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第3章 乙女ゲーム始動 編
第116話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】イケメンだった!
しおりを挟む(やっぱりヒロインが現れると、錚々たるメインキャラもこんな簡単に集合しちゃうのねー。さすがは乙女ゲームの中心人物! 彼女の吸引力は凄いわ!)
心の平安を保つための、レーナの心の中での呟きだ。
4階建て高貴寮の最上階角部屋。そこにレーナの他、先程の騒ぎに出くわした主要人物4人と1柱――勇者アルルク、辺境伯令息エドヴィン・ドリアーデ、プチドラ、平民学生の危機を見逃せない心優しきヒロインのシルヴィア・カルタス男爵令嬢、校章を無くしていた平民少女モブコーリア――そして、あろうことか大魔導士バルザック・リュトルンと、王子クラウディオ・ベルファレアの2人までもが集合している。
ちなみに逆側の2角を含める広いスペースは、入学する王族が代々使用している広大な部屋だ。今現在そこは、この学院にたった一人の王族であるクラウディオ王子が使用しており、レーナらが応接机を静かに取り囲むこの部屋は、彼の側近になる者に与えられるはずの場所だ。
この場は、学院始まって以来の珍事を鎮めるために設けられた話し合いの席だった。
「まず、貴女の尋常でない状態について説明いただきたいですね」
口火を切ったのは、教員代表として同席しているバルザック・リュトルンだった。彼の視線は、シルヴィアではなくレーナにひたと向けられて揺るがない。凝視だ。
本来彼は賢者の塔と呼ばれる研究機関で、日夜魔法に関する研究に明け暮れている人間だった。ゲームでのヒロインとの出会いイベントもそこになっている。だが、現実となった今、彼は他に例をみない属性の魔力を持った平民出身の少女と、世界を支える宝珠の化身を従えた辺境伯令息の監視役として王立ダルクヴィスト貴族学院の教員となっていた。
(聖女の片鱗を見せて男爵家の養女となった少女への興味は無いの!?)
静かな熱のこもった視線に混乱するレーナに気付いてか、クラウディオ王子が「こほん」と咳払いをする。途端にバルザックがハッと息を吸い込み、残念そうに眉を下げながら面々を見渡す。
「――そうですね。興味は引かれますが、今は教員としてこの場に呼ばれたのでした」
「ああ」
若干呆れを含んだ声音で短く答えたのは王子だ。年下王子様に注意されてシュンとする大魔導士の姿に、レーナは胸を撃ち抜かれた。
「かわっ……」
「レーナ?」
はわわわ……と萌えだしたレーナに、隣に座ったエドヴィンの冷たい視線が突き刺さる。反対隣りはアルルクだ。粛々とした話し合いの場のはずが、ゲームで見慣れた面々が並ぶお陰で、レーナはどこか画面を眺めている気持ちになっている。と言うより、現実逃避したい気持ちが多分に影響を及ぼしている。
「では仕切り直しましょう。今回の一件、カロリーナさんがレーナさんに注意をしたのが発端。その場は特に揉めることもなく下校を迎えたところ、被害を受けたと云うことですね」
バルザックが、淡々と事実確認をすると、エドヴィンがガタリと音をたてて腰を浮かせ、「大丈夫なのか!?」と、レーナに詰め寄る。
「おぉぅ……。だいじょうぶよ?」
あまりの勢いに、若干身体を仰け反らせながら答えれば、背中がアルルクの腕にコツリと当たった。
「レーナは、みんなに心配かけてるってこと 自覚しなきゃな!」
赤髪の幼馴染みが、これまで何度もレーナが口にしてきたセリフを真似て言いつつ、頭の上に大きな手をポンポンと柔らかく置く。
「んなっ!?」
初めての彼の行動に、ギョッとして振り返れば、人懐っこい笑顔が返ってきた。
(ナニコノイケメンーーー!?)
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