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4.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。
町の治安を守る警邏隊員は、悪役である俺に救いの手は差し伸べてくれないのか!?
しおりを挟む「その脚は女子のっ!? 貴様、何と云う羨ま……破廉恥な、けしからん真似をしている!! 私と云うものがありながらっ」
わなわなと手を震わせる主人公『あああ』は、何故か全身に極太の真っ青なリボンを巻き付けて、首元で大きな蝶々結びにしている。自分で結んだのか、残念ながら縦結びだ。だが、派手な包装紙さながらの水色の煌びやかなローブを纏う、奴全体のインパクトの前では、些細な問題すぎて突っ込むことも出来ない。
――いや、そうでなくとも俺は前世から引き続いての、とんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理な大人し男子だ。「筋トレ」だけが友達のシャイボーイだ。話すことなど出来ようはずもない!!
「あ! こら、何とか言ったらどうなんだ!! 待てっ!!!」
「お待ちになってくださいませっ!!!」
「きゃわわわわっ……わっ……わわ!!」
背後から男女の姦しい声、手元の箱からフジョシの声を響かせながら、俺は街中を爆走する。あともう少しで目的の警邏隊屯所だ!!
あと20メートル!
「ちっ! 私達を落とし物として届け出る気か!?」
『あああ』が忌々し気に吐き捨てる。
「ふぇっ!? 前月の二の舞は嫌ですぅ~!」
箱の中で何やらゴニョゴニョ声がする。
「そうはいきませんわよ! 一気にカタをつけますわ!!」
物騒な言葉に振り返れば、『生足箱』が風魔法を発動するところだった。
残り10メートル!!
警邏隊の厳つい面々が、屯所の外に立ってこちらを見ている。一目散にそこを目指す俺を見て、こちらに向かってくれればすぐこの呪物らを渡せる! 穏便に拾得物として!!
なのに何故だ!? すぐそこに居るのに、今回も呆れた笑い顔を浮かべて動こうとしない。町の治安を守る警邏隊員は、悪役である俺に救いの手は差し伸べてくれないのか!?
「これは、ただの拾得物なんだぁぁぁーーー!!」
俺が渾身の叫びを上げたところで、足元で旋風が巻き起こり、俺を持ち上げ――られなかった。さすが鉄壁の筋肉鎧! そんじょそこらの肉とは比較にならない安定の重量感だ!!
「ちぃっ! 全力で参りますわ!! 『あああ』様、援護なさって!」
「言われずとも行く! ヒロイキ、我が想いを受け取れーーーー!!!」
「「ちっ」」
『くしゃみ箱』『生足箱』が揃って盛大な舌打ちを漏らす。そんな俺たちの姿を、警邏隊員の生暖かい目が捉えている。
「しゅ……拾得物を――」
俺は必死の思いで、『くしゃみ箱』『王族箱』を持った手をそちらに向けて差し出す。
だが、言い終わらぬ間に、俺を中心にした超特大の竜巻が、巻き起こった。
煌びやかな包装紙が千々に破れ、リボンが裂けて、俺に飛び掛かろうとしていた『あああ』が突風に跳ね上げられるのが目に入る。手にしていた『くしゃみ箱』も舞い上げられ、布に包まれていた『王族箱』は包みが解けて、パカリと蓋を開いた。
『王族箱』の中には、開封と同時に発動する魔法陣が組み込まれていたらしい。
俺たちを纏めて包み込んだ玉虫色に輝く魔法陣は、まばゆい光を放って視界を奪った。
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