17 / 19
※グランクス侯爵視点
しおりを挟む
私の登場に伯爵は目を丸くする。
「グ、グランクス侯爵!?何故ここに!」
「ちょっと用があったものでな」
私の登場に、息子は私と目を合わせて頷く。
……先に行っておけ。後は私がどうにかする。
心の中でそういうと、息子はエミーヌ嬢の手を引いてその場を去っていった。
私は、慌てて追いかけようとするエミーヌ嬢の義母と義妹をギロリと睨みつける。彼女らはその視線を受け、その場に留まる。
伯爵が額から汗がダラダラ垂らした。
「あ、の、侯爵様。要件は……?」
様子を伺うように恐る恐る訪ねてくる伯爵を私は鼻で笑う。
「要件?もう分かっているだろう?」
問い詰めると、気まずそうに目を逸らす伯爵。そんな彼らに私は言った。
「貴殿らの罪を暴きに来たのだ」
私の言葉に反応したのは、エミーヌ嬢の義妹の、確かヴィヴィとかいう女だった。
「罪?私たちに何の罪があるんですか?ただ平民から貴族になっただけで罪なんですか?酷いです!」
明らかに論点のズレた言葉によって眉間に皺が寄る。
「何をおかしなことを。そんなことはどうでも良い。私が言っているのは、エミーヌ嬢への虐待のことだ」
「虐待!?お姉様は虐待なんてされていません!どうしてそんなこと」
「黙れ。煩い。私がいつお前が口を開くことを許可した」
「え……」
ショックを受けたような、そんな声が女から漏れた。味仙の皺を深めて睨みつけてやれば、小さな悲鳴を一つあげて静かになる。そうなったところで今度は伯爵が重々しく口を開いた。
「虐待など……身に覚えが」
「しかし証言は取れている。昨日、エミーヌ嬢を殴ったこと。そして今日、エミーヌ嬢を監禁したこと」
「それは躾です!エミーヌは私の後妻とその娘のヴィヴィに嫌がらせをしていたのでキツく叱っただけです!」
「しかしその嫌がらせも、直接見た人物はいない。伯爵、貴殿は、片方だけの誤った意見を鵜呑みにして、エミーヌ嬢の言葉を聞こうともせず、一方的に彼女を責め立てていたそうじゃないか。これのどこが躾なのか?」
「それは……」
「そもそも、親として子に暴力を振るうのはいかがなものかと。この国の法律で禁止されていることの一つだ」
私がそう言うと伯爵は黙り込む。しかしゆっくりと口を開いた。
「…………証拠は何ですか?私がエミーヌを殴った証拠。先程見たエミーヌの頬は腫れてなどいなかったでしょう?」
伯爵は言い返してやったとばかりに笑ったが、残念ながらそれは失言だった。
「……私がいつ、頬を殴ったと言ったか?」
「……っ!」
伯爵はついに顔色を失くし俯く。
「エミーヌ嬢には申し訳ないことをした。もっと早く助けに来るべきだった」
私は続けて言う。
「貴殿らのことは、国王様に私から報告させてもらう。今日はそのことを伝えに来ただけだ。では……」
誰も返事を返さない。
これ以上この場所にいても無駄だと、私は静かに踵を返した。
「グ、グランクス侯爵!?何故ここに!」
「ちょっと用があったものでな」
私の登場に、息子は私と目を合わせて頷く。
……先に行っておけ。後は私がどうにかする。
心の中でそういうと、息子はエミーヌ嬢の手を引いてその場を去っていった。
私は、慌てて追いかけようとするエミーヌ嬢の義母と義妹をギロリと睨みつける。彼女らはその視線を受け、その場に留まる。
伯爵が額から汗がダラダラ垂らした。
「あ、の、侯爵様。要件は……?」
様子を伺うように恐る恐る訪ねてくる伯爵を私は鼻で笑う。
「要件?もう分かっているだろう?」
問い詰めると、気まずそうに目を逸らす伯爵。そんな彼らに私は言った。
「貴殿らの罪を暴きに来たのだ」
私の言葉に反応したのは、エミーヌ嬢の義妹の、確かヴィヴィとかいう女だった。
「罪?私たちに何の罪があるんですか?ただ平民から貴族になっただけで罪なんですか?酷いです!」
明らかに論点のズレた言葉によって眉間に皺が寄る。
「何をおかしなことを。そんなことはどうでも良い。私が言っているのは、エミーヌ嬢への虐待のことだ」
「虐待!?お姉様は虐待なんてされていません!どうしてそんなこと」
「黙れ。煩い。私がいつお前が口を開くことを許可した」
「え……」
ショックを受けたような、そんな声が女から漏れた。味仙の皺を深めて睨みつけてやれば、小さな悲鳴を一つあげて静かになる。そうなったところで今度は伯爵が重々しく口を開いた。
「虐待など……身に覚えが」
