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2.ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、危機一髪が訪れたみたいです。
筋トレだけして過ごしたい俺に訪れた危機一髪!
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俺には前世の記憶がある。
とんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理なモブDKだ。
弟が「他人と話しをする参考になるかもしれないぜ~」などと、ギャルゲーをふざけて貸してくるほどの舐められようでも、怒ることはない。そんなバイタリティを持ち合わせていたら、コミュ障などと自分を評したりはしない。
そして毎日のほとんどをソロ活動で過ごす俺には、時間は有り余るほどあったから取り敢えず……と、全ストーリーをカンストしたのは我ながら凄い集中力だった。俺だって、やれば出来るのさなんて感じたのが最期の楽しい記憶かもしれない。
だからか、今後の俺の運命が良く分かる。
泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家。その当主の一人息子として妾の一人から生まれ、悪役の道を爆走しまくり、学園高等部を卒業する18歳でヒーローに断罪されるヤラレ役「ヒロイキ・アークドール」。その後の人生は、おぞましい一枚絵と共に流れるナレーションで語られ、俺は姿無き絶叫のみを響かせて表の世界から消え失せるのだ。
ギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』の「悪役」兼「当て馬」。そんな俺の二つ名を、ゲームをプレイした奴らは爽快感を持ってこう呼んだ――メスイキ・アークドール。
プレイヤーである主人公がゲームをクリアし、女の子を手に入れる背景で、俺には各種の堕ちルートが展開されるのだ。その中で最も多いざまぁ展開「男娼堕ち」を揶揄した名前だ。
処刑でもなく、殺害でもなく、重労働でもなく、生かさず殺さず最も精神的にヤラレ続けるざまぁエンドだ。そんな過酷な運命ばかりが先に待ち構えているなんて……最悪な気分の転生だ。
けど、俺は生きている! 前世の人格と、ゲームの記憶がある!!
ただストーリーに流されて、ハッピーエンドを際立たせるためだけに、ゲームの背景で無残な生殺しエンドを迎えるキャラクターではなく、心を持った人間だ!! 絶対にこの運命を回避してやるぜ!
「何度も私は忠告したはずだぞ! ヒロイキっ」
え!? 決意した途端、俺、男に壁ドンされてる!? しかも至近距離で唾を飛ばすのは、悪役転生した俺の天敵・モテルートを爆走し続ける主人公『あああ』じゃねぇか!!
背後は体育館裏の薄汚れた壁、正面には俺を逃すまいと鋭い視線で射貫く様に睨み付けつつ、両手を俺の顔の左右に突く天敵……!! 詰んだのか!? もう詰んじまったのか、俺!?
「我が婚約者ソルドレイドと、我が国の宝、聖女ユリーナに無闇に近付くなと、あれほど言ったにも関わらず、お前は未だ彼女らに手を触れ、怪しげな振る舞いを繰り返しているようだな!」
至近距離にも拘らず、大声で怒鳴る奴は、それでも荒ぶる気持ちが収まらないんだろう。両腕を大きく振り上げて、ドンと音を立てながら握り締めた双方の拳を壁に叩き付ける。
「っくはっ……」
真正面で、妙な息を吐いたのは『あああ』だ。俺の顔の両脇が定位置なのは変わりないのだが、両拳を壁に叩き付けるのに腕を折り曲げたせいで、奴の身体までもが俺に勢い良くぶつかって来た。
痛くはない。俺の大胸筋がいい仕事をしてくれた。
ついさっきまで、こっぱずかしい保健体育の授業をさぼり、一人静かに体育館の用具庫に籠って黙々とパンプアップしていたのだ。普段以上に豊かに膨らんだ、俺の鎧であり素晴らしい相棒でもある『筋肉』が俺を守ってくれている。実に心強い。
だが、そんな細やかな筋肉の抵抗を「悪役のくせに生意気な」とか感じたのだろうか? 『あああ』が、真っ赤な顔で俺を睨み付けて来る。
