【短編集】おとなし男子の悪役転生!ヒロインとか興味ないので筋トレしてたら、恋愛フラグが乱立してたみたいです。

弥生ちえ

文字の大きさ
上 下
13 / 17
番外編.彼の名は筋肉仮面! 断罪の運命に抗う悲劇のヒーローである!

ラブコメ界定番かつ伝説の男の夢展開――なんじゃこりゃあああ!!

しおりを挟む

「(まさか!!!)」

 これは、ラブコメ界定番かつ伝説の男の夢展開なのではーーー!! 高鳴る胸の鼓動と共に、俺はカッと目を見開く。




「―――……」

 俺の手は、ソルドレイドの前で仁王立ちになり、大股を開いた男の、こっ……かんに!?

 なんじゃこりゃあああ!!

 口をハクハクとさせるが、ショックのあまり声もでない。確かに俺のポーズはサイドチェストだった。としたら、前屈みの俺の手は胸よりも下になってる。なんてこった!

 それに! スレンダーな男の癖に、なんでここだけ、こんなにボリューミーなんだよ!! 俺は悲しいぞ! 色々となっ!! あぁ、そうだよ。悪役なのに夢見た俺が身の程知らずだったぜ。

「ひっ……ヒロイキ。親友ならば、親愛の情によって触れることも多いだろうが、こ、こここ……っかんは―――はっ! お前まさか、この『あああ』と親友以上の関係を求めているのか!!!」

 股間の主から発せられた声は、俺の知る男のモノだった。そうか、ソルドレイドはこのゲームの主人公『あああ』の婚約者。彼女の危機を察して駆けつけたんだな! さすが主人公!! 確かに足元には、なんだか嬉しそうな、恍惚の表情を浮かべた刺客たちが「今日は手を洗わないぞー」なんて呟きながら倒れている。俺はすぐにでも洗いたい。とにかく筋肉が俺を守ってくれたんだろう。

 主人公への敗北感を、ちくりと痛む胸と、手の平へのもったりとした感触と共に残した俺は、光る涙の滴をホロリと何粒も溢しながら、脱兎のごとく駆け出す。

 負け犬となって逃げだした俺の背後で、仲睦まじく会話を交わす声が聞こえていた。

「もぉぉっ! 何で助けになんて来るんですの!? こんな刺客の相手なんて、遊びにもならないって分かってますわよね?」

「何を言う! 俺はヒロイキと親友で、お前の婚約者だ。この場に居合わせて親交を深める権利は、充分にある!!」

「私とは幼少期からの縁ですから今更――だとは思いますが? その親交とやらは誰とのものですの?」

「そのっ、正体不明の筋肉仮面との、だな」

「今さっき、ヒロイキ様のお名前で呼んでいたばかりでしょうが! んもぉ、貴方様の最近のちょっと変・な行動は目に余りましてよ!!」

「それはアイツの筋肉が悪い!」

「んまぁ! ヒロイキ様の筋肉は素晴らしくてよ!!」

 主人公とメインヒロインの声が俺を追い立てる。悪役の俺には入り込めない絆を感じる。

 俺の『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』悪役生活はまだまだ続く。気を抜けば、いつもひょっこり現れる主人公に断罪されて僻地の強制収容所送りになるか、男娼に堕とされるか……とにかくゲーム通りならロクでもない未来が待ち受けている!!

 事あるごとにゲーム補正が働く日常生活だって気が抜けないぜ!





 俺の穏やかな筋トレライフの破滅フラグ回避生活は、終わらない。





《完》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...