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第二章 誘拐編
狙われていたのはわたしで、ヘリオスは巻き込まれただけだと!?
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「ヘリオスお坊ちゃまの乗られた馬車が何かに巻き込まれて‥‥つい先ほど、使用人と馬車だけが帰宅致しました。――お坊ちゃまの行方が、誰も分からないんです!」
帰宅してすぐに侍女頭メリーからもたらされた言葉に、頭の中が一瞬真っ白になりつつ、それでもただ茫然としていても何も現状は変わらない、と頭をブルブルと振って気持ちを切り替える。
「メリー、落ち着いて。ヘリオスはきっと大丈夫だから。大切な弟ですもの、わたしがしっかり鍛えているから。だから今わたしたちが出来ることを考えましょう?このことはお父様やお母様にはもう伝わっているのかしら。」
顔色を無くし、震えるメリーの両腕に手を添えて、大丈夫だと伝えるように正面から視線を合わせてにっこりとほほ笑む。すると、動揺していたメリーも落ち着きを取り戻したのか、ぽつぽつと話し始めた。
「旦那様は商談のため3日間はお戻りにならないと仰っておられました。奥様は朝から商会本店に行っておられて、お戻りになるのは夜遅くなってからと伺っております。」
「そう、ならお父様、お母様へのご報告はまだなのね。なら、屋敷の警備から1人回すから、今日の侍女当番のディスキンに、お母様への報告をお願いするわ。すぐに手紙に内容をまとめるから、メリーはレターセットとディスキンへの指示を宜しく。」
「かしこまりました!」と、ぱたぱたと小走りで屋敷の奥へと消えていくメリーを見送る。
うん、さすがメリー!こんな時でもしっかり切り換えての仕事が早くて凄いわ。さて次は警備員の手配と、戻った者からの事情聴取をしながらの報告書作成っと。
「セレネ嬢、こんな時こそ頼りになるお兄さんの力が借りたいなぁーとか思ったりしない?」
「借りは要りませんよ、ハディス様。何の話ですか?」
「あぁ、うん分かった。」と半笑いで若干肩を落としたハディスは何が言いたいのか分からないけど、そこに拘っている暇はない。父母が居ない今、自分がバンブリアの代表として家人の指揮を執り、ヘリオスの対策を取らなければならないんだから。
「ヘリオスと一緒に馬車に乗っていた人の話を聞きたいわ!いつもの小父さんが一緒のはずよね。小父さんはどこ?怪我はしていないかしら。」
馭者の小父さんがいつも詰めている使用人部屋の一つに向かおうとしたところで、小父さん自身がこちらへ慌てた様子で駆け寄って来た。いつも優しい笑顔の小父さんが、今は自身の御する馬車からヘリオスが消えた異常事態に動揺し、こちらも顔色を青くして涙目で「お嬢様、申し訳ありません!!」と這う這うの体で駆け寄って来る。
「小父さん、どこにも怪我はない?無理してない?」
こちらも落ち着かせるように、片手で震える背中をさすりながら、逆の手で平伏した小父さんが床についた手を取って身体を起こして微笑みかける。
「お嬢様、本当にっ‥‥本当に申し訳ありません!!ヘリオス坊ちゃんに何かあったらっ‥‥。坊ちゃんをお乗せしたのは確かなんです。けど帰ってきてみたら馬車はもぬけの殻なんです!」
うーん、襲撃に遭ったとか、誘拐されたとかでもなくって、馬車には乗ったけど走行中に姿が消えたと?なにその密室トリック!?
首を捻っていると、やけに身綺麗で剣を腰に差した騎士風の2人の男が、いつの間にか小父さんの後ろに所在なさげに立っているのに気付いた。
「どなた?街の衛士の方かしら。誰か街の衛士詰め所に知らせたかしら?」
それにしては早すぎる。
「いえ‥‥我々はヘリオス様の護衛を仰せつかっていた者です。」
ちらちらとハディスの方を見る2人は、確かに街の衛士にしては衣服が高級すぎる。貴族の子弟といった風貌だ。いや、もしかすると。
「もしかしてヘリオスに、ハディス様の職場の騎士を付けていらっしゃいましたか?」
「うん、念のためねー。けど力になれなかったみたいだね、ごめん。」
ハディスがしゅんと目を伏せる。
何と王城付きの騎士でしたか!通りでキラキラしい人達だと思ったわ。けど、ヘリオスに護衛が付いていたなんて初耳なんですけど!?
「いつからですか!?ヘリオスが狙われるようなことがあったんですか!?」
「セレネ嬢に僕が付くようになってすぐに護衛に就いてもらっていたんだよ。きっとセレネ嬢が手強いとなると、次に狙われるのはヘリオス君だろうと思ったから、僕がつけてた。」
んん?となると狙われていたのはわたしで、ヘリオスは巻き込まれただけだと!?って言うか、何でわたしが狙われているの?
