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3.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、家族が破滅フラグを立ててしまうみたいです。
俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
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俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
王妃様に危険が及ばない場所まで、彼女を運ぶこと――稀代の悪人ブラックマン伯爵の手から王妃様を助けることだ。
俺はひた走る。月明かりが僅かに差し込む王城の渡り廊下に、カッカッカッと床を踏み鳴らす、ヒールの固い音を響かせて。
王様が隣国との合同軍事演習で、城を留守にしている今夜――常に権力と財力の拡大を狙うブラックマン伯爵は、この日を好機と捉え、この国の最高権力の一翼を葬り去ろうと動いた。
狙うのは、軍部を引き連れ、強力な護衛に守られつつ隣国に接する辺境へ赴いた王様……ではない。王城に残る王妃様だ。
彼女を葬り、手の内の者を国王の後添えにさせようと画策しているのだ。
既に第一の矢は放たれ、王妃には致死の呪いが掛けられてしまった。ブラックマン伯爵の家宝「3分間ヌーベル」で操られた魔導士によって。だが彼は、魔導士らしく抵抗し、伯爵が即死の呪いを掛けさせようとしたところを、朝日が昇るまで効果を発揮しない致死の呪いに留めた。
とは言え、王妃様の命が危ういことには変わらない。さらに伯爵は、確実に王妃様の命を奪うべく、この王城内に何人もの暗殺者を送り込んでいる。
物音のしない薄暗い城内のそこここには、親父の息のかかった腕利き暗殺者らの気配が潜んでいる――はずだ。筋トレばかりしてきた俺に分かる訳はない。だが、俺はその悉くから、王妃様を護らねばならない!
俺の破滅フラグ回避をするために!!
初めましての皆様のために、ちょっと自己紹介しておこう。
俺ことヒロイキ・アークドールは、泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家の長男だ。親父の妾の一人から生まれた。
そしてこの世界は、俺が前世、命の灯を落とす寸前までのめり込んでいたギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』そのものだった。ついこの前の入学式で、その事実に気付いた俺の驚愕を分かってくれるか!?
ただゲーム世界の住人になったのなら、攻略対象たちに会えるのが楽しみで仕方なかっただろう。けど俺の役どころは、数多の婦女子とキャッキャウフフとハッピーライフを謳歌する「ヒーロー」……ではなく、「悪役」兼「当て馬」だったんだ!!
悪役を育てるのに相応しい毒親っぷりを遺憾なく発揮してくれたアークドール伯爵のお陰で、小さい頃から食うに困り、体罰に悩まされ、流血沙汰を飽きるほど見せられた俺に、更なる追い打ちとかひどすぎねぇ!? そりゃあ、荒んで悪役になっちまうぞ! リア充爆発しろってな!!
だが俺は、前世から引き続いてのとんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理な大人し男子だ。「筋トレ」だけが友達のシャイボーイだ。
その俺が、王城の長い廊下を、床を引きずるくらい長く、ヒラヒラしたスカートをたくし上げて全力疾走している。首にかかる長い後れ毛が汗で張り付いて気持ち悪いし、結い上げた髪も意外に重量があるから、疾駆する身体の重心を狂わされて厄介だ。
「待て! 貴様、母上ではないな!!」
角を曲がったところで鋭い声が投げつけられ、待ち構えていた誰かが急に目の前に現れた。
やばい! やばすぎる!! 今の俺の姿は、誰がどう見ても、この国の王妃様なはずだ。その俺に「母上ではないな」なんて呼び掛ける人間なんて、もの凄ーく限られている。
しかも、今のは俺の知っている声だった。
「答えろ。お前は何者で、何故母上の姿をとっている?」
詰問する声までもが、透き通った天上の音楽のごとき美しさだ。凛と通った声は本当に空の彼方まで響いているんじゃないだろうか……。ああ、やっぱり現れたのはボンキュッボンの超メリハリ女神、同級生でもあるクリスティアナ姫だ。
王妃様に危険が及ばない場所まで、彼女を運ぶこと――稀代の悪人ブラックマン伯爵の手から王妃様を助けることだ。
俺はひた走る。月明かりが僅かに差し込む王城の渡り廊下に、カッカッカッと床を踏み鳴らす、ヒールの固い音を響かせて。
王様が隣国との合同軍事演習で、城を留守にしている今夜――常に権力と財力の拡大を狙うブラックマン伯爵は、この日を好機と捉え、この国の最高権力の一翼を葬り去ろうと動いた。
狙うのは、軍部を引き連れ、強力な護衛に守られつつ隣国に接する辺境へ赴いた王様……ではない。王城に残る王妃様だ。
彼女を葬り、手の内の者を国王の後添えにさせようと画策しているのだ。
既に第一の矢は放たれ、王妃には致死の呪いが掛けられてしまった。ブラックマン伯爵の家宝「3分間ヌーベル」で操られた魔導士によって。だが彼は、魔導士らしく抵抗し、伯爵が即死の呪いを掛けさせようとしたところを、朝日が昇るまで効果を発揮しない致死の呪いに留めた。
とは言え、王妃様の命が危ういことには変わらない。さらに伯爵は、確実に王妃様の命を奪うべく、この王城内に何人もの暗殺者を送り込んでいる。
物音のしない薄暗い城内のそこここには、親父の息のかかった腕利き暗殺者らの気配が潜んでいる――はずだ。筋トレばかりしてきた俺に分かる訳はない。だが、俺はその悉くから、王妃様を護らねばならない!
俺の破滅フラグ回避をするために!!
初めましての皆様のために、ちょっと自己紹介しておこう。
俺ことヒロイキ・アークドールは、泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家の長男だ。親父の妾の一人から生まれた。
そしてこの世界は、俺が前世、命の灯を落とす寸前までのめり込んでいたギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』そのものだった。ついこの前の入学式で、その事実に気付いた俺の驚愕を分かってくれるか!?
ただゲーム世界の住人になったのなら、攻略対象たちに会えるのが楽しみで仕方なかっただろう。けど俺の役どころは、数多の婦女子とキャッキャウフフとハッピーライフを謳歌する「ヒーロー」……ではなく、「悪役」兼「当て馬」だったんだ!!
悪役を育てるのに相応しい毒親っぷりを遺憾なく発揮してくれたアークドール伯爵のお陰で、小さい頃から食うに困り、体罰に悩まされ、流血沙汰を飽きるほど見せられた俺に、更なる追い打ちとかひどすぎねぇ!? そりゃあ、荒んで悪役になっちまうぞ! リア充爆発しろってな!!
だが俺は、前世から引き続いてのとんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理な大人し男子だ。「筋トレ」だけが友達のシャイボーイだ。
その俺が、王城の長い廊下を、床を引きずるくらい長く、ヒラヒラしたスカートをたくし上げて全力疾走している。首にかかる長い後れ毛が汗で張り付いて気持ち悪いし、結い上げた髪も意外に重量があるから、疾駆する身体の重心を狂わされて厄介だ。
「待て! 貴様、母上ではないな!!」
角を曲がったところで鋭い声が投げつけられ、待ち構えていた誰かが急に目の前に現れた。
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しかも、今のは俺の知っている声だった。
「答えろ。お前は何者で、何故母上の姿をとっている?」
詰問する声までもが、透き通った天上の音楽のごとき美しさだ。凛と通った声は本当に空の彼方まで響いているんじゃないだろうか……。ああ、やっぱり現れたのはボンキュッボンの超メリハリ女神、同級生でもあるクリスティアナ姫だ。
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