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7話
しおりを挟む私はいつものように授業を終えるとそそくさと腰を上げる。
今日はこの前マーガレットに伝えた作戦実行の日だ。
私はいつもは話しかけないミレイ様に近づく。
「……少し、お話しても宜しいかしら?」
「えぇ、勿論」
ミレイ様は私の言葉に笑顔で頷くと、ゆっくりと腰を上げた。
「ここでも構いませんか?」
「勿論です」
まだ教室にはクラスメイトが大勢残っている。
彼らは私たちに気づかれないように、話に耳を傾けていた。そしてその中にはドミニク様もいるが、私は気にせず話を始めた。
「実はご友人から、私が階段を落ちたのはミレイ様が背中を押したからだというお話を聞きまして……」
突然の私の発言にクラス中が揺れる。
しかし動揺に包まれる中でもミレイ様は取り乱すことなく笑顔だ。
「まぁ、ご冗談を。私が何故そのようなことを」
「そうですよね。私もそう思います。ですが、万が一のことを考え、調査をしてもらったんです」
「どのような?嘘の証言だけではどうしようもないでしょうに」
「はい。ですが私には不思議なことに、何故か私を醜く化粧しようとする侍女たちがおりまして。彼女たちの調査をしたら、あることが分かったんです」
私の言葉に一瞬だけミレイ様の眉がピクリと揺れた。微かに動揺したようであったが、すぐに平静を保って背筋を整える。
「まぁ、どのような?」
「それは、全員が元々は貴方のご実家である伯爵家に支えていたということです」
「そうだとして、そこから何がわかるのですか?」
「簡単です。問い詰めると彼女たちはすぐに自白しました。……貴方に指示されてやったことだと」
「脅されて嘘をついているだけですわ」
「そうかもしれません。しかし貴方が先日彼女たちと接触したところを見たと言う目撃証言が多々ありまして」
「……っ!」
「私、証言者ここに連れて来てますよ」
私の隣にマーガレットが並ぶ。
その横には証言者の令嬢が震えながらも立ってくれていた。
「わ、私、ミレイ様がクレア様の背中を押してすぐに逃げ去るところを見たんです……」
「そんなの、嘘の証言でしょう?」
「嘘ではありません!確かに見ました。私の他にも数人いるはずです」
「……私を醜くすること。ドミニク様と親しくされていること、階段から突き落としたこと。これだけ挙げれば、もうお分かりでしょう?」
それはミレイ様というよりはクラスメイト達に放つ言葉だった。
彼らはハッとした表情をしながらも黙って話を聞いている。
不利になったミレイ様が、一瞬だけギリっと唇を噛み締めた。
「……そんな曖昧な証拠で、私を陥れようとしているのですか?」
しかし次の瞬間には、ミレイ様は目に涙を浮かべて私を見ている。
演じることにおいては、彼女には確かな才能があるようだ。
「騙されませんよ、私は。断じてそんなことなどしておりませんもの。ね、ドミニク様?」
「え、あ……僕は何も……」
「証拠なら伯爵家に送りましたよ。屋敷に帰って確認してみて下さいね」
「私の、お父様に……?」
「ええ」
憶測だけで人を吊し上げることなど出来ないから、事前に手配を全て済ませておいた。
「……この、くそ令嬢!!」
ミレイ様は私をギロリと睨みつける。
それは彼女のボロが、大勢に知れ渡る瞬間だった。
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