「しかし証言は取れている。昨日、エミーヌ嬢を殴ったこと。そして今日、エミーヌ嬢を監禁したこと」
「それは躾です!エミーヌは私の後妻とその娘のヴィヴィに嫌がらせをしていたのでキツく叱っただけです!」
「しかしその嫌がらせも、直接見た人物はいない。伯爵、貴殿は、片方だけの誤った意見を鵜呑みにして、エミーヌ嬢の言葉を聞こうともせず、一方的に彼女を責め立てていたそうじゃないか。これのどこが躾なのか?」
「それは……」
「そもそも、親として子に暴力を振るうのはいかがなものかと。この国の法律で禁止されていることの一つだ」
私がそう言うと伯爵は黙り込む。しかしゆっくりと口を開いた。
「…………証拠は何ですか?私がエミーヌを殴った証拠。先程見たエミーヌの頬は腫れてなどいなかったでしょう?」
伯爵は言い返してやったとばかりに笑ったが、残念ながらそれは失言だった。
「……私がいつ、頬を殴ったと言ったか?」
「……っ!」
伯爵はついに顔色を失くし俯く。
「エミーヌ嬢には申し訳ないことをした。もっと早く助けに来るべきだった」
私は続けて言う。
「貴殿らのことは、国王様に私から報告させてもらう。今日はそのことを伝えに来ただけだ。では……」
誰も返事を返さない。
これ以上この場所にいても無駄だと、私は静かに踵を返した。
282
お気に入りに追加
3,622
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄? 正気ですか?
ハリネズミ
恋愛
「すまない。ヘレンの事を好きになってしまったんだ。」
「お姉様ならわかってくれますよね?」
侯爵令嬢、イザベル=ステュアートは家族で参加したパーティで突如婚約者の王子に告げられた婚約破棄の言葉に絶句した。
甘やかされて育った妹とは対称的に幼い頃から王子に相応しい淑女に、と厳しい教育を施され、母親の思うように動かなければ罵倒され、手をあげられるような生活にもきっと家族のために、と耐えてきた。
いつの間にか表情を失って、『氷結令嬢』と呼ばれるようになっても。
それなのに、平然と婚約者を奪う妹とそれをさも当然のように扱う家族、悪びれない王子にイザベルは怒りを通り越して呆れてしまった。
「婚約破棄? 正気ですか?」
そんな言葉も虚しく、家族はイザベルの言葉を気にかけない。
しかも、家族は勝手に代わりの縁談まで用意したという。それも『氷の公爵』と呼ばれ、社交の場にも顔を出さないような相手と。
「は? なんでそんな相手と? お飾りの婚約者でいい? そうですかわかりました。もう知りませんからね」
もう家族のことなんか気にしない! 私は好きに幸せに生きるんだ!
って……あれ? 氷の公爵の様子が……?
※ゆるふわ設定です。主人公は吹っ切れたので婚約解消以降は背景の割にポジティブです。
※元婚約者と家族の元から離れて主人公が新しい婚約者と幸せに暮らすお話です!
※一旦完結しました! これからはちょこちょこ番外編をあげていきます!
※ホットランキング94位ありがとうございます!
※ホットランキング15位ありがとうございます!
※第二章完結致しました! 番外編数話を投稿した後、本当にお終いにしようと思ってます!
※感想でご指摘頂いたため、ネタバレ防止の観点から登場人物紹介を1番最後にしました!
※完結致しました!

美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…

とある侯爵令息の婚約と結婚
ふじよし
恋愛
ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。
今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。
母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。
「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。
このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。
弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した――
全3話


見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる