【短編集】おとなし男子の悪役転生!ヒロインとか興味ないので筋トレしてたら、恋愛フラグが乱立してたみたいです。

弥生ちえ

文字の大きさ
上 下
16 / 17
4.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。

町の治安を守る警邏隊員は、悪役である俺に救いの手は差し伸べてくれないのか!?

しおりを挟む

「その脚は女子のっ!? 貴様、何と云う羨ま……破廉恥な、けしからん真似をしている!! 私と云うものがありながらっ」

 わなわなと手を震わせる主人公『あああ』は、何故か全身に極太の真っ青なリボンを巻き付けて、首元で大きな蝶々結びにしている。自分で結んだのか、残念ながら縦結びだ。だが、派手な包装紙さながらの水色の煌びやかなローブを纏う、奴全体のインパクトの前では、些細な問題すぎて突っ込むことも出来ない。

 ――いや、そうでなくとも俺は前世から引き続いての、とんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理な大人し男子だ。「筋トレ」だけが友達のシャイボーイだ。話すことなど出来ようはずもない!!

「あ! こら、何とか言ったらどうなんだ!! 待てっ!!!」
「お待ちになってくださいませっ!!!」

「きゃわわわわっ……わっ……わわ!!」

 背後から男女の姦しい声、手元の箱からフジョシの声を響かせながら、俺は街中を爆走する。あともう少しで目的の警邏隊屯所だ!!

 あと20メートル!

「ちっ! 私達・・を落とし物として届け出る気か!?」

『あああ』が忌々し気に吐き捨てる。

「ふぇっ!? 前月の二の舞は嫌ですぅ~!」

 箱の中で何やらゴニョゴニョ声がする。

「そうはいきませんわよ! 一気にカタをつけますわ!!」

 物騒な言葉に振り返れば、『生足箱』が風魔法を発動するところだった。

 残り10メートル!!

 警邏隊の厳つい面々が、屯所の外に立ってこちらを見ている。一目散にそこを目指す俺を見て、こちらに向かってくれればすぐこの呪物らを渡せる! 穏便に拾得物として!!

 なのに何故だ!? すぐそこに居るのに、今回も呆れた笑い顔を浮かべて動こうとしない。町の治安を守る警邏隊員は、悪役である俺に救いの手は差し伸べてくれないのか!?

「これは、ただの拾得物なんだぁぁぁーーー!!」

 俺が渾身の叫びを上げたところで、足元で旋風が巻き起こり、俺を持ち上げ――られなかった。さすが鉄壁の筋肉鎧! そんじょそこらの肉とは比較にならない安定の重量感だ!!

「ちぃっ! 全力で参りますわ!! 『あああ』様、援護なさって!」

「言われずとも行く! ヒロイキ、我が想いを受け取れーーーー!!!」

「「ちっ」」

『くしゃみ箱』『生足箱』が揃って盛大な舌打ちを漏らす。そんな俺たちの姿を、警邏隊員の生暖かい目が捉えている。

「しゅ……拾得物を――」

 俺は必死の思いで、『くしゃみ箱』『王族箱』を持った手をそちらに向けて差し出す。



 だが、言い終わらぬ間に、俺を中心にした超特大の竜巻が、巻き起こった。

 煌びやかな包装紙が千々に破れ、リボンが裂けて、俺に飛び掛かろうとしていた『あああ』が突風に跳ね上げられるのが目に入る。手にしていた『くしゃみ箱』も舞い上げられ、布に包まれていた『王族箱』は包みが解けて、パカリと蓋を開いた。

『王族箱』の中には、開封と同時に発動する魔法陣が組み込まれていたらしい。

 俺たちを纏めて包み込んだ玉虫色に輝く魔法陣は、まばゆい光を放って視界を奪った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...