元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

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※グランクス侯爵視点

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 私の登場に伯爵は目を丸くする。

「グ、グランクス侯爵!?何故ここに!」
「ちょっと用があったものでな」

 私の登場に、息子は私と目を合わせて頷く。
 ……先に行っておけ。後は私がどうにかする。
 心の中でそういうと、息子はエミーヌ嬢の手を引いてその場を去っていった。
 私は、慌てて追いかけようとするエミーヌ嬢の義母と義妹をギロリと睨みつける。彼女らはその視線を受け、その場に留まる。
 伯爵が額から汗がダラダラ垂らした。

「あ、の、侯爵様。要件は……?」

 様子を伺うように恐る恐る訪ねてくる伯爵を私は鼻で笑う。

「要件?もう分かっているだろう?」

 問い詰めると、気まずそうに目を逸らす伯爵。そんな彼らに私は言った。

「貴殿らの罪を暴きに来たのだ」

 私の言葉に反応したのは、エミーヌ嬢の義妹の、確かヴィヴィとかいう女だった。

「罪?私たちに何の罪があるんですか?ただ平民から貴族になっただけで罪なんですか?酷いです!」

 明らかに論点のズレた言葉によって眉間に皺が寄る。

「何をおかしなことを。そんなことはどうでも良い。私が言っているのは、エミーヌ嬢への虐待のことだ」
「虐待!?お姉様は虐待なんてされていません!どうしてそんなこと」
「黙れ。煩い。私がいつお前が口を開くことを許可した」
「え……」

 ショックを受けたような、そんな声が女から漏れた。味仙の皺を深めて睨みつけてやれば、小さな悲鳴を一つあげて静かになる。そうなったところで今度は伯爵が重々しく口を開いた。

「虐待など……身に覚えが」
「しかし証言は取れている。昨日、エミーヌ嬢を殴ったこと。そして今日、エミーヌ嬢を監禁したこと」
「それは躾です!エミーヌは私の後妻とその娘のヴィヴィに嫌がらせをしていたのでキツく叱っただけです!」
「しかしその嫌がらせも、直接見た人物はいない。伯爵、貴殿は、片方だけの誤った意見を鵜呑みにして、エミーヌ嬢の言葉を聞こうともせず、一方的に彼女を責め立てていたそうじゃないか。これのどこが躾なのか?」
「それは……」
「そもそも、親として子に暴力を振るうのはいかがなものかと。この国の法律で禁止されていることの一つだ」

私がそう言うと伯爵は黙り込む。しかしゆっくりと口を開いた。

「…………証拠は何ですか?私がエミーヌを殴った証拠。先程見たエミーヌの頬は腫れてなどいなかったでしょう?」

 伯爵は言い返してやったとばかりに笑ったが、残念ながらそれは失言だった。

「……私がいつ、頬を殴ったと言ったか?」
「……っ!」

 伯爵はついに顔色を失くし俯く。

「エミーヌ嬢には申し訳ないことをした。もっと早く助けに来るべきだった」

 私は続けて言う。

「貴殿らのことは、国王様に私から報告させてもらう。今日はそのことを伝えに来ただけだ。では……」

 誰も返事を返さない。
 これ以上この場所にいても無駄だと、私は静かに踵を返した。
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