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国王陛下との対談
しおりを挟む「久しいな、レベッカ嬢。……して、要望はなんじゃ」
眉間に深い皺を刻み寄せて国王陛下はそう仰った。深緑色の眼は炯眼で、まるで何もかもを見透かしているかのように感じる。
レベッカは頭を垂れたまま慎重に口を開いた。
「国王陛下、今から大変失礼なことを申し上げてもよろしいですか」
「……そなたに罰を受ける覚悟があるならば好きにするが良い」
背筋が凍る。これは一種の賭けかもしれないとレベッカは唇を噛み締めた。
……お父様には無理して殿下との婚約を続けなくて良いと言われていた。万が一何かあったら身分を捨てる覚悟でいるとも。
……ごめんなさい、お父様。私、お父様の言葉に甘えることにするわ。
レベッカは息を吸いこんだ。
「国王陛下、私は王太子殿下……アラン殿下との婚約解消を求めます」
レベッカの言葉に陛下はほんの一瞬だけ眉をピクリと動かした。しかし次の瞬間には元の表情に戻っている。
「……理由を聞こう」
陛下のその言葉に、レベッカは先程の出来事を淡々と述べていった。
クロエ嬢のこと、彼女に殿下と別れろと言われたこと、殿下が私より彼女を庇ったこと……。
一通り話し終えるとしばらく沈黙が流れたが、陛下が重々しく口を開いたことでそれは終わる。
「……愚か者めが」
「……覚悟は出来ております」
これしきのことで婚約解消を求めるなということなのだろう。
しかしどうにかして、私個人の責任で公爵家に罰がいかないようにしなければ。
「レベッカ嬢、そなたに言っているわけではない。私は、相変わらず視野が狭い愚息に「愚か者」と言っているのだ」
「……では、アラン殿下に?」
……私のことではなかった。
レベッカはホッと胸を撫で下ろす。
「ああ。話に聞けばその令嬢、明らかに言動から弱者を演じていることが丸分かりではないか。そんな者に騙されて「可哀想だから」と婚約者を蔑ろにするなど、婚約解消を求められても仕方あるまい」
陛下は吐き捨てるようにそう言うと、レベッカに声をかけた。
「どうか頭を上げてくれ、レベッカ嬢」
レベッカが顔を上げると、そこには申し訳なさげな表情を浮かべる国を守る陛下がいる。
「愚息が迷惑をかけて今まで済まなかった。優柔不断な奴にはこういう機会も必要なんだろう。分かった。そなたとの婚約は白紙に戻す」
「ありがとうございます」
レベッカが改めて頭を垂れると、陛下は大きなため息を一つ吐いた。
「愚息の王位継承も考え直さなくてはいけないかもな。はぁ、わしの教育不足か。……して、レベッカ嬢」
突然話を振られたのでレベッカは驚いて顔を上げる。
「婚約を白紙に戻すとなると、そなたも傷を一つ負うことになるがそれは良いのか?」
「ええ。そうなる前提でここに来ておりますので」
「そうか。……ならば一つ提案なのだが」
「?はい」
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「儂も王妃もそなたが娘に来てくれるのを楽しみにしておったからな。それに何よりセシルがずっとそなたに……と、よそう。これは何でもない」
陛下は満面の笑みを浮かべてレベッカを見た。
もしレベッカが疎かったらきっと首を傾げるべきなのだろうが、生憎そうではない。陛下の言葉から、はっきりと分かったことがある。
……セシル様が私を好いてくれていたなんて、知らなかった。本当に知らなかった。どうしよう、次に会う時はどんな顔をしていれば良いの……。
動揺を抑え切ることが出来ずに真っ赤になるレベッカを見て、陛下は愉快に笑った。
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