと 聞かないでよ! 好きとも 何とも思ってなんかない 他人と仲良く なんて 出来る訳ないじゃない。 』
「他者を尊重し、組織、人とのつながりを学ぶため――。」
『 あたしが 中心なの! ちゅ・う・し・ん! ヒ・ロ・イ・ンなのよ 黙ってなさい 』
「――っ!あなたこそお黙りなさい!!」
あぁー、バネッタがキレちゃった。
「アポロニウス副会長と。なんならアポロと呼び捨てても?」
呼べるか――!!こんっっ‥‥の、こまっしゃくれた王子を誰か何とかしてー!なんて言えるわけもなく、口元だけ笑みの形をとって胡乱に見返すと、それはそれは良い笑顔が返ってきた。
「副会長!会議開始時間までは今しばらく間がありますので、ごゆるりと時間を潰していらしてください。」
「では、私も生徒会長と一緒に時間を潰すことにしよう。」
やっと落ち着いた学園生活を再開できると思ったのに、なんでこうも色々起きるんだろうね。結局わたしは教室から、王子一行とともに生徒会室に向かう羽目になった。すると、当然のように女豹ユリアンも付いてくる。生徒会室に着くと、執行部に所属していない王子のご学友達は、わたしの護衛ズと共に待機場所となっている隣室へと入っていった。
――けれど。
「いや、生徒会室には入れないからね?2人とも執行部員じゃないからね!?」
「何言ってるの?あたしは彼たちの真ん中に立つヒロインとして参加するだけで、執行部の仕事なんてするわけないじゃない。」
当然のように扉を潜って来ようとするユリアンと、それに引っ張られたカインザだけれど、いや、だからわたしの話聞いてる?ヒロインって何!?自己中な娘ってこと!?カインザも、少しくらい抵抗すれば良いのに、色々諦めた虚ろな表情でぐいぐい引っ張られるがままだし。
その時、廊下の向こうからタタタッと、軽い足音が聞こえてきた。
「お待ちになって!やっと見付けましたわ、カインザ様っ!」
「‥‥っ、メリリアン嬢!」
「やっぱり噂は本当でしたのね?」
突然の飴色サラ艶ストレート髪のお嬢さんの登場に、ようやくカインザが再起動したらしい。咄嗟にそのご令嬢の方へ一歩踏み出そうとしたものの、ユリアンにガッチリ確保されている為、その場でたたらを踏んで動きを止める。
入口で立ち止まったわたしの様子を見に来たのか、先に生徒会室内へ入っていた王子一行からギリムがこちらへやって来た。
「あのご令嬢は誰?」
「メリリアン・ジアルフィー子爵令嬢だ。以前に話した、ホーマーズの婚約者だと言えば分かるか?」
あぁ、なるほどー。それでこんな浮気現場を押さえられたみたいな状況になっちゃってるんだ。
「じゃ、あなたたちはこっちね。しっかり、お話をするべきだわ。」
こっそり腕に魔力を纏わせて、少々強引にユリアン、カインザを廊下へ押し出す。廊下には目を潤ませたメリリアンが立っている。生徒会室を振り返れば、既に執行部員が全員揃って、固唾を吞んでこの茶番劇の成り行きを見守っているみたいだ。けどごめんね。
パタン・ガチャン
「新体制での第1回会合を始めましょうか。」
しっかり鍵をかけたドアノブが、廊下側からガチャガチャ回されるけど、気にしない。って言うか、誰が開けようとしているのよ。往生際の悪い。
生徒会執行部による会議には、会長・副会長・会計・書記・庶務・広報の役職に就く生徒が出席する。会長・副会長以外の役職には各学年から選出された2名が就いていて、合計10名が会議のテーブルに着くことになる。ちなみに会長はわたしセレネ・バンブリア。副会長はアポロニウス・エン・フージュ。会計は4年のギリム・マイアロフと2年の女生徒。書記に1年の女生徒と、3年のヘリオス・バンブリアだけど今回は欠席。庶務に4年のバネッタ・ニスィアン嬢と、1年のロザリオン・レミングス。広報に2年の男子生徒と、3年の女生徒(ユリアンではない。断じてない。)。
『 だから なんでもないって 仕事だから 』
「ではまず今回の議題ですが、恒例行事となっている文化体育発表会の開催についてです。概要について庶務のバネッタ・ニスィアン様、ご説明願います。」
意外によく聞こえる扉の向こうの声を無視して会議を進めることにした。ちらりとバネッタへ視線を向けると、落ち着いた表情で小さく頷き、しっかり準備されている資料を手に取ってコホンと咳ばらいをする。
『 あたしは 本気よ みんな あたしに 夢中なのは 仕方ないでしょ! だって ヒロインになれる 力を持った あたしは 特別なんだから 』
「えぇ、承りましたわ。特に1学年の役員の方はよく聞いてくださいませ。文化体育大会とは新入生や編入生の皆様も学園に慣れて来たこの時期に行われているものであり――。」
『 はっきり おっしゃってください! カインザ様の 本心を お聞かせください! 何のお返事も いただけないのは どういう事なのですか 』
「全学園生を、学年や講義の教室分けには拘らないグループに分けて、全学園生での親睦を図るとともに――。」
『 分かりきったこと 聞かないでよ! 好きとも 何とも思ってなんかない 他人と仲良く なんて 出来る訳ないじゃない。 』
「他者を尊重し、組織、人とのつながりを学ぶため――。」
『 あたしが 中心なの! ちゅ・う・し・ん! ヒ・ロ・イ・ンなのよ 黙ってなさい 』
「――っ!あなたこそお黙りなさい!!」
あぁー、バネッタがキレちゃった。
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