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第3章 乙女ゲーム始動 編
第137話 【攻略対象 隠しキャラ?】乙女ゲームヒロイン爆誕
しおりを挟む「エド! ねーえ、この自主学習環境にかかる陳情関連の資料は、これで良かったかしら」
「……あぁ。――それでも良いんだが、施設設備だけじゃなく教務の調整も必要だから、先生方への根回しも必要だ」
「すごいわ! 私じゃあ思いもつかなかったもの。エドは理路整然と物事を判断して考えられて、素敵ねっ」
「――……そうか」
「ディオ様っ! 私、もっとディオ様のお力になりたいんです。男子鍛練棟の視察、私もご一緒してはダメですかぁ?」
「そうだね。気持ちだけ、ありがたく受け取っておくよ」
「もぉ、ディオ様ったらぁ! 次こそは、ぜぇったい一緒に連れていってくださいねっ。私ってぇ、尊き王子様のお力になれるのが、とぉっても幸せなんですよっ!」
「生徒会長に、君に任せられる適切な業務を相談しておくよ」
「まぁ、アルったら! また来ちゃったんですか? 仕方のない人ですねっ。私と一緒にお手伝いしてくれるなら、特別に見逃しちゃいます!」
「―――………」
「バルザック先生、いつも私たちを見守ってくださって有難うございます。余裕ある大人な先生に見守られていると思うだけで、私ったらいつもの100倍勇気とやる気がわいてくるんですよ! ふふっ。先生って、私の守り神みたいですね」
「残念ながら、私は神ではなく教師ですからね」
(一体何を見せられているんだろう……)
久し振りに訪れた生徒会室。そこでは、ハレムルート一歩手前の光景が繰り広げられていた。
上級生の生徒会役員も居るにはいるが、すっかり背景となっている。攻略対象らとヒロインが作り出す、キャッキャうふふなお花畑劇場――そこから距離をとると云う、常識的な判断をしたためだ。
レーナも彼ら同様、無関係を決め込みたいところだが、そうはいかなかった。
攻略対象らとの仲睦まじいところを見せ付けたシルヴィアが、徐にレーナに水を向けてきたのだ。
「あら、レーナさん! いつも生徒会のお仕事から逃げてばかりいらしたけれど、ようやく私の言葉を聞き入れて来てくださったんですね! 心を入れ替えて差し上げることができて、私……本当に嬉しいですっ」
戸口に呆然と立ち尽くしていたレーナの目の前に、突進したシルヴィアが、祈りを捧げるように胸の前で両手を組んで、潤む瞳を向けて来る。サボり魔が、彼女の説得により改心した図式を一瞬で作られてしまった。
ここまで、さんざん生徒会から距離を取って来たレーナだから、彼女の言葉を否定はできない。だが、それでも突然貶められれば、反発する気持ちは生まれる。
「エドに、一度生徒会室に顔を出してみてって言われたから来たのよ。役割ならこの通り、学院敷地の地面陥没箇所をまとめたマップに、強風発生箇所と条件の聞き取り調査報告、それと学内での瘴気発生報告をレジュメに纏めたわ」
どうだとばかりに、期限より随分早く作成した書類の束を、顔の横に掲げる。
「まぁ! 私がご指導させていただいた通り、とても正確に纏まっておりますわ。では、これは受け取っておきますわね。ご苦労様でした」
流れる動作で素早くレジュメを回収され、労いの言葉で訪問終了を告げられてしまったレーナは、目と口をポカンと見開いて固まるしかない。
立ち尽くしたレーナの目の前で、生徒会室の扉がパタンと音を立てて閉まった。
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