平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ

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※王太子の怒り

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「まさかカレンがこの俺を裏切るとは……」

 公爵夫妻が真っ青な顔で王宮をさった直後、王太子は独り言のようにそう呟いた。
 カレンと出会ったのは、ステラが婚約者になった次の日だった。くるくるの愛らしい瞳に煌めく髪、天使のような美しさに一瞬のうちに心を打たれたのを覚えている。
 しかし俺は不運にもその一日前からステラの婚約者という立場だったため、カレンへの想いは封じ込める他なかった。
 カレンは大人になるにつれその美しさを増し、また全ての分野においても秀でていた。病弱なのにどれほどの努力をしたらこれほどまでに成長出来るのか、そう思っていつも目を見開くばかりだった。
 それに比べてステラはそれはそれは酷かった。カレンと違って健全な体を持っておるのにも関わらず、何事においても一向に成長しない。すぐに妹のカレンに追い抜かれる。
 それはステラが努力をしていないことの表れだと思った。ステラは全てにおいてカレンに負けていた。
 俺は何度もカレンが俺の婚約者ならば良いと思った。ステラにもずっとそう言い続けていたし、国王であるお父様もステラではなくカレンを婚約者にしておけば良かったといつも嘆いていた。
 しかし母上だけはなぜかステラを見捨てなかった。いつも父上を叱責していたし、僕にもステラを大事にしろと注意をしてきた。きっと母上見る目がないのだろう。明らかにカレンの方が素晴らしいというのに、そのことが分からないのだから。
 その後ステラの悪事によって、新たにカレンとの婚約が決まった時はそれはそれは嬉しかった。
 ステラはいてもいなくても変わらないので、どちらかというといない方が良いと思って適当に追い出した。
 俺はやっと長年の願いを叶えることが出来たのだった。
 しかし、いったい今はどうだろう。
 結婚式を控えているというのに、カレンは俺を捨てて砂漠の国の王と駆け落ちした。そもそもカレンは一年前あたりから俺への態度が変わっていて、最後の方には週に一度しか俺に会いに来なくなった。最初の方はあんなに熱心にくっついてきたというのに……。

「はぁ、カレンがまさか……」

 嘆くしかなかった。
 今までの出来事が走馬灯のように流れて来るが、カレンが登場する度に胸がチクリと痛くなる。
 そんな僕を見て母上は言った。

「自業自得ね」
「なっ、母上。なぜこの俺がっ」
「ステラを蔑ろにしたあなたが、今度はカレン嬢に蔑ろにされたんだもの」
「……っ!」

 母上の視線は氷のように冷たくて俺は思わず固まる。しかし母上はにっこりと笑って話を続けた。

「でも安心してちょうだい、結婚式は無事行うから」
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