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婚約解消2

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 私の言葉に全員が話をぴたりと止めてこちらを見ます。

「今、なんと……」
「ですから、私、殿下と婚約解消を致したいのですが」
 
 私の言葉にお父様は思わず、目をカッと開いてテーブルを叩きました。
 ガチャンとお皿やフォークが揺れる音がし、その後お父様の飲みかけのワインが溢れます。
 しかしそれを気にもとめないでお父様は私を一直線に睨みつけてきました。

「お前如きが、殿下を否定するだと?!」

 感情的なお父様とは対照的にお母様の視線は冷ややかです。

「立場をわきまえなさい」
「お姉様、エリック様のどこがご不満なの?あんなに素敵な方どこを探してもいませんよ。私だってむしろ婚約者になりたいくらいなのに」

 だから貴方になってもらおうと思ったんです、カレン。
 生憎私はいい子ではないらしいので、こんなことを言ったって別におかしくはないでしょう?

「カレンがなって下さいな。あなたほど相応しい人は、私を含め他にいませんので」
「それは全くその通りだが……」
「でもお姉様はどうするの?お姉様がエリック様の婚約者じゃなくなったら、お姉様は何のためにここにいるの?」
「貴方にこの家を追い出される覚悟があるならば別に構いませんよ」
「だったら……」

 妹は私を見てニヤリと笑います。

「そうしてしまったら?」
「え、だが、婚約解消はこちら側からは……」
「お姉様が亡くなったことにすれば契約は解消されますし、いっそ死んだことにして公爵家から籍をはずしてしまえば良いのです」
「でもそれだと……不正がバレる可能性がかなり高いわ」

 お母様とお父様はうーんと首を捻らせます。
 カレンは自分の意見が却下されたことに頬を膨らませて、また食事を再開しました。
 冷静さを取り戻したお父様が腕を組んで唸ります。

「うーん、婚約解消自体は賛成だが、絶対に公爵家に傷を付けるようなやり方では駄目だ」
「私もいつも考えているのです、どうすればカレンが殿下の婚約者になれるか。一度このことを王妃様に提案しましたが結果は駄目でした。私達はすぐにでもカレンを殿下に差し出したいのに……。ですから貴方は未だその座に留まっている、ただそれだけに過ぎません」

 そんなの、とっくのとうに気づいています。
 やっぱり都合が良いように利用しているだけで、私自身のことはどうでも良いんです、彼らは。
 だからやっぱり、ここにいなくて正解なのです。

「あっ!」

 すると先程まで不機嫌だったカレンが口を開きます。

「なんだ、カレン?」
「どうしたの?」
「私、思いついたわ!お姉様が裏で私を虐めていたことにして、それに気づいたお父様たちがお姉様を除籍処分するの」
「良いじゃない!それならステラは未来の王太子妃には相応しくないって判断されるし、身内で処理出来るわ」
「ああ、国王様もきっと認めて下さるだろう」

 お父様もお母様もカレンの案に満足げに頷きます。
 今更悪評が広まったところで、どうせ私は身分を捨てて家を出ますし。
 私も否定をする気はありませんでした。
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