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※後悔先立たず(王太子視点)
しおりを挟む「父上、お呼びですか?」
レベッカに婚約解消を求められた夜、僕は父上に呼び出された。父上が僕のことを呼び出すなど滅多にないことなので、きっとレベッカのことについてなのだと悟る。レベッカが言っていた「行くところ」は父上のところだったのだろう。
僕が父上の執務室に入ると、父上はいつもと変わらず威厳のある表情をしていた。でも、どこかいつもとは違う雰囲気を感じ取って嫌な予感がした。
「アラン、お前は最近、クロエ・サルディ侯爵令嬢と親しくしているそうだな」
「……っ」
やっぱりそうだ。今日の出来事をレベッカが父上に話したのだろう。
……でも僕はあくまでもクロエを好いて、レベッカを蔑ろにしたわけではない。
「はい。クロエ……嬢は孤独な少女でしたので、何か彼女の力になれたらと思ったのです。ですが決してレベッカを蔑ろにしていた訳ではありません」
「だが彼女の話によると、お前がレベッカ嬢がその令嬢を虐げたと勘違いして「謝れ」と言ったそうじゃないか」
「それは……クロエが怯えていたのでつい」
あれはその場の雰囲気から口走ってしまったことだ。大きな失言だったと僕も今では後悔している。
父上は僕のことは見ずに天井を見上げていた。
「ほお、そうか。しかしこのことだけではなく、日頃からお前は何かとそのクロエとかいう令嬢を優先させていたと聞いたぞ?これはどういうことだ」
「彼女は、繊細で傷つきやすいのでぞんざいには出来なかったのです。でもレベッカはとても強い」
「だから甘えたのか」
「……はい。レベッカは一人で何でも出来ますが、彼女はそうはいかなかったので」
自然とレベッカに接する回数が減り、クロエに偏るようになってしまっていた。
でもそれだけだ。
「父上、僕に婚約解消の意思はありません!どうかここは穏便に……」
「馬鹿者!」
必死に訴える僕を一喝すると、父上はするどく目を尖らせて僕を見た。
「もう遅い。婚約は既に解消済みだ」
「……っ!」
何故!
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「…………」
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……尽力?
首を傾げる僕に、父上は感情の読み取れない笑顔を浮かべてこう告げた。
「お前の新たな婚約者に、クロエ・サルディ侯爵令嬢を抜擢することにした」
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