「ヒロイキ! 貴様、なんだこのケシカラン身体は! 何を企んでいる!? 私だけでは飽き足らず、誰に取り入ろうとしているっ」
「……??」
とんでもないコミュ障で、女子どころか同性でも陽キャは無理なモブDKだ。
弟が「他人と話しをする参考になるかもしれないぜ~」などと、ギャルゲーをふざけて貸してくるほどの舐められようでも、怒ることはない。そんなバイタリティを持ち合わせていたら、コミュ障などと自分を評したりはしない。
そして毎日のほとんどをソロ活動で過ごす俺には、時間は有り余るほどあったから取り敢えず……と、全ストーリーをカンストしたのは我ながら凄い集中力だった。俺だって、やれば出来るのさなんて感じたのが最期の楽しい記憶かもしれない。
だからか、今後の俺の運命が良く分かる。
泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家。その当主の一人息子として妾の一人から生まれ、悪役の道を爆走しまくり、学園高等部を卒業する18歳でヒーローに断罪されるヤラレ役「ヒロイキ・アークドール」。その後の人生は、おぞましい一枚絵と共に流れるナレーションで語られ、俺は姿無き絶叫のみを響かせて表の世界から消え失せるのだ。
ギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』の「悪役」兼「当て馬」。そんな俺の二つ名を、ゲームをプレイした奴らは爽快感を持ってこう呼んだ――メスイキ・アークドール。
プレイヤーである主人公がゲームをクリアし、女の子を手に入れる背景で、俺には各種の堕ちルートが展開されるのだ。その中で最も多いざまぁ展開「男娼堕ち」を揶揄した名前だ。
処刑でもなく、殺害でもなく、重労働でもなく、生かさず殺さず最も精神的にヤラレ続けるざまぁエンドだ。そんな過酷な運命ばかりが先に待ち構えているなんて……最悪な気分の転生だ。
けど、俺は生きている! 前世の人格と、ゲームの記憶がある!!
ただストーリーに流されて、ハッピーエンドを際立たせるためだけに、ゲームの背景で無残な生殺しエンドを迎えるキャラクターではなく、心を持った人間だ!! 絶対にこの運命を回避してやるぜ!
「何度も私は忠告したはずだぞ! ヒロイキっ」
え!? 決意した途端、俺、男に壁ドンされてる!? しかも至近距離で唾を飛ばすのは、悪役転生した俺の天敵・モテルートを爆走し続ける主人公『あああ』じゃねぇか!!
背後は体育館裏の薄汚れた壁、正面には俺を逃すまいと鋭い視線で射貫く様に睨み付けつつ、両手を俺の顔の左右に突く天敵……!! 詰んだのか!? もう詰んじまったのか、俺!?
「我が婚約者ソルドレイドと、我が国の宝、聖女ユリーナに無闇に近付くなと、あれほど言ったにも関わらず、お前は未だ彼女らに手を触れ、怪しげな振る舞いを繰り返しているようだな!」
至近距離にも拘らず、大声で怒鳴る奴は、それでも荒ぶる気持ちが収まらないんだろう。両腕を大きく振り上げて、ドンと音を立てながら握り締めた双方の拳を壁に叩き付ける。
「っくはっ……」
真正面で、妙な息を吐いたのは『あああ』だ。俺の顔の両脇が定位置なのは変わりないのだが、両拳を壁に叩き付けるのに腕を折り曲げたせいで、奴の身体までもが俺に勢い良くぶつかって来た。
痛くはない。俺の大胸筋がいい仕事をしてくれた。
ついさっきまで、こっぱずかしい保健体育の授業をさぼり、一人静かに体育館の用具庫に籠って黙々とパンプアップしていたのだ。普段以上に豊かに膨らんだ、俺の鎧であり素晴らしい相棒でもある『筋肉』が俺を守ってくれている。実に心強い。
だが、そんな細やかな筋肉の抵抗を「悪役のくせに生意気な」とか感じたのだろうか? 『あああ』が、真っ赤な顔で俺を睨み付けて来る。
「ヒロイキ! 貴様、なんだこのケシカラン身体は! 何を企んでいる!? 私だけでは飽き足らず、誰に取り入ろうとしているっ」
「……??」
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