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番外編 ※妹と結婚式4

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 終わってしまったの……?
 ひどく呆気なく。
 馬車が見えなくなると、衛兵の手が外れる。私は崩れ落ちるように地面に膝をついた。
 どういうこと!?エリック様があんなに洗脳されているとは思わなかったわ!
 私の訴えなど全くもって通じなかった。

「嘘よ、こんなの信じられるわけ……」
「なんなんだこの女、ボロボロのドレスで」
「ああ、見ていて実に哀れな女だよ。自分が王太子殿下の運命の相手だと勘違いしてるんだぜ」
「アラーナ様にあんな酷い言葉を浴びせて」
「そのお陰で殿下の宣言も聞けたがな」

 私を見下ろしてくる民衆たち。指を差し、好き勝手に会話している。
 どうして私が下に見られなければいけないのかと私は彼らをキッと睨みつけた。

「皆騙されているのよ!殿下は洗脳を受けているの」
「ははっ、まだ言ってるぜ。懲りないやつだな」
「あの衛兵も気の毒に。パレードが無事終わるまで女の面倒を見なきゃいけないなんて」

 聞く耳を持たない民衆たち。

「下賤なあなたたちにこの私が教えてあげてるのよ。公爵令嬢であるこの私が!」
「公爵令嬢……?」

 その言葉に誰かが反応する。

「もしかして、噂のカレン嬢じゃないか?王太子の婚約者になったものの、子役を勝手に破棄して砂漠の国の王についていったっていう」
「この女がか?まぁ確かに格好からしても高飛車な態度からしても、そうかもしれないが」
「そうよ、私は王妃になる女なのよ」
「王妃?無理だろそんな奴が王妃なんて」
「現実を見た方が良いな。見ていて痛々しい」
「私は騙されていただけなの!あの国の王は私をハーレムに連れて行ったのよ!?」

 私は必死に訴えるが、誰も顔色を変えない。

「当たり前だろ」
「そもそもそれ騙されていたわけでもないし、自分の勘違いが引き起こしたことが原因だろ」
「だったら最低な奴だな。ここまで落ちぶれたのも今まで散々調子に乗っていたツケが回って来ただけだろ」
「むしろこのくらいで済んで良かったな」

 調子に乗っていた……?私が?

 私はただ、出来が良くて美しくて完璧なだけだったのに。

「黙りなさい。お前たち如きが私を侮辱するなんて!」
「はぁ?」
「馬鹿だな。ここまで落ちぶれたのに、まだ現実に気づけないのが、一層哀れに思えてくる」
「まぁもう一人で生きていくことなんて、出来ないだろうしな。放っておいても問題ないだろ」
「まぁ、殿下とアラーナ様に何かしようとしても、もう近づくことすら出来ないだろうし」
「それ以前に俺らが許さないからな」

 そう言い残すと彼らは去っていく。
 やがてパレードが終わり急に静かになった大通りには、哀れな一人の女が地べたに座り込んでいた。
 その女は、この先何度も王宮におしかけ、終いには逮捕されたという。
 しかしその女は最後までこの言葉を言い続けたそうだ。

「殿下も貴方たちも洗脳されているのよ。今、私が助けてあげるから!」

 と。
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