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4.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。
俺を置き去りにして、攻略対象ヒロインらが何か物騒な会話をしている!
しおりを挟む「その無礼者を摘まみ出せ!!」
凛とした声が響く。
俺の周りに吹き荒れていた強風はいつの間にか止み、周囲の景色も一変していた。どうやらあの『王族箱』に仕込まれていたのは転移の魔法陣だったらしい。
俺が摘まみ出されるのか!? と、咄嗟に身構えたが違っていたようだ。
「離せ!! 話せばわかるっ、この格好には事情がっ……、貴様ら男子垂涎のシチュエーションを知らんのか!?」
『あああ』の騒ぎ立てる声に振り向けば、両脇から騎士に吊り上げられた奴の姿が目に入った。極太の真っ青な縦結びリボンを首元にだけ残し、腰の辺りで破けた、派手な包装紙さながらの水色の煌びやかなローブを纏った奴――その下には、何も着けられてはいない。
ふらふら、プラプラさせながら、艶やかに磨き上げられた大理石の床を引き摺られて行く姿は、衣服には包まれてはいないが、哀愁には包まれている。周囲が豪華だからこそ一層。
そう、俺と箱たちは一瞬のうちに王城の一室へと転移させられていた。
「ふむ、怪我はないようだな。あまり心配をかけてくれるな」
予想通り俺の目の前に現れたのは、いつも通り学友を――ではなく、少女漫画の如く細く見目麗しい護衛騎士らを引き連れたクリスティアナ姫だ。学園内では学園長に次いで高い地位を持ち、学園生ながら風紀と規律の番人の役割も担う彼女は、当然ながらこの王国の由緒正しい姫君だ。
「聖女ユリーナから話は聞き及んでいる。なんでもバレンタインの贈り物を拾得物だと警邏隊へ届けてしまうとか」
扇で口元を隠し、くつくつと笑う姿も麗しい。
「んもぉ、内緒なのに何で話しちゃうんですかぁ!」
『くしゃみ箱』がパカリと開いて、中から平民聖女ユリアーナが出て来た。両腰に左右の握り拳を当てて、ぷっくりと頬を膨らませている。
「バレンタインに貴女自身を贈って警邏隊に突き返されたのに、ホワイトデーで性懲りもなく同じことを繰り返す貴女もどうかと思いますわよ」
『生足箱』の蓋がパカリと開いて、魔術師団長の娘ソルドレイドの顔が覗く。いつの間にか箱の両サイドから生腕までが生えている。
「今回は贈ったんじゃなくって、ホワイトデーのお返しを受け取りに行ったんですぅ~!」
「抜け駆けはずるいですわ。筋肉逞しいヒロイキ様に、貴女だけ抱えられるだなんてズルい……はしたないですわ!!」
「けれど結局2人だけでは、ヒロイキに受け取らせられなかったのだがな。ふっ、お前たちのやり方では詰めが甘いのだよ」
俺を置き去りにして、攻略対象ヒロインらが何か物騒な会話をしている!
なんだ!? 今回の一件は、ヒロイン総出で俺を悪役の道に推し進めようとする世界の強制力だったのか!? 冗談じゃない!!
俺は脱兎のごとく駆け出した。
ついこの前の、王妃に成り代わった3分間の全力疾走で、城内の多少の様子は分かるつもりだ。って云うか、分からなくとも逃げる!! 悪役堕ちルート直結の、破滅フラグを立てられるワケにはいかない!
ヒロイン達の声が更に俺を追い掛けてくる。
俺の『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』悪役生活はまだまだ続く。気を抜けば、廊下の向こうからプラプラさせながら猛ダッシュで追って来る主人公に断罪されて僻地の強制収容所送りになるか、男娼に堕とされるか……とにかくゲーム通りならロクでもない未来が待ち受けている!!
事あるごとにゲーム補正が働く日常生活を無事に過ごす事が出来るのか!?
俺の穏やかな筋トレライフの破滅フラグ回避生活は、終わらない。
《完》
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