元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

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※義母と義妹の過ち

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「お母様、なにこの小さな家!」
「知らないわ。なんでこんな所に連れてこられたの?」
 
 昨日、突然国王様と謁見させられたかと思えば、私たちは急にこんな古びた家に連れてこられた。
 ホコリに蜘蛛の巣で包まれたその家は、入った途端から薄暗くこんなところに長居したくないと思わせてくるような酷い場所で、私は思わず手で口を押さえる。

「早く出たいわ、お母様」
「そうね、出ましょう」

 二人で慌てて出ようとすれば、私たちをここまで連れてきた衛兵が言う。

「外に出るのは良いですけれど、お二人はもう平民になられた身ですから家はここしかありませんよ?」

 しれっとそう言ってのけた衛兵。
 私たちは一瞬、彼が何を言っているのかわからなかった。

「っ、そ、そんなことないわ!だって私は伯爵家の……」
「そうよ、私たちは貴族なのよ!」
「はぁ、散々国王様の前で「私たちは元平民なんです!だからエミーヌにずっと嫌われてきたんです!」と嘆いておいて、ここに来た途端これですか。やっぱりあなたたちは愚かですね。あんなに平民を強調していてたので、国王様も哀れに思って平民に戻してくれなさったんですよ、きっと」

 衛兵は早口でそう捲し立てると、部屋を出ていく。
 すると今度はお父様が入ってきた。

「お父様!どういうこと?どうして私たちこんなところに……」
「黙れ!お前らが嘘をつきまくったせいで俺は……」

 私がお父様に事情を説明してもらおうと走り寄ってその両腕を掴むと、お父様は憔悴しきった顔で私の手を払いのけた。

「……お父、様?」
「ふざけるな!お前ら、エミーヌに嫌がらせなどされてなかったのに、嘘をつきやがって!お前らを信じたせいで、俺は……」

 お父様はその場にしゃがみ込むと頭を抱えた。

「お父様?違うわよ!私たちは悪くないわ!」
「あ、あなた……大丈夫よ。国王様も誤解なさっているだけだろうし。きっと……」
「もう良い。お前ら二人ともここまで来てまだ現実が分かっていないらしいな」

 お父様は深いため息を吐くと、吐き捨てるように言う。

「平民のお前らを伯爵家に迎えたのが愚かだった」

 そうしてそのまま去って行く。

「待ってあなた、どこに行くの!?」
「ついてくるな。お前らの家はここだ」
「こんなところ嫌よ!あなた、許して……」

 必死にパパを追いかけるお母様をぼーっと追いかけながらお姉様のことを私は思い出す。

 お姉様……エミーヌは、正直私たち二人にとって邪魔な存在でしかなかった。
 見た目も美しいし、声も所作も綺麗。おまけに素晴らしい婚約者もいるし、ズルい要素ばかり持っていて、腹立たしかったのだ。
 今回も婚約者のはからいで、お姉様ばかり好待遇を受けていて、私達はこのざまだ。

 やっぱりあの人はずるい。

 ここに来てもなお、私はそう思ってしまった。
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