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あの娘

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「だいぶ作っておいたし、値段も高くしてしまったのだけれど、小鳥の魔術具が売り切れて大変だったわ!」

興奮さめやらない様子でサリラが言う。

「あなたが出てくるのをみんな待っているし、王族も会いたいとおっしゃっているけれど」
「正体がバレてクビになるのは困るので、今日は帰って寝ます」

早く我が家に帰って風呂に入りたい。
華やかな席は苦手だし、庶民出の自分はきっとマナーを間違ってしまう。
化粧を落としてもらい、かつらも取って、街着に着替えたイズールは混み合う人の流れを縫って歩いて行った。
華やかに着飾った人々が自分をほめたたえるのを聞くのは変な感じだ。

「小鳥ひとつに1曲って、ちょっとお高いし、迷ったけど5曲全部買ってしまったわ!」
「ひとつにつき金貨1枚は痛いけれど、選べなかったよ!」

(……えっ、どれだけお金持ちになるの?!私!)

その時耳になじんだ声が聞こえた。

「ワガママな奴め。俺が買ったのは俺の分だよ」
「手持ちが足りなかったの。2つずつ買ったなら分けてくれてもいいじゃない!」

お似合いの2人が歩いている。
2人は騎士団の礼服を着ていた。
一人はふわふわのはちみつ色の髪を揺らした美しい少女だった。
もう一人は明るいグレイの髪を短く切ってあり、小鳥を入れてあるのだろう袋をとても大事そうに持っている。
あの腕章は知っている、団長の印だ。
あの魔石と瞳の色は同じだ、紺だ。
背は高く、りりしい姿が人目を引いている。

「アドルのアホ!」
「グノンにねだれ。それよりコトリに会えるか聞きに行こう」

なんてきれいな人だろう。
彼女に恋歌を聴かせたかったのか。
香油を塗った体が急にぬるっと感じて、気持ち悪くなった。
綿の街着が今さら恥ずかしい。
灯りの少ない夜の街を逃げ去るように家に戻った。
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