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第3章 乙女ゲーム始動 編

第133話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】過保護3人の襲来

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 レーナの立てた計画はこうだ。

 実地訓練のために森に入っている生徒らを狙って、アルマジロが、そこそこの地震を発生させる。土の宝珠オーブの力を使えば、それが可能なことは玲於奈の記憶から分かっている。更に、プチドラが木をうまい具合に傾げてピンチを演出する。
 恐慌状態に陥った生徒らの元に、『我こそが土の宝珠の化身』と名乗ったアルマジロが現れて、颯爽と救う寸法だ。

『けど……ぼくには、大きな地震をおこす力なんて、もぉ、ないよ』

「そこは、バルザック先生に協力してもらえば良いわ」

 だって彼は、アルマジロに成り代われる力を持っているのだから――と、当然のように告げたレーナに、バルザックが目を見開く。プチドラが『あーあ』などと天を仰ぐが、当のレーナは気付いていない。

「私は、貴女の前でそれほど強力な魔法を披露したことは無いはずですが。魔道に命を捧げている……と、私の信念をお話ししたことはあっても、王国魔導士長ほんらいの身分を生徒らには伏せていますしね?」

「ぅえっ――」

 ぎょっと目を剥いたレーナに、バルザックは笑顔を向けて来る。逃すまいとの圧を感じる、凄まじい表情だ。だが、レーナには、この世界にやって来てからの経験がある。プペ村で、目敏く修繕リペア能力を察知したドリアーデ辺境伯をはじめ、エドヴィンらが持つ、常人には感知できない魔力を捉える力――それを言い訳にするべく口を開く。

「ちょっとだけ、魔力を感じることができるんですよね、わたし。先生は、なんか凄そうだなーって、思って」

「ほぅ……? 魔力を感知、ですか。けれど、一番身近な凄まじいモノには、気付いていませんよね」

 意味深に目を細め、更に笑みを深めたバルザックは、明らかにレーナの言い分を疑っている。言い訳を紡げばその分だけボロが出て、窮地に追い込まれてゆく。

(まずい……)

 背中を冷たいものが滑り落ちた、その時――




 どがーーーーーーーん

 轟音が大気を震わせ、地響きがアルマジロの居るこの地下まで伝わって来た。

「なに!?」

ここ・・に向かって、強引に魔法を使った者が居るんだ!!」

 狼狽えるレーナに、バルザックが上へ視線を向けて叫ぶ。

『あーあ、誰かさんが心配かけるから、あたしの大事な子孫が痺れを切らしちゃったみたいねー』

「え!? エドがこれを!?」

「いや、一人の仕業じゃない。木と光と……火の魔法の気配……誰なんだ!?」

 焦りの色を浮かべるバルザックの言葉に、ポンポンと該当者を思い浮かべたレーナは頭を抱えそうになって踏みとどまる。

 何故なら、彼が今あげた魔法を使う人物全てに心当たりがあるからだ。「木」「光」「火」の魔法を使うレーナを過保護なまでに心配する面々――

「エドに、シルヴィアさんっ……アルルクまで、なにやってるのーーーー!!」

 地上では、不意に大きな土の魔力の影響を受け、掻き消えたレーナの気配に、危機への巻き込まれを予測した過保護3人が、彼女を救うべき行動を起こしていた。
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