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4.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。
俺を人身売買か監禁に荷担する悪役にさせようとする、世界の強制力が働いたのか!?
しおりを挟む俺はヒロイキ・アークドール。
泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家の長男だ。親父の妾の一人から生まれた。
そんな俺にはもう一つ、天から与えられた役割があった。ギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』に瓜二つなこの世界の、「悪役」兼「当て馬」だ。主人公とヒロインが結ばれる一方、「追放」「処刑」「男娼堕ち」の各種の堕ちルートが展開されるキャラなのだ!
だがそんな運命に漫然と従う気は無いぜ! 前世記憶のある俺は、乱立する破滅フラグを叩き折り、己の運命を切り開くんだ!!
――などと威勢良く叫んでイキり散らすことはない。なぜなら俺は前世から引き続いての陰キ……おとなし男子だからな。寡黙に筋トレだけして過ごすんだ。
目立たず地道にコツコツと。そんな信条でここまで生き延びてきた俺の前に、まさか破滅フラグ……いや、箱が現れるとは!!
学園から帰宅した俺は今『ヒロイキ・アークドール様』などと書かれた三個の箱と対峙している。どれも、主張の強いド派手な箱で、中央の両手で持てそうなのを挟んだ両脇に、人が入れそうなくらい大きなのが鎮座している。
我がブラックマン伯爵家の門前に、手付かずの豪華な箱……
異常事態だ!
なにがって、そこに箱があること自体がだ。
自慢じゃないが、俺の家は実の子供にさえ、食うものもろくに与えない。それどころかバイトや内職で入手したわずかな金品すら躊躇無く奪い去る、弱肉強食の血も涙もない鬼の集う場所だ。そんな家の前に、いつまでもこんな大きな箱が置いたままになると思うか!?
いや、無い。
俺のものは親父のもの、いや、出入りの破落戸のものとばかりに躊躇無く持ち去られる。それが我が家の掟だ。それなのに、こんな目立つ場所に残されているだとぉ……!?
これはきっとあれだ!! 世界の強制力だ!
俺には思い当たるものがある。ついひと月前も、全く同じことがあったばかりだ。あの時、箱は一個だった上に、中から人の気配がした。それで、その時の俺は即座に気付いたんだ。
あ。これって、俺を人身売買か監禁に荷担する悪役にさせようとする、世界の強制力なんだなって。
だから速やかに、俺は箱を抱えて町の警邏隊屯所まで持っていったさ! 中は分からないけど家の前にこんな不審な箱があったんですってな!
そしたら警邏隊の厳つい奴等は、物凄く呆れた感じで「ホントに良いの?」「取り敢えず開けてみたら?」なんて、揃いも揃って俺を悪の道に後押ししようとしたんだ!
あれぞ正しく、世界の強制力って奴だな。恐ろしかったぜ。
そんな感じで、悪役への落とし穴……いや、落とし箱を乗り越えたはずの俺の前に、またもや箱が現れた。
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