「セレネ嬢、彼らも何も気付く様なものは無かったみたいだ。と言うよりも、学園を出てから屋敷に着くまでの記憶がひどく曖昧になっているみたいだねー。」
わたしが混乱している間に、ハディスが護衛2人から事情を聞き出していたらしい。メリーがレターセットを持ってきてくれたので、早速母への報告を書き記す。
「出来るだけ簡潔に『ヘリオスが学園からの帰路、馬車の中から姿を消しました。馭者、護衛ともに異変に気付かず。取り急ぎ、わたしが現状を確認します』それと‥‥。」
わたしは改めて、小父さんと、護衛2人をちらりと見遣った。
帰宅してすぐに侍女頭メリーからもたらされた言葉に、頭の中が一瞬真っ白になりつつ、それでもただ茫然としていても何も現状は変わらない、と頭をブルブルと振って気持ちを切り替える。
「メリー、落ち着いて。ヘリオスはきっと大丈夫だから。大切な弟ですもの、わたしがしっかり鍛えているから。だから今わたしたちが出来ることを考えましょう?このことはお父様やお母様にはもう伝わっているのかしら。」
顔色を無くし、震えるメリーの両腕に手を添えて、大丈夫だと伝えるように正面から視線を合わせてにっこりとほほ笑む。すると、動揺していたメリーも落ち着きを取り戻したのか、ぽつぽつと話し始めた。
「旦那様は商談のため3日間はお戻りにならないと仰っておられました。奥様は朝から商会本店に行っておられて、お戻りになるのは夜遅くなってからと伺っております。」
「そう、ならお父様、お母様へのご報告はまだなのね。なら、屋敷の警備から1人回すから、今日の侍女当番のディスキンに、お母様への報告をお願いするわ。すぐに手紙に内容をまとめるから、メリーはレターセットとディスキンへの指示を宜しく。」
「かしこまりました!」と、ぱたぱたと小走りで屋敷の奥へと消えていくメリーを見送る。
うん、さすがメリー!こんな時でもしっかり切り換えての仕事が早くて凄いわ。さて次は警備員の手配と、戻った者からの事情聴取をしながらの報告書作成っと。
「セレネ嬢、こんな時こそ頼りになるお兄さんの力が借りたいなぁーとか思ったりしない?」
「借りは要りませんよ、ハディス様。何の話ですか?」
「あぁ、うん分かった。」と半笑いで若干肩を落としたハディスは何が言いたいのか分からないけど、そこに拘っている暇はない。父母が居ない今、自分がバンブリアの代表として家人の指揮を執り、ヘリオスの対策を取らなければならないんだから。
「ヘリオスと一緒に馬車に乗っていた人の話を聞きたいわ!いつもの小父さんが一緒のはずよね。小父さんはどこ?怪我はしていないかしら。」
馭者の小父さんがいつも詰めている使用人部屋の一つに向かおうとしたところで、小父さん自身がこちらへ慌てた様子で駆け寄って来た。いつも優しい笑顔の小父さんが、今は自身の御する馬車からヘリオスが消えた異常事態に動揺し、こちらも顔色を青くして涙目で「お嬢様、申し訳ありません!!」と這う這うの体で駆け寄って来る。
「小父さん、どこにも怪我はない?無理してない?」
こちらも落ち着かせるように、片手で震える背中をさすりながら、逆の手で平伏した小父さんが床についた手を取って身体を起こして微笑みかける。
「お嬢様、本当にっ‥‥本当に申し訳ありません!!ヘリオス坊ちゃんに何かあったらっ‥‥。坊ちゃんをお乗せしたのは確かなんです。けど帰ってきてみたら馬車はもぬけの殻なんです!」
うーん、襲撃に遭ったとか、誘拐されたとかでもなくって、馬車には乗ったけど走行中に姿が消えたと?なにその密室トリック!?
首を捻っていると、やけに身綺麗で剣を腰に差した騎士風の2人の男が、いつの間にか小父さんの後ろに所在なさげに立っているのに気付いた。
「どなた?街の衛士の方かしら。誰か街の衛士詰め所に知らせたかしら?」
それにしては早すぎる。
「いえ‥‥我々はヘリオス様の護衛を仰せつかっていた者です。」
ちらちらとハディスの方を見る2人は、確かに街の衛士にしては衣服が高級すぎる。貴族の子弟といった風貌だ。いや、もしかすると。
「もしかしてヘリオスに、ハディス様の職場の騎士を付けていらっしゃいましたか?」
「うん、念のためねー。けど力になれなかったみたいだね、ごめん。」
ハディスがしゅんと目を伏せる。
何と王城付きの騎士でしたか!通りでキラキラしい人達だと思ったわ。けど、ヘリオスに護衛が付いていたなんて初耳なんですけど!?
「いつからですか!?ヘリオスが狙われるようなことがあったんですか!?」
「セレネ嬢に僕が付くようになってすぐに護衛に就いてもらっていたんだよ。きっとセレネ嬢が手強いとなると、次に狙われるのはヘリオス君だろうと思ったから、僕がつけてた。」
んん?となると狙われていたのはわたしで、ヘリオスは巻き込まれただけだと!?って言うか、何でわたしが狙われているの?
「セレネ嬢、彼らも何も気付く様なものは無かったみたいだ。と言うよりも、学園を出てから屋敷に着くまでの記憶がひどく曖昧になっているみたいだねー。」
わたしが混乱している間に、ハディスが護衛2人から事情を聞き出していたらしい。メリーがレターセットを持ってきてくれたので、早速母への報告を書き記す。
「出来るだけ簡潔に『ヘリオスが学園からの帰路、馬車の中から姿を消しました。馭者、護衛ともに異変に気付かず。取り急ぎ、わたしが現状を確認します』それと‥‥。」
わたしは改めて、小父さんと、護衛2人をちらりと見遣った。
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